LOGINそんなものでわかるはずがないと、いまさら言ったところで仕方がない。和彦は、こうして捕えられてしまった。
「お前は、こちらの命令に逆らえない。そのために、こうしてビデオに録画している。もし逆らうようなマネをしたら――わかるな?」 和彦が浅く頷くと、千尋の父親が男の一人に片手を差し出す。 「こいつの名前がわかるものはないか」 和彦がわずかに視線を動かすと、拉致されたときに落としたと思ったブリーフケースが男の手にあり、中から名刺入れを取り出していた。滅多に外で配ることはないが、そこには和彦の名刺が数枚収まっている。 そのうちの一枚を受け取った千尋の父親に、名刺の端を唇で挟むよう言われ、従った。 ビデオカメラが、また道具を呑み込まされてひくつく秘部から、再び欲情の兆しを見せて身を起こしかけた和彦のものを舐めるように撮っていき、さらに胸元まで上がる。ビデオカメラに見せつけるように胸の突起を弄られてから、とうとう顔の前にレンズが寄せられる。 和彦は体の熱はそのままに、絶望的な気持ちになった。辱められる姿を、顔を**** 今朝の朝食が、自分だけ粥が準備されていたのはどんな意味があるのだろうかと、和彦は食後のお茶を啜りながらずっと考えていた。 目の前では賢吾が悠然と新聞を開いており、和彦の隣では千尋が、朝のニュース番組をチェックしつつ、トーストにかぶりついていた。ちなみにこれで三枚目だ。 若い千尋の健啖ぶりはいまさらといえばいまさらだが、昨夜あれだけ体力を使えば、食欲に拍車もかかるのかもしれない。一方の和彦は、限界まで体力と精を搾り取られて、シャワーを浴びに行くのも苦労した。 客間で一人で休みたかったが、その前に朝メシを食えと言われて、賢吾の部屋に連れ戻された。 テレビを観ていた千尋がふいに、和彦の前に置かれた空の椀を覗き込んでくる。「和彦、あんま食ってないだろ。パンでも頼む?」 千尋のせっかくの気遣いだが、和彦は胃の辺りをさすって首を横に振る。「お粥で十分腹いっぱいになった」 横から口を挟んできたのは賢吾だ。「昨夜は肉をたらふく食ったからな。軽めに、と笠野に注文しておいた俺の読みは正しかったわけだ」「……なんでお粥なのかと思ったら、あんたか」「その代わり、昼には美味いものを食いに連れて行ってやる。鰻なんてどうだ?」「今から、昼なにを食べるか聞かれてもなー。というか、昨日の今日で、出歩いて大丈夫なのか……」 和彦が何を気にかけているか、当然賢吾はわかっている。「秋慈から、伊勢崎龍造に連絡して軽く牽制してもらうことになっている。実際の目的がどこにあるのかはっきりしないが、少なくともお前相手に狼藉を働こうという気はないはずだ。そんな気があったら、もっと早くに動いていただろうしな」「前に会って食事をしたときは、悪い印象は受けなかった。もちろん堅気じゃないから怖くはあるんだけど、玲く――息子に対する情愛を感じられたんだ」「……お前を騙すのは簡単だな」 そう言って賢吾は苦笑し、千尋は苦虫を噛み潰したような顔をしている。父子揃って、和彦
賢吾が場所を移動し、裸となった千尋がのしかかってくる。ちょっと待てと言いたかったが、当然のように腰を密着させてきて、舌なめずりせんばかりのしたたかな表情を目の当たりにして、言葉を呑み込む。止めたところで無駄だと、一瞬にして悟ってしまった。長嶺の男がこんな顔つきになったとき、和彦は捕食されるしかないのだ。 賢吾に愛されたばかりで、物欲しげにひくついている内奥の入り口に、千尋の欲望が擦りつけられる。興奮しきったそれを押し込まれたが、なんなく受け入れていた。 深々と繋がってから、千尋が大きく息を吐き出す。「まだ和彦の中、ビクビク震えてる……。刺激強すぎ」「俺のおかげだな」 傍らで余計なことを言った賢吾に、簡単に千尋は煽られる。「抜け駆けしやがって」「されるほうがマヌケなんだ」「……人の上に乗りかかりながら、父子ゲンカなんてするなよ」「しないよ。それより――」 耳元に顔を寄せてきた千尋にあることを囁かれ、和彦は素直に従う。千尋の背に両腕を回すと、賢吾の大蛇にしたように、犬を撫でる。犬っころなどと呼べるような可愛い存在ではなく、犬の身で人間の姫を自分のものにしてしまった執着の化け物ともいえる物騒な犬だ。 もし稜人と一緒に風呂に入るとき、この背のものをどう説明するのだろうかと、つい余計な心配をしていると、千尋にぐいっと顔を覗き込まれた。「和彦、誰のこと考えてる?」「心配しなくても、お前のことだ」 露骨に疑いの眼差しを向けられたので、和彦は千尋の髪を手荒く搔き乱す。何をやっているんだかと言いたげに、賢吾が呆れた顔をしている。 じゃれ合うようなやり取りはここまでで、急に表情を改めた千尋に唇を塞がれる。側にいる賢吾が最初は気になっていたが、千尋のしなやかな筋肉の躍動を体全体で受け止めているうちに、和彦はそれどころではなくなる。「ああっ、あっ、あぅっ、千、尋っ――」 内奥深くまで穿たれた欲望が、大胆に円を描くように動かされる。中からの刺激によって、再び和彦の欲望も勃ち上がり、反り返っている。先端から悦びの涙を垂らし始めると
「お前一人で気持ちよくなるな」 耳元で意地悪く賢吾に囁かれる。その声にすら反応してしまい、和彦は小さく嬌声を上げる。 内奥深くを抉るように重々しく突かれる。もう痛みはなく、静かな波のような快感が腰から這い上がってきた。和彦は全身を戦慄かせながら、肉の悦びに鳴く。賢吾が緩やかな律動を刻み始めた。「い、ぃ――……。賢吾、それ、いい……」 賢吾の逞しい腰には両足を絡めて、はしたなく腰を揺する。賢吾が低く笑い声を洩らした。「もう箍が外れたのか、和彦」「うる、さっ……」 和彦を焦らすように、ふいに賢吾が動きを止め、内奥からゆっくりと欲望を引き抜いていく。勝手に体が反応し、内奥が激しく収縮して欲望を締め付ける。 賢吾に片手を取られて下肢へと導かれる。何を求められているのか察した和彦は、興奮と羞恥で全身を熱くしながら、自ら内奥の入り口に指を這わせ、わずかに呑み込んでいる賢吾の欲望の形もなぞる。こんなものが自分の中に収まっていたのかといまさらながら戦く。「どうしてほしいんだ。撫でてるだけじゃ、お前は気持ちよくならねーだろ」「……本当に、意地が悪いな」「そんな男に惚れてるんだろ。趣味がいいな」 自分で言うなと、つい噴き出した和彦だが、賢吾と唇を触れ合わせてから小声でせがんだ。「あんたに気持ちよくされたいんだ。もっと……」 すぐさま深々と内奥を刺し貫かれる。短く悲鳴を上げたときには、快感の波にさらわれていた。全身を駆け抜ける快美さに呼吸も忘れ、閉じた瞼の裏で舞う極彩色の光に酔う。そんな和彦をさらに極めさせようと、賢吾が動く。「うあっ、あっ、あうぅっ――」 重々しい律動に合わせて、反り返って震える和彦の欲望が精を吐き出す。「おい、俺を置いていくな」 柔らかな声で窘められ、ゆっくりと目を開く。再び胸が重なり、和彦は両腕でしっかりと賢吾にしがみつく。 張り詰めた逞しい欲望が、限界が近いことを知らせてくる。緩やかな動きで内奥を
浴衣の裾をたくし上げられ、乱暴に下着を剥ぎ取られる。両足を抱え上げられたうえに、大きく左右に広げた格好を取らされた。和彦に見せつけるように舐めて唾液で濡らした指を、賢吾は内奥の入り口へと這わせてきた。「うっ、う……」 こじ開けるようにして、一本の指が付け根まで挿入される。疼きと異物感に和彦は声を洩らしながら、きつく指を締め付ける。すぐに指の数は増やされ、内側から解されていく。 襞と粘膜をじっくりと擦り上げられ、掻き回される。賢吾の見ている前で、瞬く間に和彦の欲望は身を起こし、切なく震える。「いやらしいオンナだ」 うっすらと笑みを浮かべて呟いた賢吾に欲望を軽く指で弾かれ、和彦は息を詰めた。 内奥にたっぷりの唾液が施され、入り口が綻び始めた頃、一度体を離した賢吾がようやく帯を解き、浴衣を脱ぎ捨てる。目の前で露わになった体に、和彦は圧倒される。興奮による猛りが一目でわかる張り詰めた筋肉と、全身から匂い立つ雄の匂い。すでに汗が伝い落ちている肌の艶めかしさと、本当に背に棲みついているかのような生々しい大蛇の姿。 和彦はのろのろと体を起こすと、ほぼまとわりついているだけとなっている自分の浴衣を脱ぎ落す。すかさず賢吾に引き寄せられ、両足の間に手を突っ込まれた。「あぁっ、あっ、んうっ」 手荒く柔らかな膨らみを揉みしだかれて腰が震える。無意識に舌を差し出すと、きつく吸い上げられてから、激しく絡め合う。和彦は夢中で賢吾を味わいながら、両手を背の大蛇に這わせていた。賢吾が身じろぐたびに大蛇が蠢く姿を想像して、胸の奥で妖しい衝動がうねる。「……そんなに〈こいつ〉が可愛いなら、お前も同じものを彫るか? 背中だと見ることも触れることもできないから、この辺りに、同じ図柄で小さなものを――」 内腿を撫でながら、苦笑交じりで賢吾が言う。和彦は、賢吾の大蛇にそっと爪を立てた。「あんたの体にあるから、いいんだ。撫でて、爪を立てて、舐めて、可愛がってやりたくなる」「俺をまだ、骨抜きにしたいのか、お前……」 大蛇が、肉に飢えた獣に変わる。
「お前が傷つけられるような事態になっていたら、俺は伊勢崎龍造を許さなかった。……護衛についてた奴から聞いたが、一人で突っ走ったそうだな。もし相手が待ちかまえていて、拉致されたらどうするつもりだったんだ。肝が冷えたぞ、俺は」「さすがに組員が助けてくれるだろ。それに、少しぐらいならぼくも抵抗して――」 心底呆れたように賢吾がため息をつき、唇に軽く噛みつかれた。「暴力に慣れた奴相手に、自分でなんとかしようとするな。かえって怪我をする」「……何度でも言うが、一応、護身術程度のことは教わったんだが」「〈あいつ〉の名前を今この瞬間に出さなかったのは、賢明だな。今日はもう、伊勢崎父子の名前だけで腹いっぱいだ」 賢吾は鷹津を強く意識していると、次の発言でさらに思い知る。「俺は、お前を大事に大事にしてるんだぜ? サソリの毒が抜けないうちにお前を抱こうとして、拒まれるのを恐れるぐらいには、臆病にもなってる。今日だって、何もするつもりはなかった」 唇を啄みながら賢吾に囁かれ、和彦はただ聞き入る。「だが、あれはいけねーな。あれで、俺は我慢できなくなった」「な、に……? なんのことを、言って……」「伊勢崎の息子の名前を出した途端、お前が艶めいた顔をした。――俺を目の前にして、他の男のことを考えて発情しただろ」「してないっ」「千尋も気づいたぞ。お前に関してはおそろしく鼻が利くからな、あいつも」 ぞっとするほど優しい手つきで賢吾に頬を触れられ、そこから首へとてのひらが移動する。縊り殺されるのではないかと和彦は本能的に怯えたが、同時に、身震いしたくなるような興奮が湧き起こる。「お前は、俺のオンナだ」「……ああ」「去年の末に、総和会本部でお前が俺に言ったことは覚えてるか?」 喉仏に指がかかり、微かに喘いで和彦は頷く。「今も気持ちは変わってないな?」 たった一つの返事しか求めていない問いかけだった。和彦は、賢吾の目を見つめ
** 伊勢崎父子のことを聞かされてからずっと、不自然な鼓動の乱れ治まらなかった。父子、と言いながら、やはり強く思ってしまうのは、玲のことだ。 大学受験が上手くいったのなら、もうとっくに新たな生活の準備は整えているだろう。一緒に行動したのはほんの数日のことだったが、彼はいろいろなことを話してくれた。大学生活を送るにあたり、父親から離れて一人暮らしをしたいのだと語っていたが、果たして希望は叶ったのだろうか。 龍造が、〈こちら〉で商売を始めようとしていることは、御堂や賢吾がちらりと話していたので知っている。龍造本人が出向いてくるなら、玲が安穏とした大学生活を送れる光景は残念ながら思い浮かばないが、他人である和彦が心配するのはおこがましいだろう。 夜も更け、本宅は詰め所を除いてひっそりと静まり返っている。入浴を終えた和彦はいつもなら客間で一人寛いでいる時間だが、今夜はなんとなく落ち着かなくて、こうして中庭に下りていた。 庭園灯のぼんやりとした明かりが、白く小さな花をつけた庭木を照らしている。賢吾も千尋も中庭の植物になど興味がなさそうなのに、気がつけば種類が入れ替わっていたりして、こまめに手入れが行われている。なんの花なのか、組員に聞いてみようかと思っていると、ふいに背後でぞろりと何かが蠢く気配がした。 総毛立ったのは一瞬で、すぐに肩から力を抜く。「――身が燃えるか」 揶揄するように話しかけられ、和彦は短く息を吐き出した。「意地の悪い中年男は嫌われると千尋が言ってたぞ」「どのあたりが意地悪なんだ」「……そういうところ」 隣に賢吾が立ち、和彦の肩に羽織をかけてくる。雨が近いのか、今夜は風が生ぬるくて暖かいぐらいなのだが、厚意はありがたく受け取っておく。「秋慈はまだ何か隠しているぞ。伊勢崎組……というより、伊勢崎龍造に関して」「気づいてて、聞かなかったのか?」「聞いたが、まだ探っている最中だと、すげなくあしらわれた。大事な一人息子を骨抜きにした相手が気になって、とんでもない行動に出るなんて、どこぞの誰かとよく似てるじゃない