เข้าสู่ระบบ宿を出てから、朝の街道を進んでいく。 人通りが多くて、荷車や様々な人達が行き交っている。「昨日より、人が多いね」 ふとアプリルに呟いた。「首都に近づいているからでしょうね」 まだまだ距離はあるんだけれどね。 でも、確実に近づいてはいる。「今年は巡礼も多いな」 歩いていると商人達の会話が聞こえてくる。 巡礼かぁ。「聖女様の祝祭が近いからな」 やっぱりこの国において、そういったのがあるんだ。 しかも、聖女様って。「祝祭……」 私達も参加して良いかな。 お祭りだったら、出店とかもありそうだから。 それと同時に不安もあった。 私達にとっては、”王国の”聖女様に断罪されている。 「首都では、聖女様に関する催しも多いみたいです」 ロータスが説明した。 この国のこと、知っているのね。「人気なんだね」 私は少しだけ微笑みながら返事を行う。 やがて歩いていくうちに、遠くに白い城壁が見えてくる。 少しずつ塔がはっきりと。「……大きい」 近づくにつれて、人や建物が視界に。 私はそれに圧倒されそうだった。「王国の王都と同じくらい、人が多そうですわね」 アプリルは顎に手を当てて考えているようだった。 それくらい大きいんだったら、街に飲み込まれてしまうかもしれない。 けれども、この大きさにワクワクしてしまう。「ここなら」 やがて首都を取り囲む城壁と城門が目の前に。 そこには、役人らしき人が数個尋ねて通していた。 私達も例外じゃなくて、訊かれることに。「名前と出身、それに滞在目的を」 そのまま伝えていって、役人は頷きながら聞いていた。「隣国から来たのか」
「ありがとうございました」「こちらこそ。守ってくれてありがとう」 私はこの街を出ていく直前、ニコラさんに挨拶をした。 彼は私が守っていた露店で営業を行っている。 かつての光景が戻っていた。「それとこれ、道中持っていけ」 挨拶が終わって街の外へ歩こうとしたら、ニコラさんは商品をいくつか渡してきた。 食料とかは、分けてもらっているけれども。 さらにということ。「えっ、いいんですか?」「渡した分だけじゃ、足りないと困るからな」 ニコラさんは豪放磊落《ごうほうらいらく》に笑いながら、私達を見つめていた。「でも……」「いいから受け取っておけ」「……ありがとうございます!」 私はそのまま受け取ることにした。 ニコラさんに笑顔を見せる。「まあ、なんだ。何かあったとき、アンタの戻る場所はどこだってあるからな。当然ここの街にも、な」「そうですね。では、幸運を」「ああ。まあ、また店を空けることになりそうだったら呼ぶかもな」 戻る場所。 どこにもあるんだ。 私はそれを胸にしまいながら、露店を背にして、街を離れていく。 ”帰れる場所”があるだけで、少しだけ怖くなった。 少し歩いて振り返ると、露店街は見えなくなっていた。「短かったね」 一ヶ月も経っていない。 それでも、守っていた露店も見えなくなって、寂しく感じる。 だけど。「ちゃんと、生きましたわ」 アプリルの声は、少し誇らしそうだった。 はっきりと居場所があった。 私だけじゃない、アプリルもロータスも。 王都やクリスタリア学院という輝く場所じゃないけれども、はっきりと。「次も生きられるかな」「分かりませんわ」 軽く首を振りながら、アプリルは答え
【グルナ視点】 わたしは学院にある聖堂の高窓から、光を見上げていた。 優しい光がわたしを包んでくれて、気持ちが落ち着く。 大丈夫、あの二人の動向は分かっていない。 おそらく、廃都かどこかで果てている。 何も報告が来ないのが証拠かもしれない。 動向があれば、来るのだから。 特に廃都で果てているなら、報告する人間なんているわけ無い。『心配しているのですよ、グルナ』 優しい声が頭に響く。「大丈夫」『余裕みたいですが、そうなのかしら』 すると、聖女様の声が聞こえてくる。 わたしだけに聞こえる、導きの声。「えっ?」 まるでわたしの考えが間違っているかのように。『廃都は抜けようと思えば抜けられる。一人だけでは不可能ですが、アプリルの存在があれば……』「そんなこと」 少し俯きながら、聖女様の言葉を聞いていた。『どうでしょうね』 わたしを厳しい言葉で言い放った。 それから、少しして学院の侍女がわたしのところへ。「グルナ様、隣国の廃都に近い街において、マッサージで有名な露店があるようです」 マッサージで有名? どういうことなんだろう。「あの、どうしてその話題を?」「何日か前から金髪の少女が店主不在の間、行っているらしく、人気らしいです」 その言葉を聞いて、身体が震えた。 もしかして、サフィー・プラハなの? 彼女はマッサージが上手だった。 容姿が一致している。『だから言ったではありませんか。あなたが緩めたから、闇が息を吹き返そうとしているのです』 聖女様はわたしを糾弾した。 まるで犯罪者を逃がしたかのように。「でも、そこで終わる可能性だって」 小さな街で生きているだけ。 それならば、影響は大きくないはず。『いいえ。放置すれば、
荷物を整えて二週間以上過ごしていた宿を後にする。 ここから首都へ向かうことになる。 ニコラさんに頼んで旅路《たびじ》に必要な食べ物は、分けて貰った。 私のお金で買ったものもあるから。「サフィー、教会に行って良いかしら?」「は、はい」 アプリルがそう頼んできた。 確かに行ってみるのも悪くないかも。 聖女様の加護はないとしても、神頼みくらいはしても良いよね。「アプリルさん、本日出られるのですね」「ええ。お世話になりましたわ」 アプリルはカーテシーをしながら、教会のシスターに挨拶をしていた。「お祈りをしても?」 私はシスターに問いかける。「勿論」 この世界の教会における作法で、女神像に祈りを捧げる。 ふと目に入ったのは、聖女らしき肖像画が見えていた。 綺麗に描かれていて、描かれてから日数は経っていないみたい。 光が差していて、女神像よりも心なしか豪華だった。 まるで、祈りの中心が入れ替わっているみたいだった。「お美しいですね」 私はふと呟いていた。「はい、女神様は私達に見えませんが聖女様は度々現れます」「そうなんですね」 確かに、あの聖女様もいるのだから。 だからこそ、私は少し怖くなった。「我が国にもいらっしゃいますが、隣国の王国では有名な聖女様がいらっしゃるとか」「……グルナ・フスト様でしょうか」 私は絞り出すようにしながら問いかけた。 すると、シスターは驚いていた表情をしている。「よくご存じですね!」 知っているんだ。 となれば、このまま居続けても良くなかったかもしれない。「グルナ様は様々な奇跡を起こせるとか」「奇跡……」 確かにあった気がする。 不安になっていた人を安心させていたから。
宿へ戻って、荷物を片付けていく。「終わったね」 大きく息を吐いて、肩の力を抜いていった。「ええ。最後まで、ちゃんと」 アプリルが優しく微笑んでいた。「で、これからどうする」 下の食堂へ行って、椅子に座りながらニコラさんが私達に問いかけた。 テーブルにはスープやパンなどが置かれている。「お店は完全にお返しします」「分かった」 ニコラさんは頷いた。 これで、もう戻れない。 少し寂しいのに、不思議と後悔はなかった。 そして彼は地図を取り出した。「この街は、ここだな」 廃都の砂漠に近い場所を指さす。「で、この国の首都はここから北にある」 道を辿《たど》るように、とある場所に指を置く。 二重丸がある場所。「首都ならここよりも仕事はある」 そう落ち着きながら説明していった。「人も多いし、流れも速い」 私はそれに耳を傾けていく。「露店、給仕、倉庫、何でもな」 思ったより、色々ありそう。 良さそうに思えてくる。「首都……」 その響き、この世界でも変わらない。「大きい場所、だよね」 東京やソウルみたいな場所なのかな。 いや、世界が違うから雰囲気も同じじゃないけれど。 不安もあるけれども、期待も浮かんでいた。 今度こそ、普通に生きられるかもしれない。「ですが、この街に留まるよりは安全ですわ」 アプリルはそう呟いた。 私を見つめながら。「安全?」 ここでも安全はあるかもしれないけれど。「探られている以上、固定される方が危険ですから」 あの人物。 それ以外にもいるかもしれないけれど。 もし、この街にあの聖女様がやってきたら、それこそ大変。「ま
数日後。 私は、最後の露店を開くことに。 お店を返す決断をしたものの、ニコラさんの怪我が治るまで、私はここにいた。 だから今日が正真正銘の最終日。 もう慣れてしまった店の準備。 商品を並べていって、看板を出していく。 ああ、これでしなくなるんだ。 手に覚えてしまった動きだからこそ、終わる実感があった。「よし、今日も頑張ろう」 軽く頷きながら、お店を始めていった。「おはよう、今日も元気そうね」 少ししたら、常連の主婦がやってきた。 いつもの声で私に話しかけてくれる。「はい!」 笑顔で返事を。「ここの干し葡萄《ぶどう》、癖になっちゃったわ」「ありがとうございます!」 そう言ってくれて嬉しかった。 干し葡萄を買っていって、お店を離れていった。 ほんのちょっとだけ、寂しさがあったけれども。「肩、お願いしてもいい?」 今度はマッサージのお客さん。「もちろんです」 笑みを見せながらお客さんの肩を揉んでいく。 硬くなった肩を、少しずつほぐしていく。 力加減に気をつけながら。「あなた、前よりも上手くなったわね」「えへへ、ありがとうございます」 マッサージを終えたタイミング、お客さんからそう言われた。 私ははにかみながら答えた。 お客さんは嬉しそうな表情をしながら帰っていく。「板についてきたなぁ」 お客さんが落ち着いたタイミングで、隣の露店主がそう私に話しかけてきた。「えへへ……」 またはにかんじゃう。「最初は潰れると思っていたんだが」「ひどい!」 彼の冗談に頬を膨らませながらそう答えるけれども、内心では笑っていた。 ニコラさんはお店を返すまで手伝っていない。 近くのカフェで紅茶を飲んで見ているよう
【アプリル視点】 あの日、サフィーが部屋を出ていく音がした。 その扉の小さな軋みだけが、やけに長く響いた。 机に広げた日誌の上、ペン先が止まる。(……また、どこかへ?) 昼間の出来事が、何度も頭よぎる。 サフィーはどこか上の空で、笑顔の裏に不安を隠していた。 それでも『グルナ様のおかげ』と何度も繰り返していた。 彼女のその言葉は、わたくしの胸を締めつけた。 立ち上がりかけた足が止まる。 呼び止めたい
次の日、サフィーは廃都へ追放される馬車に乗り込まれようとしていた。 群衆が彼女へ暴言や嘲笑を投げつける。 当然石だって投げつけられていた。「やめて……!」「……私はヒロインなのに」 でも、自身が主役を気取った悪役であるように叫び、泣いていた。 誰も信じないし、むしろそれを逆手に罵声が大きくなる。 乗り込まれる際でも、それは続いていく。 わたくしは、胸を痛めつける気持ちで乗り込まれる様子を見ていた。 サフィーがわた
【アプリル視点】「結構来たわね」 数時間は歩いただろうか。ちょっと休憩していた。 もう学院の建物はすっかり見えなくなっていた。 それにもう戻れないけれど。「はぁ……サフィーは干からびていないかしらね」 廃都には地下水があるとはいえ、心も病んでいくあの場所なら、そこまで時間があるとはいえない。 早めに行かないと。「……アプリル様」「あら?」 誰かが叫ぶ声がする。
告発状を渡してから、裁定の日までは数日ある。 王宮や学院側にとって、様々な調整と準備が必要だから。 それは私達にとっても同じだった。「これで裁定の日まで待てば良いのですね」 私は聖女様に訊ねる。 でも微笑みながらも、難しそうな表情をしていた。「実を言うと、告発状や証言だけでは厳しい部分があるの。疑わしきは罰せず、という言葉もある通り、黒かどうか怪しければアプリルは白と決まってしまう」 どこかで聞いたことがある。 つまり、断罪の場での証言とかが弱かったらアプリルは断罪されない訳