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08

Author: 槇瀬光琉
last update Last Updated: 2025-08-08 18:30:58

いつも使ってるスーパーの駐車場に設置してある銀行のATMで残高の確認ついでに必要最低限のお金をおろしスーパーに入った。

「さて、何を買おうか?」

冷蔵庫の中身を思い出しながら考える。最近、買い出しに来てないからそんなに食材がなかったな。

今まで1人で生きてきた分だけ俺は自分で料理ができる。これも意地で覚えた生きていくために。そうじゃなきゃ生きてこれなかったからね。料理番組で覚えたり、本で覚えたり、今ではオリジナルレシピもあったりする。それだけ一人で生きていくためには必要だったんだ。

でも…1人で食べる料理は美味しくない。ただ虚しいだけ…。

だからちゃんとした料理はたまにしか作らない。1人だと食べる気が起きないからなんだけどさ。

適当に買い物を済ませた俺は独り歩き慣れた道を歩く。思い出すのは幼い頃まだ母がいたあの日。思い出したって戻ってくるわけじゃないけどさ…。

「いつまで縛り付けとけば気がすむんだよ」

崩壊した家庭ならいつまでも家族ごっこなんかしてなくてもいいだろ?

いい加減にしてくれ、俺を自由にしてくれ…。もう疲れた。

俺はいつまで俺を演じればいい?

誰かこんな俺を殺して?

誰にも迷惑がかからないように壊して欲しい…

俺は無意識のうちに唇を噛み締めていた。強く噛んでいたのか唇が切れ血の味が口の中に広がった。

「いつまで我慢すればいいんだよ」

一人呟いたって答えは返ってこない。結局、結論を出すのはあの2人なのだから…。

俺はもう一度溜め息をつき歩くスピードを上げた。

「蒼樹」

家の近くで学校から帰って来た翔太に呼び止められた。

「今、帰り?」

翔太に聞いてみた。

「あぁ、これコピー」

翔太はカバンの中からコピーを出して俺に差し出す。わざわざコンビニでコピーしてくれたんだ。

「ありがとう、寄ってく?」

それを受け取り聞いてみた。

「いいのか?」

反対に聞き返されちゃったや。

「俺はいいけど、おばさんが待ってるか」

寄っていくかと自分で聞いといて、おばさんの存在を思い出した。

「いや、今日は誰もいねぇんだわ。飯どうするか悩んでたとこ」

翔太が小さく笑いながら言う。そういうところ優しいよね。今の俺が一人でいたくないのわかってるから…。

「じゃぁ、寄ってけば?ご飯だすよ?」

俺はもう一度聞いてみた。1人分のご飯が増えたところで困らないからだ。

「じゃぁ、頼む」

翔太はそう言いながら俺の頭を撫でる。

「了解。じゃぁ、今夜は翔太の好物の煮込みハンバーグでも作ろうかな」

俺は翔太の優しさを受け止めながらメニューを決める。

「やりぃ、楽しみだ」

翔太が嬉しそうにガッツポーズを作る。翔太の好物なんだよね煮込みハンバーグって。

俺は玄関の鍵を開けて久しぶりに翔太を家の中へ招き入れた。お互いに家で会うことはしないからね。外で会うことの方が多いもん。俺は彷徨ってるし、翔太はZEAの溜まり場にいることの方が多いもんね。翔太は勝手知ったるなんとやらとばかりに、さっさとリビングに入っていった。

俺はドアと鍵を閉めてからキッチンに行き、食材を冷蔵庫の中にしまい、変わりに晩御飯の材料を取り出し準備し始めた。

俺が晩御飯を作っていると不意に

「なぁ、これってどうやるんだったけ?」

リビングで課題をやっていた翔太がキッチンに教科書を持って来て聞いてくる。

「あぁ、これはXをこっちに持って来てYをかければいいんだよ」

俺はその教科書で、翔太がつまずいてる問題を見て答えた。

「あぁ、それか。サンキュー」

翔太はその答えを聞いて納得して戻っていく。翔太も頭がいいからね。ヒントさえあれば簡単にといてくんだ。俺はそんな翔太の背を見送り作業の続きをしていった。

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