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161

Auteur: 槇瀬光琉
last update Date de publication: 2026-11-07 18:22:53

side翔太

俺は大きく溜め息をつき、少し考える。

これを口にしてもいいものかと……。

「俺たちZEAと蒼華の掟は知ってるよな?」

俺は雅に問いかける。

「それは嫌ってほどね」

そう返事が返ってきた。

さすが夜の住人だけあるな。

「俺たちと蒼華の間には、実は二つの掟があった」

俺は溜め息交じりに告げる。

「二つ? 一つじゃないの?」

雅が驚く。

清のやつ、このことは話してなかったんだな。

「一つはお前たちの知る掟。もう一つは、俺たちと蒼華だけの間で交わされた掟」

そう。

俺たちZEAと蒼華だけの間で交わされた掟。

「蒼華が俺たちを必要としなかったら切り捨てるという掟。それに俺たちは逆らうことができない。俺たちにとって蒼華が全てだ」

俺たちと蒼華で交わされた掟。

闇の……闇の蒼華のせいだ。

それさえなければ……。

「でも、なんで? それだけなら苗代くんは守ることが出来るんじゃないの?」

雅が聞いてくる。

確かに普通なら、そう考えるのが自然だ。

だが……。

俺は小さく首を振り、

「それは出来ないんだ」

答える。

そう、それは出来ない。

「どうして!」

雅が掴みかからん勢いで聞いてくる。

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  • 蒼い華が咲く   161

    side翔太俺は大きく溜め息をつき、少し考える。これを口にしてもいいものかと……。「俺たちZEAと蒼華の掟は知ってるよな?」俺は雅に問いかける。「それは嫌ってほどね」そう返事が返ってきた。さすが夜の住人だけあるな。「俺たちと蒼華の間には、実は二つの掟があった」俺は溜め息交じりに告げる。「二つ? 一つじゃないの?」雅が驚く。清のやつ、このことは話してなかったんだな。「一つはお前たちの知る掟。もう一つは、俺たちと蒼華だけの間で交わされた掟」そう。俺たちZEAと蒼華だけの間で交わされた掟。「蒼華が俺たちを必要としなかったら切り捨てるという掟。それに俺たちは逆らうことができない。俺たちにとって蒼華が全てだ」俺たちと蒼華で交わされた掟。闇の……闇の蒼華のせいだ。それさえなければ……。「でも、なんで? それだけなら苗代くんは守ることが出来るんじゃないの?」雅が聞いてくる。確かに普通なら、そう考えるのが自然だ。だが……。俺は小さく首を振り、「それは出来ないんだ」答える。そう、それは出来ない。「どうして!」雅が掴みかからん勢いで聞いてくる。「蒼華とZEAの掟は、俺たち個人でも守らなくちゃならないんだ」俺はそう告げる。蒼華が俺たちを切り捨てたとき、俺たちは一切、蒼華に関わることが許されない。「そんな。じゃぁ織田くんは…」雅が呟く。「佐久間の事件のとき、俺たちは蒼華に切り捨てられた。理由は判ってる。俺たちを守るためだって……」俺は膝の上で組んでいた手に力を込める。「それじゃぁ…」雅が聞いてくる。「あの事件から俺たちは、蒼華だけじゃなく蒼樹に関わることが出来ない。俺は同じクラスだから、こいつが何をされてるのか判ってた。だけど、それを止めることが出来なかった」掟を破ってしまってもよかった。だけど……。「俺と蒼樹との関係を崩すのは、俺的には避けたい。それに蒼樹は一度決めたことは頑として変えないから…俺はさ…見守ることしか出来なかったんだ…」そう。俺はあの場所で見守ることしか出来なかった……。「金城みたいに俺は出来ない。それに今、一番必要としてるのは金城だから……だから金城に任せるしかないんだ」今の蒼樹は、俺ですら拒絶してる。拒絶してるというよりも、俺たちを寄せ付けられなくなってしまったんだ。そん

  • 蒼い華が咲く   160

    side雅 僕は生徒会室を出て、溜め息をつく。拓真が僕を名前で呼ぶときは、かなり怒ってるときだ。ということは、A組でそれなりに怒ったに違いない。まぁ今回の件に関しては、僕もかなり苛立ちを覚えたけどね。 僕は取り敢えず自分の教室に入り、「先生。拓真のカバン持ってくから」拓真の席に行き、机を片付け、カバンの中にしまいながら言う。今の授業は、うちのクラスも丁度担任なんだ。だから何も文句は言わない。 織田くんの状況を知っているから……。拓真と織田くんの関係を知っているから……。 「直希、靖、授業終わったら生徒会室に来てだって」僕は二人にそう告げる。二人は手を上げ、返事をした。拓真が言わなくても判る。生徒会の仕事を片付けるということは、拓真の決心が固まったということだ。織田くんを治すために休むという決心。 僕はそのまま教室を出て、A組の後ろの扉から中に入り、「先生。織田くんのカバンもらってくからね」そう告げた。織田くんは窓側の一番後ろだからね。僕はクラス中の視線を無視して、織田くんの席へと行き、机の上を片付け、カバンを机の上に置く。そして机の中を片付けるためにしゃがみ、中を見て驚いた。きれいにコピーされたノート。きっと苗代くんなんだろう。それと一緒にあるのは、ノートの切れ端のメモ。きれいに束ねられている。そんなのがいくつも入ってた。僕は不思議に思い、それを取り、書かれた文章を見てブチ切れた。「…ふざけるな…ふざけるなお前ら!」僕は自然と叫んでいた。みんなの視線が一斉に僕に集まる。「なんだよこれ! なんだよこれは! ふざけんじゃねぇ!」そこに書かれた文章は、どれも織田くんを貶すもの。罵るもの。冗談じゃない!「織田くんを…夜の街を彷徨う蒼い華の蒼華を侮辱するなんて、君たち勇気があるね。彼をそこら辺のホテルの前で自分の身体に値段をつけて、変態親父に買われてるやつと一緒にすんじゃねぇよ」冗談じゃない。「蒼華は彷徨い華だ。一度相手した奴は二度と相手をしない。誰にも媚を売りはしない。どこにも根をつけない彷徨い華だ。彼が唯一、自分から心を許したのは金狼だけだ!」僕はバン! と机を叩く。冗談じゃない!「蒼華は夜の街では高嶺の華なんだよ! 夜の住人ですら彼に触れることを許されない。彼に危害を加えることすら出来

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    side拓真 俺は蒼樹を二人に頼み、生徒会室を出た。今の俺はいつになく苛立っていた。何にって?蒼樹の両親に対して、苗代に対して、ZEAのメンバーに対して、GoldWolfに対して、佐久間に対して、佐久間の弟に対して、蒼樹に対して、そして俺自身に対して…。今起こってる現状に対して憤りを覚える。どうしようもない怒り。蒼樹を守りきれなかった自分の不甲斐無さ。 蒼樹の異変に気付けなかった不甲斐無さ。 蒼樹を支えきれなかった不甲斐無さ。そんなもの全てが憤りとなって、俺の中に渦巻く。苛立っても仕方がないことは百も承知だ。だが、どうしようもない感情。あいつを守るために傍にいると決めたのに…。結局、俺は守りきれていない。それどころか、あいつは壊れてしまった。崩壊が続いている。本当に戻れなくなってしまう。なんとしても元に戻さなければ……。 その前に、どうしてもやっておきたい事が一つだけある。 2-Aの連中に宣戦布告だ。俺はもう隠しはしない。あいつを守ると決めたそのときから、覚悟は決めた。俺が彷徨う金狼だとばれてもかまわない。もともと隠していたわけじゃないんだからな。ただ姿を隠してただけだ。蒼華の為に……。 俺は足早に廊下を歩き、授業中である2-Aの扉を勢いよく開けた。俺を見た吉田は、なんとも言いがたい顔をして教科書を閉じた。 教室の中が何事かと騒がしくなる。俺は入り口に凭れ、「てめぇら、蒼樹を何だと思ってやがんだ? 利用するだけ利用して、あいつの素性がわかれば玩具の様にポイ捨てか?」そう叫んだ。部屋の中がシーンとなる。「てめぇら、誰も気付いてねぇもんな。蒼樹が今、どんだけ危険な状態に陥ってるのかさえな」俺は教室の中を睨んだまま言う。「蒼ちゃん…そんなに悪いの?」そう聞いてきたのは、確か牧野だったか?「今のあいつはな、何も食べられねぇし、夜も薬がなきゃ眠れねぇ…。心が壊れちまってんだよ」俺はそう教えてやる。「そんな…そんな素振り全然…」牧野が俺に言ってくる。「ハッ。てめぇらが気付くわけねぇだろ? あいつはな、誰よりも傷付きやすくて、繊細で、臆病で、誰よりも優しいんだよ。そんなあいつが、てめぇらに自分の状態を気付かせるわけがねぇだろ!」俺は怒りのまま言葉をつなげる。「あいつはな、佐久間の魔の手からて

  • 蒼い華が咲く   158

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  • 蒼い華が咲く   157

    そのまま俺たちは大量の食材を持って、拓ちゃんの住むアパートに戻ってきた。「じゃぁまた連絡して」美優さんはそう言って帰っていった。拓ちゃん一人じゃ持ちきれないから、俺も荷物を持ってキッチンに向かった。拓ちゃんは、「適当にしてていいぞ」って、食材をしまいながら言うから、俺は部屋の中を見て回って、リビングのCDデッキのとこに行って立ち止まった。デッキの側に並べられてるCDを見ながら、「ねぇ…CDかけてもいい?」聞いてみた。「好きなのかけていいぞ」そう返事が返ってきたから、俺は並べられたCDの中から一枚取り出し、それをデッキにセットしてかけ始めた。中身はクラシックなんだけど、俺の好きな曲だったんだ。部屋の中に流れる曲。久しぶりに聞いたな…。「蒼樹。制服から着替えろ。服貸すから」いつの間にか冷蔵庫の片づけが終わったのか、拓ちゃんが言う。「は~い」俺はそう返事をして、拓ちゃんに付いていった。でもさ…。「拓ちゃんのパジャマがいい」だって動きやすいんだ。俺には丁度スカートみたいだけどさ。「好きなの着ろ」拓ちゃんも判ってたのか、そう言ってくれた。俺は適当に選ぶと、制服から拓ちゃんのパジャマに着替えた。リビングに戻って、ソファに座ってCDをじっと聴いてたの。1曲だけリピートにしちゃったんだけどね。でも拓ちゃんが文句言わないから、そのまま。拓ちゃんは何してるかって言うと、俺の薬と診断書を整理しつつ、キッチンに戻ってご飯の準備。 「蒼樹。出来たぞ」ご飯の準備が出来たのか、そう言われ、俺はキッチンに行く。「ヨーグルトだけじゃあれだから、野菜スープ作ってみた。無理して食べなくてもいいからな」拓ちゃんはそう言ってくれる。優しいよね。「うん。でも頑張ってみる。早く食べられるようになりたいから」俺はそう答え、拓ちゃんが用意してくれた晩御飯を食べ始めた。やっぱりね、初めは抵抗あるんだ。でもね…。拓ちゃんがいると不思議なの…。「拓ちゃんがいると…普通に食べられるから不思議だよ」俺はそう言いながら、少しだけだけど野菜スープも食べちゃった。 拓真は後片付けし始めたから、俺はまたソファの上。ボーっとしてる時間が多くなってきたかも…。そろそろかもな…。何も受け付けなくなるのも……。 「蒼樹、薬」拓ちゃんに呼ばれ、俺は

  • 蒼い華が咲く   156

    病院に着いて、心療内科に連れて行かれた。でも俺が喋れないから、拓ちゃんが色々と説明してくれた。「で? 蒼樹君は今どんな状態なのかな?」いきなりそう聞かれ、「暗闇の中。ガラスの檻の中に俺と小学6年のときの俺が閉じ込められてて、俺の膝まで真っ赤な血の海が迫ってきてる。空には淡い光…」俺はポツリポツリと言う。「その淡い光は何かわかるかな?」そう問われ、俺はずっと拓ちゃんのブレザーの裾を掴んだまま、「拓ちゃんの…優しさと…俺への想い…っ…」俺はそれだけ言うと、派手な音を立てて倒れた。「蒼樹!」 「蒼くん!」幸い、拓ちゃんが受け止めてくれたから頭は打たずにすんだみたいだ。俺はそのまま空き部屋のベッドに寝かされることになった。ついでに、いつもの点滴もしながら…。 「…っ…ここは?」目が覚めて、ベッドの上だったから俺が呟くと、「さっき倒れてベッドに寝かせた。点滴も済んでるし、帰ってもいいって。しばらく学校は休みだ。この後買い物に行きたいんだが、一人でアパートにいるか?」拓ちゃんが俺の手を握り締めたまま聞いてくる。「やだ! 人の多いとこは怖いけど…傍にいたい…」俺はそう答えた。そう、今の俺は人混みが怖くて行けない。でも拓ちゃんと離れると、もっと怖くて仕方がない。「じゃぁ、美優ねぇが連れてってくれるって言うから行くぞ」拓ちゃんがそう言うから、俺はベッドから降りた。二人で病室から出ると、「拓真、これ。診断書。学校に出せ。後、蒼くんの薬。一応睡眠薬もあるけど、飲むのは蒼くんが決めればいいって。それ以外は絶対に飲むこと」お兄ちゃんがいた。「ごめんね。お兄ちゃん。忙しいのに…」俺はそう呟く。勝さんは、「気にするな。蒼くんは俺にとっても大事な弟だからな。早く治せよ」そう言ってくれる。俺は小さく頷いた。「じゃぁ帰るな。兄貴、ありがとな」拓ちゃんはそう言って、俺を連れて病室を後にした。 病院を出ると、拓ちゃんは駐車場に向かい、一台の紅い軽自動車のところに行く。「姉貴。蒼樹も行くって」そう声をかけている。乗っているのは美優さん。「そう。じゃぁ乗って」美優さんはそう言って笑う。俺は拓ちゃんに促され、車に乗り込んだ。美優さんはそのまま車を発進させ、割と大きなデパートに来た。「ここ、品揃え多いから・・・。蒼ちゃんは大

  • 蒼い華が咲く   01 出逢いは偶然?それとも…

    俺の名前は織田蒼樹。一応高校2年生。生まれた時から蒼い髪に蒼い瞳。遺伝子の突然変異だって。そして、両親のどちらにも似なかった女顔で童顔。 これでも17歳なんですけど? 実年齢よりも3つか4つぐらい若く見られる。冗談じゃねぇつうの!そして、この髪と瞳のせいでついたあだ名が蒼い華。蒼華だって。まぁ、それには深いわけがあるんだけどね。俺の家庭はとっくの昔に冷めている。俺が小5の時に両親が不倫を始め、小6の春になったころ、二人は俺を置いて不倫相手の元へ行ってしまった。一人残された俺は心が壊れて夜遊びを覚えた。それが中学を上がる少し前のこと。一人、夜の相手を探すよ

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  • 蒼い華が咲く   02

    彷徨うつもりで家を出たけど俺が行きついた場所は夜の公園。公園の中央にある噴水の傍にあるベンチに腰掛けて空を見上げていた。今宵も一人…。俺がこの場所にいるときは誰も声を掛けては来ない。夜の街ではそれが暗黙の了解となっている。俺が人と触れ合うのを拒んでいるときは…。「今宵も一人ってねぇ。お前は何時も俺を見て何を考えてるんだろうね」一人呟きベンチの上で体育座りをして自分のつま先を見つめていた。こんな時は誰とも話をしたくはない。関わり合いたくはない。そのはずだったんだけどなぁ…。「隣に座ってもいいか?」その言葉に反応して声を掛けてきた人物を見る。夜の月の光に照らされて煌めく金の髪と漆黒の

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