LOGIN「ひっ……、あっ、あぁ……」
精のすべてを注ぎ込むように賢吾にゆっくりと突き上げられ、両足を震わせながら和彦はその動きを受け止める。しかし賢吾は、和彦をさらに追い上げてきて、反り返って震えるものを長襦袢の布で包み込み、軽く扱いてくる。滑らかな絹の感触は、鳥肌が立ちそうなほど強烈だった。 気がついたときには和彦も絶頂に達し、長襦袢を精で汚してしまう。和彦は掠れた声で必死に訴えた。「……も、う、立って、られないんだ」「ああ。よくがんばったな、先生」 内奥から賢吾のものが引き抜かれた途端、その場にへたり込む。このときになって和彦は、自分がくしゃくしゃになった着物の上に座っていることに気づいた。とてつもない罪悪感に襲われ、慌てて着物の上から退こうとしたが、すかさず賢吾に抱き締められ、両足の間をまさぐられる。「さあ、先生、〈漏らして〉見せてくれ――」 屈辱と羞恥、否定できない被虐的な悦びを生む一言を耳元に囁かれ、和彦は抗えな『先生は薄情だ。離れてしまうと、もう目の前にいる男以外、どうでもよくなるんだろ』 ドキリとするようなことを言う賢吾だが、口調はあくまで楽しげだ。電話越しの和彦の反応をおもしろがっているのだろう。『四日間、のんびりできたようだな。その辺りは、自然だけはたっぷりあるが、言い換えるなら、それぐらいしかないような場所だ。退屈はしなかったか?』「いや……。三田村や中嶋くんに、ずいぶん気をつかってもらったから、楽しかった。連休中だから、車で少し出かければ、あちこちで何かしらイベントもやっていたし」『なんだったら、連休が終わるギリギリまでそこに滞在してもいいぞ』「その口ぶりだと、もしかして部屋の工事は終わったのか?」『とっくに。千尋だけじゃなく、俺もそろそろ先生の顔が見たくなった』 こういう場合、なんと答えればいいのだろうかと考えている間に、タイミングを失ってしまう。結局黙り込んでしまうと、電話の向こうで賢吾が低く笑い声を洩らした。『先生はそうでもないだろうが、やっぱり、側にいないと落ち着かないもんだ。――明日、戻ってこい』「……ああ」 電話を切った和彦は、いつの間にか自分にとって、長嶺の男の側が〈戻る場所〉になったのだと、唐突に実感していた。 連休が終わるまで別荘に滞在していいと言ったすぐあとに、当然のように、明日戻って来いと命令する賢吾の傲慢さに、ちらりと苦い表情を浮かべる。「ぼくの反応を、試したな……」 ギリギリまで滞在したいと和彦が言ったとしたら、賢吾はどう返事をしたのか、興味がある。もちろん、大蛇の化身のような男の反応を試す度胸は、和彦にはないが。 携帯電話をパンツのポケットに突っ込んだところで、気配を感じる。デッキチェアから身を乗り出して窓のほうを見ると、三田村が立っていた。窓は開けていたため、和彦が電話で話している声は聞こえていただろう。「――明日帰ってこいと言われた」 和彦が話しかけると、三田村もテラスに出て、側にやってくる。「先生のおかげで、のんびりと過ごせた」
連休中はどこかに出かけるのかと尋ねられ、まさか今のような状況になるとは思ってもいなかった和彦は、自宅でのんびりと過ごすと返信したのだ。一方の里見は、仕事が忙しくて休みどころではないらしい。 のんびり過ごすと返信した手前、いつ里見から連絡がきても応対できるようにと、こうして携帯電話を持ってきたのだが、三田村もともに過ごしているこの場所で、果たしてこれは正しい行動だったのだろうかと思わなくもない。「本当にぼくの生き方は、そういうことで成り立っているな。厄介で物騒な男たちの事情に雁字搦めになって、受け入れて、身を委ねて……」「そんなふうに言われると、俺の目の前にいる人は、自分の意思がなくて、弱いのかと思えますが、違いますよね。先生は、したたかでタフだ」「昔から、鍛えられているからな」 自分でもわかるほど素っ気なく応じて、携帯電話をナイトテーブルの上に戻すと、仰向けで再びベッドに横になり、窓の外に目を向ける。「……今は、甘やかされていると思っている。それに、いろいろと不便で窮屈なところもあるが、少なくとも、佐伯和彦という存在は認識されているし、必要ともされている」「その言い方だと、認識すらされていないときがあったみたいだ。――総和会も長嶺組も、徹底して先生のことは調べ上げているはずなのに、先生には秘密があるんじゃないか、なんてことを考えてしまいますよ」「そうだ。ぼくには、大きな秘密がある」 軽い口調で応じた和彦は、ニヤリと中嶋に笑いかける。虚をつかれたように目を丸くした中嶋だが、同じような笑みを返してきた。「聞いたところで、教えてくれないんでしょう。その様子だと」「冗談だ。本気にしないでくれ。ぼくは、長嶺の男に目をつけられるまでは、普通の暮らしをしていた、遊び好きの美容外科医だった。それだけだ……」 ふうん、と意味ありげに声を洩らして、中嶋が和彦の隣に横になる。ごろりと転がってうつ伏せになると、やはり窓のほうを見て目を細めた。「昼寝するには最高の陽気ですね。午前中は体を動かしたし、昼メシも食ったあとだし。俺も、釣ってきた魚の下処理
今回の別荘の滞在で、中嶋は世話係として本当にうってつけの人材だと、改めて感心する。一応、一人暮らし歴は長かったため、料理以外のことはソツなくこなせる和彦だが、三田村も中嶋も、器用さとマメさのレベルが違う。「君と三田村が側にいると、ぼくは一人暮らしでなんの経験を積んできたのか、という気になる……」 和彦の言葉に、中嶋は楽しげに声を上げて笑いながら、針に餌をつける。釣り竿を差し出されたので仕方なく受け取ると、無様な姿勢で湖に向けて仕掛けを投げた。「――先生は、それでいいんですよ。てきぱきと患者を治療して、クリニックの切り盛りまでして、そのうえ家事まで完璧にこなされると、世話を焼く人間がつまらない。少しぐらい隙があるほうが、かえって周囲から愛されるものです」 だったら自分は隙だらけだなと言いかけた和彦だが、それがとんでもなく自惚れた発言になることに気づく。寸前のところで別の言葉に言い換えた。「周囲にいるのがデキる男ばかりで、たっぷり甘やかされてるよ」 和彦の背後で中嶋が、クスッと笑い声を洩らした。もしかすると三田村も、唇を緩めるぐらいはしたかもしれないが、浮きの動きに集中する和彦には、そこまで確かめる余裕はなかった。** 開けた窓から入ってくる風があまりに心地よくて、スリッパを脱いだ和彦はベッドに転がる。そこで視界に飛び込んできたのは、ゆっくりと雲が流れていく青空と、緑豊かな山々だ。 ぼんやりと眺めていると、日ごろの多忙さや、自分の厄介な立場すらも遠いことのように思えてくる。今こうしてのんびりできるのは、その多忙さや、厄介な立場があってこそのものなのだが。 マンションの部屋の工事は進んでいるだろうかと、ふと気になった和彦は、寝返りを打った勢いで起き上がり、ナイトテーブルに置いた携帯電話に手を伸ばそうとする。このとき、部屋の前に立っている中嶋に気づいた。一方の中嶋も、驚いたように目を丸くしている。「……すみません。ドアが開いていたので」「風通しがよくなるから、開けておいたんだ。さすがに知らない人間がウロウロしているなら気をつかうが、そうじゃないし
**** 男三人が、静かな別荘地で何をして過ごすか――。 密かに和彦は、この問題をどうするべきなのかと心配していたのだが、意外なほどあっさりと解決した。主に、中嶋の働きによって。 垂らしていた糸がピンと張り詰め、両手でしっかりと持った釣り竿がしなる。和彦は半ば反射的に、隣で同じく釣り糸を垂らしている中嶋を見る。「先生、魚がかかるたびに、そう動揺しないでください。適当にリールを巻いて、魚の引きが弱ったら、釣り上げるだけです」「適当ってなんだっ……。その適当の加減がわからないんだ」 和彦が反論する間にも、掛かった魚が激しく暴れる。慣れない手つきで慌ててリールを巻き、竿を立てようと奮闘していると、背後で苦しげな息遣いが聞こえてきた。振り返ると、顔を伏せた三田村が肩を震わせている。「三田村、笑っているんなら、交代してくれ」「ダメですよ、先生。掛かった魚は、責任を持って本人が釣り上げないと」 和彦はじろりと、横目で中嶋を見る。言っていることはもっともだが、明らかに中嶋も笑っている。「……ぼくがオロオロしているのを見て、二人とも楽しんでいるだろ」「普段マイペースの先生が、おっかなびっくりで釣りをしている姿が、なんだか可愛くて。つい、からかってしまうんです。三田村さんも同じ気持ちですよね?」 中嶋に問われ、三田村は曖昧な返事をする。さらに言い合うのも大人げないので、まずは掛かった魚を釣り上げることに専念する。初心者ながら、さきほどから意外に釣果は悪くないのだ。 やや物騒な理由から、総和会が所有する別荘で連休を過ごすことになったが、別に和彦個人が狙われているわけではなく、身を隠しておく必要はない。賢吾からも、護衛をつけておく限り、自由にしていいと言われている。 では、自由に何をするか、という話題になったとき、朝食の後片付けを終えた中嶋が、別荘近くの湖で釣りをしないかと提案してきたのだ。道具一式は揃っており、冷蔵庫には餌になりそうなものものが入っていると言われれば、断る理由はなかった。「先生は、
「ぼくのオトコの感触だ……」 意識しないまま和彦が呟くと、三田村は口づけで応えてくれる。緩やかに舌を絡め合い、もっと互いを味わいたいとばかりに唾液を交わし、啜り合う。そんな口づけを交わす間にも、和彦の内奥は猛った欲望の感触に馴染み、強い刺激を欲し始める。 腰をわずかに揺らすと、それだけですべてを察した三田村が律動を刻み始める。内奥の襞と粘膜を擦り上げられ、鳥肌が立つほど和彦は感じてしまう。「うっ、ううっ、うあっ――」「……俺は、こういう先生も見たかった。首筋まで真っ赤に染めて、感じている先生を……」 三田村の唇が首筋に這わされ、ささやかな愛撫の感触にすら狂わされる。三田村に触れられる悦びで、体が蕩けてしまいそうだ。 うわ言のように三田村を呼び続けながら、必死に背にすがりつく。そんな和彦を惜しみなく三田村は愛してくれる。淫らな蠕動を繰り返す内奥の深い場所にまで欲望を突き込まれ、呻き声を洩らして和彦は感じる。「あっ、あっ、三田村っ……。奥、すご、い……」「ああ。よく締まってる。先生が、俺を欲しがっている」 狙い澄ましたように最奥を突き上げられ、そのたびに痺れるような法悦が溢れ出し、全身に行き渡っていく。内奥と欲望を擦りつけ合うだけの行為だというのに、気がつけば和彦は、二度目の絶頂を迎え、今度は自分だけではなく、三田村の下腹部も濡らしていた。 このとき恥知らずな嬌声を上げていたかもしれないが、惑乱した和彦には気にかける余裕もなく、ただすがるように三田村を見つめるのが精一杯だった。誘われたように三田村が目元に唇を押し当て、滲んでいた涙を吸い取ってくれる。 熱い吐息がこめかみに触れ、反射的に和彦は目を閉じる。内奥深くで三田村の欲望が爆ぜ、たっぷりの精を注ぎ込まれる。満たされる悦びに、浸っていた。 三田村の筋肉の強張りが一気に解ける。全身の血がめまぐるしく駆け回っているのか、熱い体から汗が噴き出し、流れ落ちていく。まるで、何かから解放されたようだなと思いながら、和彦は優しく三田村の体を撫でてい
さらに和彦の興奮を煽るように、三田村の指が内奥の入り口を軽く擦り始める。刺激に弱いその部分はすぐに物欲しげにひくつき、押し込まれる指を少しずつ呑み込み始める。和彦自身の汗と、三田村の唾液が垂れて湿っているせいもあり、引き裂かれるような痛みはなかった。何より、三田村が慎重だということもある。 挿入された指が円を描くように内奥で蠢き、自分でもどうしようもない反応として和彦は、引き絞るように内奥を収縮させた。その感触を楽しむように指を出し入れされ、そうしているうちに、三田村を受け入れる態勢ができてくる。 指の数を増やされて、内奥の浅い部分をある意図を持って押さえられる。三田村の口腔で和彦のものが完全に熟し、あとは破裂する瞬間を待つだけとなる。すると三田村が口腔での愛撫をやめて顔を上げ、内奥からは指を引き抜いた。「三田村……?」 声を発した瞬間、和彦は羞恥で燃え上がりそうになる。甘ったるくてすがりつくような自分の声が信じられなかったのだ。三田村も気づいたはずだが、何も言わず、口元に微かに笑みめいたものを浮かべてすぐに、表情を引き締めた。 片足をしっかりと抱え上げられて、綻んだ内奥の入り口に猛った欲望が押し当てられる。指とは比較にならない大きさと熱を持ったものが、内奥を押し広げていく。 息苦しくなるような異物感に、眩暈がするほどの高揚感を覚え、たまらず和彦はきつく目を閉じる。瞼の裏では鮮やかな色彩が点滅し、飛び交っていたが、それもわずかな間だ。一気に真っ赤に染まった。 混乱するほど強烈な感覚――快感が和彦に襲いかかっていた。「んあっ……」 ビクビクと体中を震わせながら目を開けると、三田村は食い入るように和彦の下肢を見つめていた。三田村の欲望を内奥に受け入れながら、和彦は絶頂に達していたのだ。迸らせた精で、下腹部が濡れている。「――〈これ〉を、見たかったのか?」 和彦が抑えた声で問いかけると、ふっと眼差しを和らげて三田村が頷く。「ああ」 三田村が腰を進め、内奥深くまで逞しい欲望を埋め込まれる。息を詰めて重々しい衝撃に耐えていると、三田村が覆い被さってきた。和彦は
****「――俺との約束を忘れたのかと思ったぞ」 春巻を一口食べて、味に納得したように頷いてから、唐突に澤村が切り出す。和彦は苦笑を洩らしながら、酢豚を堪能する。値段が手頃なランチメニューなのだが、値段以上の価値がある味だ。 先日、中嶋に連れてきてもらってディナーを食べた中華料理店に、ぜひもう一度訪れたいと思っていたところだったので、澤村とランチを一緒に、という約束を果たすには、うってつけの店だろう。 店はホテル内にあるため、常にさまざまな人が行き交っている。そのため、護衛をホテルの駐車場
「俺が興味あるのは、佐伯だ。とりあえずこいつと繋がっていれば、長嶺や、お前みたいな連中の動向が掴めるからな。……何より、こいつの存在自体が、楽しめる。長嶺どころか、その息子や子分まで垂らし込むぐらいだ。男とはいっても、最高に具合がいい。何より、こんな色男のくせして、女より淫乱だ」 屈辱と羞恥で、めまいがしてくる。そこに怒りも加わり、本気で鷹津を殴りたくなる。一方、鷹津の生々しい発言を受けても、秦は柔らかな表情を変えなかった。そのくせ唇から出た言葉は、鷹津に負けず劣らず生々しい。「先生の感じやすさといやらしさを知っているのは、ご自分だけだ
鷹津はそう言って、不躾に和彦を指さしてくる。和彦は眉間のシワを深くして、身を投げ出すようにしてソファに体を預ける。 ようやく状況が呑み込めてきたが、非常におもしろくなかった。 賢吾と鷹津と秦は、ある情報を共有したうえで、連携しようとしている。その連携には、形だけとはいえ和彦という仲介者が必要で、だから、ここにいる。なのに和彦だけが、三人が知っているはずの情報を知らされていない。 和彦を除け者にしているというより、安全のために、あえて和彦に知らせないようにしているのだろう。それぐらいは理解している。知ったところで、和彦が何かできるわけでもないのだ。
あっという間に鷹津もバスタブに入ってきて、和彦は腕を掴まれ引き寄せられる。鷹津も頭から湯を被り、オールバックの髪型は見る間に崩れた。 思わず手を伸ばした和彦は、鷹津の濡れた髪を掻き上げてやる。次の瞬間、鷹津の両腕が体に巻き付いてきて、顔が間近に寄せられた。鷹津の目は、相変わらずドロドロとした感情で澱んでいる。そこに狂おしい欲情が加わり、この嫌な男をひどく人間らしく見せていた。 つい鷹津の目に見入っていると、唇が重なってきた。「あっ……」 唇が擦れ合った瞬間、和彦の背筋にゾクゾクと強烈な疼きが駆け抜ける。体は、こ