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落ちこぼれ女子社員は時を5秒操れる宇宙人、バレたら母星へ強制送還!  なのに溺愛上司が離してくれません
落ちこぼれ女子社員は時を5秒操れる宇宙人、バレたら母星へ強制送還! なのに溺愛上司が離してくれません
Penulis: 憮然野郎

第1話:今、この5秒で彼を救う

Penulis: 憮然野郎
last update Tanggal publikasi: 2026-03-06 18:00:00

「ああっ、またやった……!」

オフィスに私の情けない叫びが響いた。手元から滑り落ちたのは、淹れたてのコーヒー。

地球の重力というのは、どうしてこうも気まぐれなのだろう。銀河系の端っこから調査にやってきて三ヶ月。私は未だに、この星の物理法則と仲良くなれずにいた。

名前は星野ルナ。大手広告代理店で「万年ドジっ子」のレッテルを貼られた底辺社員。

……というのは仮の姿だ。

本当の正体は、銀河の果てから地球の文化を調査しに来た【 観測者(エイリアン) 】。そして、指先ひとつで時間を「5秒」だけ操れる、銀河でも希少な能力の持ち主である。

でも、その力を使うことは厳禁だ。

もし地球人に正体がバレれば、即・母星へ強制送還。私の地球での「おにぎり探求生活」は終わってしまう。

「星野。……怪我はないか」

低く、落ち着いた声が頭上から降ってきた。

九条蓮(くじょう れん)。

我が社の誇る超エリート上司。常に背筋を伸ばし、一分の隙もないスーツ姿の彼は、社内一ストイックな男として知られている。

「す、すみません、九条部長……! すぐ片付けます!」

「謝罪はいらない。だが、君は自分の歩幅を理解していない。……これを使いなさい」

彼は甘い言葉をかけるわけでもなく、無造作に自分の白いハンカチを差し出した。

周囲の社員は「また部長に詰められてる」と遠巻きに見ているが、違う。彼は、私が火傷をしていないか、一番に確認してくれたのだ。

「他人の評価を気にする暇があったら、自分の足元を見なさい。私は、君の価値は他人の物差しで決まるものではないと考えている」

ぶっきらぼうな言い方。でも、周囲が「無能」と笑う中で、彼だけは私を「一人の社員」として正当に、ストイックに評価してくれている。

――かっこいい。

私が、彼が絶体絶命の窮地に陥るたびに、こっそり時間を止めて救っているのは、私なりの恩返しでもあった。

その日の夕方。事件は起きた。

新プロジェクトのプレゼンのため、九条部長と共にビルを出て移動していた時のことだ。

歩道を歩く九条部長の背中を見ながら、私は心の中で

「歩く姿もトレンディドラマの主役みたいだなぁ」なんて場違いなことを考えていた。

その時だった。

ガガガッ、という不穏な金属音が上空から響いた。

見上げると、工事中のビルから巨大な鉄骨が、固定具から外れて落下してくるのが見えた。

落ちる先は――九条部長の真上。

「部長、危ない!」

叫んだが、遅い。彼は避けるよりも先に、咄嗟に私の肩を掴んで自分の方へ引き寄せ、庇おうとした。

死の淵にあってなお、彼は自分より部下を優先する。……そんなの、絶対に死なせられない。

私は周囲に誰も見ていないことを瞬時に確認し、指を鳴らした。

【 世界よ、止まれ。 】

その瞬間、色が消えた。

落下する鉄骨も、行き交う車も、道行く人々の驚愕の表情も、すべてがモノクロの静止画に変わる。

私だけに許された、自由な5秒間。

「……本当、お人好しなんだから」

私は静止した世界の中で、九条部長の体を抱えるようにして数メートル横へ引きずった。

至近距離で見る彼の顔は、ストイックな性格を象徴するように凛々しい。でも、その腕は私を必死に守ろうとしていた形で固まっていた。

残り、1秒。

私は何食わぬ顔で、自分も彼に巻き込まれて転んだような姿勢を取る。

【 時間は、動き出す。 】

ズドォォォォンッ!!

鼓膜を震わせる轟音と共に、鉄骨がアスファルトを砕いた。九条部長のいた場所は、無残に陥没している。

「……なっ?」

九条部長が呆然とした声を漏らした。

彼は歩道に倒れ込み、その腕の中には、私がいた。

「だ、大丈夫ですか、部長……! びっくりしましたね……!」

「星野……今、君が動いたのか?」

九条部長が私の肩を強く掴む。その瞳は驚きに揺れていたが、すぐに鋭い「観察者の目」に変わった。

彼は、他の誰よりも私のことを見ていた。だからこそ、今の「不自然な速さ」に気づいてしまったのだ。

「えへへ、私、焦ると足が速くなるんですぅ」

いつもの笑顔で誤魔化そうとした。けれど、九条部長は私を離さない。それどころか、顔をぐっと近づけてきた。

その瞬間、彼から余裕の仮面が剥がれ落ちる。

「……君は何者だ。この短時間で俺を救い、自分まで無傷でいるなど、計算が合わない」

心臓が跳ねた。至近距離すぎる。

剥き出しになった【 俺 】という言葉と、熱い吐息が頬にかかる。厳格な彼が、これほどまでに激しい執着心を見せるなんて。

(……今、この5秒で……彼にキスしてもバレないよね?)

そんな考えが頭をよぎった瞬間、九条部長が私の耳元で低く囁いた。

「逃がさないぞ。君が隠しているもの、すべて俺に吐き出せ」

強制送還の危機と、ストイックな彼からの強引な独占欲。

私の地球調査は、どうやらとんでもない方向へ走り出してしまったみたいだ。

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