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09

Author: 槇瀬光琉
last update Last Updated: 2025-08-09 18:45:35

「ねぇ翔ちゃん、ドレッシングがゴマ味しかないけどいい?」

俺はふと思い出したことを聞いてみる。サラダを作る予定だったけど、俺はドレッシング派だからドレッシングしかないんだ。

「ん?あぁ、いいぜ」

集中してる翔太からは生返事が返ってくる。

翔太のヤツは一個のことに集中すると周りのこと考えられなくなるんだよね。俺と違って集中するとそれに集中するからさ。俺はその気がないからあんまり集中しないんだけどね。

あいつのことだから晩飯ができる前に課題を終わらせる気だよ。

俺は課題をやってる翔太をそのままに晩飯の続きをする。と言ってもあとは煮込むだけだからそんなに時間はかからないけどね。

俺はぼんやりと鍋を見つめる。考えるのは自分の存在の意味。

俺の存在理由は何?

俺はいてもいいの?

そんなことばかりが頭の中に浮かんでは消えていく。

「はっ、バカらしい」

今に始まったことじゃないのに…。

「翔ちゃん出来たよぉ」

俺は出来上がったご飯をテーブルに並べながら翔太を呼ぶ。

「ん、今行く」

翔太はノートと教科書を片付けてキッチンに出てくる。

「食べよう」

俺が椅子に座って言えば

「いただきます」

翔太も同じように椅子に座って食べ始める。

「うめぇ、相変わらずうめぇな」

翔太は本当に美味しそうに食べてくれる。

「それはよかった」

俺は小さく笑う。が、困った。食欲がねぇや。

「無理して食うことねぇんじゃね?」

やっぱり翔太にはバレるか。付き合いが長いからバレちゃうよなぁ。

「悪い、食べて。大丈夫だと思ったんだけどなぁ」

俺は自分の分の皿を翔太の前に置く。

「しょうがねぇんじゃね?こればっかりはさ」

翔太は俺の分のハンバーグに手を出しながら言ってくる。それでも深く追求してこないのは翔太の優しさだってのはわかってる。

「まぁ、いいけどさ。早く解放してくれ。それが今の俺の気持ち」

俺は箸を置きいう。翔太だから何のことかはちゃんと伝わるし、わかる。

「で?今夜は?」

俺がこれ以上考えないで済むように翔太は話題を変えてくれる。

「家にはいない。かと言って彷徨うことはしない。でも外には出る」

俺は少し考えて答える。今は家にいたい気分じゃない。かといえ彷徨う気にもなれない。あの人に逢ってもいいのかもしれない。いや、逢いたいのかもしれない金の狼であるあの人に…

「了解。ごちそうさま」

翔太はすべて食べ終えて言う。

「お粗末さまでした」

俺は食器を片付け始めた。俺が片づけをしてる間に翔太はリビングに戻って帰る準備を始めた。

「なぁ、大丈夫か?」

急にそんなことを聞いてくる。俺を心配してるからこその言葉。

「大丈夫だって。今更、気にしてないよ」

俺は小さく笑って答えた。気にはしてないけど、ダメージは受けている。それを一番知ってるのは他ならぬこの男だ。

「ならいいけど。メンバーが待ってるし、帰るな」

それでも深く追求しないのは翔太の優しだ。翔太は帰るためにカバンを持って玄関に向かう。

「みんなによろしく言っといてよ」

俺は見送るために玄関までついて行く。

「了解。じゃぁ、また明日な」

翔太はそうとだけ言い残し俺の頭を撫でてから帰って行った。俺は鍵をかけて、キッチンに戻り洗い物を済ませてから、リビングのソファの上に置いておいたコピーを持って部屋に戻った。椅子に座りカバンの中からノートを取り出し、それを書き写していった。

「やっぱり、逢いに行こうかな?」

コピーしてもらったものを全部、写し終えて俺はノートを片付けて呟く。

逢ってどうするってわけではないけど、ただ逢いたいと思った。

俺は携帯と財布をポケットの中にしまい明かりを消して部屋を出て下へと行き家を出た。

彼に逢いに行くために…

少し足早にいつもの公園へと向かったのだった。

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