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第4話

作者: 流星群を抜け出したら
午前2時、お腹を襲う激痛で目が覚めた。

壁に手をつきながら体を起こすと、目の前が何度も暗くなった。

白斗は家にいない。

数秒迷った末、彼に電話をかけた。

何度も呼び出し音が鳴って、ようやくつながった。

千夏が泣き声まじりに白斗の名前を呼ぶ声が聞こえた。

白斗の声はひどく慌てている。

「穂香、どうした?」

私は壁にもたれ、息をするのも苦しいほどの痛みに耐えながら答えた。

「白斗……

私、ものすごく血が出てる……」

電話の向こうが、一瞬静かになった。

けれど次の瞬間、千夏がまた泣きながら白斗を呼んだ。

白斗はすぐに口を開いた。

「とりあえず自分でタクシーを呼んで病院に行ってくれ。

千夏が花火の火の粉で手を火傷したんだ。今はそばを離れられない」

私は指先に少しずつ力を込めた。

千夏の手の甲に飛んだのは、ほんのわずかな火の粉。

それでも、血まみれになっている私より大事なのだ。

私は静かに尋ねた。

「白斗、もし私が本当に大変なことになったら、どうするの?」

彼は苛立ったように息を吸った。

「そんなこと言うな。どうしていつも、こんなときに限って面倒を起こすんだ?

千夏は本当に痛がってるんだ。少しは聞き分けよくしてくれ」

電話の向こうで、また千夏の泣き声が響いた。

白斗は声を落として言った。

「もう切るぞ。病院に着いたら連絡してくれ」

通話が切れ、ツーツーという音が鳴った。

部屋は再び静まり返った。

私はうつむき、手のひらについた血を見つめた。

ふいに、7年分の恋なんて、結局この程度のものだったのだと思った。

もう、これ以上何かを言う意味さえない。

自分で救急車を呼んだ。

搬送される間、ずっとお腹を押さえている。

それでも血は止まることなく流れ続けた。

痛みがいちばんひどくなったとき、ふと思った。

このまま道の途中で死んでしまっても、それはそれでいいのかもしれない、と。

少なくとも、7年間も白斗に費やした時間が無駄だったと認めずに済むのだから。

病院に着くと、看護師が慌てて私を支えた。

「ご家族の方は?」

私は数秒黙った。

それから、首を横に振った。

「いません」

そう口にすると、意外にも、想像していたほどの痛みはない。

ただ、空っぽだ。

何かがようやく、すっかり抜け落ちてしまったような感覚だ。

診察を終えた医師は、ひどく険しい顔をしている。

「赤ちゃんは助かりませんでした。

流産による出血もひどかったんです。もう少し処置が遅れていたら、命に関わるところでした」

医師は少し間を置き、声を和らげた。

「今後、妊娠するのは難しくなるかもしれません」

私はベッドに横たわり、頭の上の青白い照明を見つめている。

涙は一滴もこぼれなかった。

そのとき、スマホが震えた。

千夏がSNSに写真を投稿したのだ。

写真の中で、彼女の手の甲はほんの一部が赤くなっているだけだ。

白斗は彼女の前に片膝をつき、ひどく慎重な手つきで薬を塗っている。

添えられた言葉は、こうだ。

【火の粉が降ってきたとき、そばにいてくれてよかった】

その下には、こんなコメントが並んでいる。

【鎌仲くんが心配しすぎじゃないの?

火傷っていうより、愛されすぎてるって感じだね】

千夏は照れている顔の絵文字で返信した。

【もう、大げさなんだから】

私はその言葉を見つめ、ふっと笑った。

大げさなほどの心配。

そんなもの、どうして一度も私に向けてくれなかったのだろう。

千夏の手の甲が少し赤くなっただけで、白斗は大騒ぎした。

一方、血まみれの私に対しては、ただ騒ぎ立てているとしか思わなかった。

夜が明ける頃、ようやく点滴が終わった。

私は疲れきった体を引きずるようにして家へ帰った。

リビングは静まり返っている。

ロボット掃除機は、いつの間にか充電が切れて止まっていた。

まるで、ようやく役目を終えた道化のようだ。

私は診断書を取り出し、食卓の上に置いた。

その隣には、指輪も置いた。

もはや、どちらもどうでもいいものだ。

3時間後の飛行機に乗り、ここを離れる。

そして、白斗の世界から消えるのだ。

……

白斗が帰ってきたのは、午前中になってからだ。

手には薬をぶら下げている。

昨夜、穂香がひどく血を流していると言ったことを、ようやく思い出したようだ。

彼は扉を開け、まずリビングの真ん中に止まったロボット掃除機を見た。

次に、半分ほど空になったクローゼット。

最後に、食卓の上に置かれた指輪と診断書に目を留めた。

白斗はぴたりと足を止め、診断書を手に取った。

視線が、そこに書かれた文字の上を走る。

【流産】

【流産後の大量出血】

【今後、妊娠しにくくなる可能性あり】

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