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裁判所のトイレで――「100万円だけ、俺を助けてくれ」

Author: 6jay
last update publish date: 2026-09-16 19:32:55

直人が逃げようとした経緯は、後から桐生に聞いた。

東京地方裁判所立川支部で勾留質問を終え、結果を待っていたときのことだった。

冷たい床に、警察官の靴音が響いていた。

担当の警察官が隣で書類を確認した隙に、直人は置かれていた所持品の袋をひったくった。

呼び止める声も聞かず、非常階段へ走り出す。

手錠のついた手で袋を抱え、肩を手すりにぶつけた。

追う足音が近づくほど、足がもつれる。

だが、1階ロビーのガラス扉の外には、すでに黒崎たちが待ち構えていた。

「おい、佐伯だ! あそこだ、逃がすな!」

怒鳴り声が、ガラス越しに響く。

直人は顔色を失い、地下のトイレへ駆け込んだ。

いちばん奥の個室に飛び込み、震える指で鍵をかける。

便器の横へ体を押し込めた。足を引こうにも余地がなく、靴の先が壁に当たった。

追いついた警察官たちの靴音が、タイルをせわしなく叩く。

遠く、ロビーのほうで黒崎の怒声がもう1度聞こえたが、すぐに制止する声に遮られた。

どん、どん、どん。

「佐伯さん、警察です! 開けてください。出てきてください!」

扉が激しく揺れた。

直人は答えず、両手で鍵を押さえた。

やがて頭を抱え込み、汚
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