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年下のくせに!

Penulis: 古紫汐桜
last update Terakhir Diperbarui: 2026-03-07 22:41:09

男性社員に可愛がられているらしく、ここぞとばかりに主張されて、私はうんざりしていた。

今日も残業確定だな……と思っていたら、

「あの……すみません」

と、彼がひょっこり顔を出した。

「情シスですけど、勝手にチャットシステム入れて、勤務中にやり取りしている方がいるみたいで。困るんですけど」

その瞬間、友利さんがヤバいという顔をした。

「あ、今アンインストールしても無駄なんで。友利さん、勤務中に他部署の人とチャットツールで遊んでるってクレーム来てるんですよね」

飄々と話す彼に、部長が困惑した顔をした。

「あの……注意するのもいいですけど、きちんと双方の意見を聞くべきじゃないですか? あと、最近のジョブカード。全部、鮫島サンが作ってますよ。残業されてるんで、俺、帰り遅くなるんで困るんですよ」

そう言い残して、彼は去っていった。

その後、情シスから友利さんのチャットシステムの件が明るみになり、彼女は厳重注意を受けた。

しかし、私も手を貸していたことになるので、ダメ書類は本人にやり直しさせるようにと言われた。

でもさ……。

散々お願いして無視されて、鮫島がいじめているみたいな話になったから、自分でやり始めたのに。

その件は無視されてしまうらしい。

仕方ないのかな……。

私はため息を吐きながら、会社近くの公園のベンチに座っていた。

本社の今の部署に所属してから、社内に居場所がなくて、天気の良い日は一人で公園で食事をしていた。

遅い昼休みを取っていると、

「やっぱりここですか……」

呆れた顔をした彼が立っていた。

私はちょうど口に入れたおにぎりを詰まらせ、慌てて飲み物を口にする。

「どうして社内で食べないんですか? 冬になったら寒くないですか?」

相変わらず感情の掴めない無表情な彼に、

「まぁ……その時は近くに食べに行くよ。それより何?」

と訊くと、

「いや、別に……」

とだけ答えて、彼は踵を返し、ビルへ戻りかけた。

「あ!」

私が慌てて声を掛けると、彼は「なにか?」と言いたげな顔で振り向いた。

「さっきはありがとう。その……助かりました」

そう伝えると、彼は眉を少しだけ動かして、

「別に、鮫島サンの為じゃないんで」

と呟いた。

(あれ? 私の名前、知ってるんだ)

驚いて彼の顔を見上げると、

「三島」

と彼が言った。

「え?」

「俺の名前。ちゃんと覚えて」

そう言って、私に顔を近付けてきた。

(近い、近い!)

慌てて身体を後ろに反らすと、彼は小さく笑った。

「何、意識してるんですか? 真っ赤になって……。鮫島サンって、案外可愛いんですね」

(ムカつく! 年下のくせに生意気な!)

私がムッとしていると、彼は私の顔を見て吹き出した。

「鮫島サンって、本当に思ったことが顔に出ますよね」

そう言って笑う彼の笑顔が、私の胸をドキリと高鳴らせた。

その時、ファイルを持つ彼の左薬指に、銀色に輝く指輪があるのに気が付いた。

(……まぁ、綺麗な子だから、結婚してて当たり前か)

ふとガッカリした気持ちになった自分に驚いてしまい、私は大きく首を横に振った。

そんな私を見て、彼は笑ったまま隣に座った。

「鮫島さん、いくつですか?」

突然そう聞かれて、思わず言葉に詰まる。

「こうして話していると、年上って感じしないですよね」

そう言って、彼は私の顔をじっと見つめた。

もっと若かったら、この視線にも平気でいられたのかもしれない。

十歳以上は年上であろう自分が急に恥ずかしくなり、思わず俯いた。

「ババアをからかうと、痛い目に遭うからね!」

自虐気味にそう言って、無理やり笑顔を作る。

すると彼は私の肩を掴み、

「自分で自分をババアって言うの、良くないですよ」

と真顔で言った。

真剣な彼の視線に、心臓がバクバクと激しく鳴り出す。

私は慌てて彼の手を振り払った。

「若い子がオバサンをからかうもんじゃないわよ! ほら、さっさと戻りなさい」

そう言って、彼の背中をわざと強く叩く。

彼は大袈裟に

「痛てぇ!」

と叫ぶと、小さく笑った。

「凹んだ顔より、あんたはそうしてるくらいがちょうど良いよ」

そう言うと、私の頭をぽんぽんと軽く叩いて去っていった。

年甲斐もなく、かなり年下であろう彼にドキドキさせられてしまった。

……悔しい。

ガキのくせに、とか。

年下のくせに、とか。

私は必死に頭の中で、彼に心を奪われないための予防線を張り巡らせる。

怖かった。

今までの自分が、塗り替えられてしまいそうで。

「年下のくせに、生意気なんだよ……」

泣き出しそうな自分をごまかすように、私は遠ざかる彼の背中に向かって、ぽつりと呟いた。

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