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第2話

作者: 流星群を抜け出したら
翌日、白斗と私は大学の同窓会に出席した。

まさか千夏まで来ているとは思いもしなかった。

千夏は白いドレスを身にまとい、白斗の隣に座っている。

誰かが面白がるように、からかうような声を上げた。

「竹森も来たのか?

昔、お前と鎌仲はうちの大学でいちばん有名なカップルだったな。

片や花火デザインの天才、片や写真学科のマドンナ。

卒業したら結婚するんだろうって、みんな思ってたぞ」

入口に立った私は、思わず足を止めた。

千夏は私より2学年上だった。

学生時代、私はずっと彼女に憧れていた。

きれいで、明るくて、作品はいつも学校の展示室のいちばん目立つ場所に飾られていた。

あの頃、私が初めて白斗の名前を耳にしたのも、千夏がきっかけだった。

誰もが口をそろえて、二人は運命の人だと言っていた。

その後、白斗が私に告白してきたとき、私はひそかに思ったことがある。

もしかしたら、運命が一度くらい、私の味方をしてくれたのかもしれない、と。

けれど今、千夏は彼の隣に座っている。

周りの人たちが口にする冗談交じりの言葉が、細い針となって、私の胸に何本も何本も突き刺さった。

私はどうにか笑顔を作り、白斗のもう片側に座った。

同窓会も半ばを過ぎた頃、トイレに立った。

戻ってくると、個室の扉が少し開いたままになっている。

中では誰かが酔っ払い、笑いながら尋ねた。

「なあ、鎌仲。正直に聞かせてくれ。

昔はあんなに竹森と仲がよかったのに、どうして急に作田を口説くようになったんだ?

今でも、あれだけはどうにも理解できないんだぞ」

個室の中が、数秒間静まり返った。

白斗は酒を飲んでいたせいか、いつもより気の抜けた口調で答えた。

「もう昔のことだろ」

すると、千夏がふいに笑った。

「別に隠すようなことじゃないでしょ。

あの頃、私と白斗はひどい喧嘩をしてたの。彼は、自分が私じゃなきゃ駄目ってわけじゃないんだって、意地になって証明しようとしたのよ」

声はとても小さかった。それでも、その言葉はひとつ残らず私の耳に届いた。

「あの日、ちょうど作田さんが通りかかったの。

白斗ったら、適当に指を差して言ったのよ。

『千夏、見てろ。3日以内に、あいつを落としてみせる』ってね。

『俺が、お前じゃなきゃ駄目だとでも思ってるのか?』って」

個室の中で、誰かが吹き出した。

「マジ?じゃあ、作田は二人が喧嘩してるときに、たまたま巻き込まれただけってことか?」

千夏はすぐには答えなかった。

数秒して、ようやく口を開いたときには、さすがにまずいと思ったのか、そっとため息をついた。

「そういうつもりで言ったんじゃないの。

作田さんはいい子よ。

ただ、あのときのことがきっかけだったのは、本当なの」

その瞬間、周りの音がすべて遠のいた。

胸の奥から込み上げる苦しさに、息さえまともにできなくなりそうだ。

運命が私に与えてくれた恋だと思っていたもの。

それは、白斗が意地を張って、たまたま指差した相手に仕掛けた、ただの悪ふざけだった。

私は何度も何度も、初めて白斗と出会った日のことを思い返してきた。

本を抱えて歩いていた私を彼が呼び止め、目元に笑みを浮かべて尋ねた。

「よかったら連絡先を交換しない?」

白斗の肩に陽の光が降り注いでいた。まるで夢の中から現れた男の子のようだった。

あのとき、私は思ったのだ。

ようやく、運命が一度くらい私を選んでくれたのだと。

けれど今になって、ようやくわかった。

私の7年間は、最初から最後まで、まるごと笑いものだったのだ。

誰かがさらに尋ねた。

「じゃあ、白斗は今、後悔してるのか?」

個室の中が、ふいに静まり返った。

私は息を潜めた。

ここまでのことがあったのに、私はまだ白斗の答えを待っている。

後悔なんてしていない、と。あれから本当に私を愛するようになったのだと、そう言ってほしい。

けれど、白斗は長い間、黙り込んだままだ。

あまりにも長く、手のひらが少しずつ冷たくなっていくほどだ。

それでも、彼は何ひとつ答えなかった。

あの瞬間、私はむしろ、白斗に一度くらい嘘をついてほしいとさえ思った。

せめて、私を騙してくれたらよかったのに。

けれど、白斗は最後まで答えなかった。

世の中には、口に出されないほうが、かえって残酷な答えもあるのだ。

そのとき、個室の中から、食器が倒れる音がした。

千夏が小さく悲鳴を上げた。

「熱っ!」

白斗は、ほとんど思わず立ち上がった。

次の瞬間、個室の扉が勢いよく開いた。

白斗は千夏を抱きかかえ、慌ただしく外へ出てきた。そして、扉の前に立っていた私に、まともにぶつかった。

勢いよく押し倒された私は、床に激しく叩きつけられた。

お腹に、鋭い痛みが走った。

何かが、無理やり引き裂かれたような痛みだ。

白斗は私を見下ろし、眉をひそめた。

「穂香、こんなところで何してるんだ?」

痛みで声を震わせながら、私は思わずお腹を押さえた。

「実は私、白斗の子を……」

最後まで言い終える前に、千夏が小さく息を呑んだ。

白斗の視線は一瞬で彼女に向き、目には隠しきれない焦りが浮かんでいる。

「俺が千夏を病院へ連れていくから、穂香は先に一人で帰っててくれ。

ちょっと転んだだけだろ。家で少し休めばよくなる」

私は彼の袖をつかみ、指先まで震えている。

「違うの、私……」

言い終える前に、白斗は私の手を振りほどき、足早にその場を去っていった。

私のそばを通り過ぎる一瞬、千夏がこちらに笑いかけるのが見えた。

その目には、むき出しの挑発と勝ち誇った色が浮かんでいる。

私は冷たい廊下の床に座り込み、遠ざかっていく白斗の背中を見つめた。

お腹が、何度も何度も鈍く痛む。

生温かい血が、脚を伝って少しずつ流れ落ちていく。

結局、私は一人で病院へ行った。

医師は検査結果に目を通すと、眉をひそめて言った。

「赤ちゃんは、今のところ無事です。

でも、これ以上、心身に負担をかけてはいけません。無理も禁物です」

医師は、コートを腕にかけ、カバンを抱え込む私に目を向けた。

「ご家族の方は?」

私は長い間黙っていて、それからそっと答えた。

「いません」

その瞬間、ひどく馬鹿らしく思えた。

この子には、確かに父親がいる。

それなのに、その父親に知らせる機会さえ与えてもらえなかった。

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