Beranda / BL / 血と束縛と / 第18話(17)

Share

第18話(17)

Penulis: 北川とも
last update Terakhir Diperbarui: 2026-03-06 11:00:40

 千尋の言葉に、和彦は軽く目を見開く。ちょうどエレベーターの前で立ち止まったところで、やっと疑問をぶつけることができた。

「……つまりこのマンション全部が、会長の家、なのか……?」

「ここ、実はマンションじゃないんだよね」

 千尋に恭しく手で示され、エレベーターに乗り込む。

「元は、ある企業が税金対策で造った社員の研修施設。景気がいいときに造ったらしいんだけど、そのあとは業績悪化というやつで、ここを手放すことになったんだ。で、売却の話を持ち込まれたのが、じいちゃんってわけ」

「それで、買ったのか?」

「じいちゃんの家だと思うと立派すぎるけど、総和会本部だと考えるとぴったりだろ。実際、じいちゃんが住んでるのは四階で、それ以外の階は、総和会の人間が常に行き来している。――総和会のオフィスは別にあるけど、ここは長嶺守光の息がかかった人間だけが、出入りを許される」

 ちらりとこちらを見た千尋の目は、強い光を放っている。したたかで好戦的な眼差しは、まるで獣のようだ。
Lanjutkan membaca buku ini secara gratis
Pindai kode untuk mengunduh Aplikasi
Bab Terkunci

Bab terbaru

  • 血と束縛と   第18話(17)

     千尋の言葉に、和彦は軽く目を見開く。ちょうどエレベーターの前で立ち止まったところで、やっと疑問をぶつけることができた。「……つまりこのマンション全部が、会長の家、なのか……?」「ここ、実はマンションじゃないんだよね」 千尋に恭しく手で示され、エレベーターに乗り込む。「元は、ある企業が税金対策で造った社員の研修施設。景気がいいときに造ったらしいんだけど、そのあとは業績悪化というやつで、ここを手放すことになったんだ。で、売却の話を持ち込まれたのが、じいちゃんってわけ」「それで、買ったのか?」「じいちゃんの家だと思うと立派すぎるけど、総和会本部だと考えるとぴったりだろ。実際、じいちゃんが住んでるのは四階で、それ以外の階は、総和会の人間が常に行き来している。――総和会のオフィスは別にあるけど、ここは長嶺守光の息がかかった人間だけが、出入りを許される」 ちらりとこちらを見た千尋の目は、強い光を放っている。したたかで好戦的な眼差しは、まるで獣のようだ。ただし、恐ろしく血統がいい、という前置きがつく。 総和会会長の権力を具現化したようなこの場所で、千尋は普段とは違う面を見せているようだ。地べたを這いずり回ったり、修羅場をくぐったという血生臭さがないせいか、無邪気なほど傲慢な存在感を放っている。それが魅力になりうるのは、やはり長嶺の血のせいかもしれない。「――先生」 いつの間にかエレベーターは四階に到着し、千尋が開いた扉を押さえている。我に返った和彦は慌ててエレベーターを降りた。 正面は、ソファやテーブルが置かれたラウンジとなっており、左右に廊下が伸びている。千尋を見ると、左側を指さした。「こっちがじいちゃんの住居。ちなみに右は、来客用の宿泊室が並んでる。元は研修施設だけあって、ホテルみたいな部屋が他の階にもあるんだ。あまり大規模な改装工事はしなかったから、大浴場も食堂もそのまま残ってる。あと、地下にはジムもプールもあるよ。裏には、テニスコートもあるし」「……基地みたいだ」 和彦が率直な感想を洩らすと、千尋はニヤリと笑った。

  • 血と束縛と   第18話(16)

    『本当ならもっと早くに、わしらにとって大事な先生を招待したかったんだが、賢吾のほうが慎重でな。その点では、千尋は単純だ。大事な先生を一刻も早くわしに紹介して、一層囲い込みたいと思っていたようだ。……子供の執着心というのは、分別のつく大人より性質が悪くて頑迷だと、あれを見ているとよく思う。ただ、それがあったからこそ、長嶺の男たちは、先生と知り合えたとも言えるんだが』 守光の言葉に下手な相槌は打てないが、千尋と知り合ったことですべてが始まったのは事実だ。和彦はつい苦い笑みを洩らす。『時間は要したが、年が明けてから状況が変わった。すでにもう二回、わしとあんたは顔を合わせて、会話も交わしている。わしとしては、息子と孫の大事な人に対して、十分敬意は払ったつもりだ』「それは、ええ……。過分なほど気をつかっていただいたと思っています」『そう、畏まらなくていい。――あんたは、何もかもが、千尋の母親とは対照的だな。一番の違いが性別というのは、皮肉な話だが……』 守光は、和彦の気持ちを巧みに刺激する。聞き流せない話題を、さりげなく耳元に吹き込んできたのだ。『先生一人を野獣の檻に放り込むのは可哀想だと言って、千尋も今晩、うちに来ることになっている。にぎやかな坊主がいれば、あんたもさほど緊張しなくて済むんじゃないかね』 ここまで言われて断れるはずもない。守光の言うとおり、千尋も同席するということで、いくらか気持ちも楽になっていた。 あまり言い訳めいたことを口にして、守光の機嫌を損ねたくないという思いもあり、和彦はこう答える。「クリニックを閉めたあと、うかがいます」『それはよかった。手土産なんてことは考えず、身一つで来てくれたらいい』 電話を切ったあと、自分の肩がひどく強張っていることに和彦は気づく。肩をゆっくりと揉みながら無意識に口を突いて出たのは、困惑による唸り声だった。 年が明けてから、総和会――というより守光からの急接近ぶりは、さすがに何かの前触れを感じさせる。 例えば、波乱のようなものを。**

  • 血と束縛と   第18話(15)

    ****〈あの男〉の人脈はバカにできないと、来週のクリニックの予約リストを眺めながら和彦は感心する。しばらくは閑古鳥が鳴くことを覚悟していたのだが、なかなかどうして、予約は順調に入っていた。 開業したばかりの、広告も出していない池田クリニックをどこで知ったのか、予約を入れる患者に尋ねると、大半は口を揃えてこう言う。知人の紹介で、と。 問題は、その『知人』が誰かということだ。 知人繋がりなら、クリニックの世話になりたいとまず和彦本人に連絡が入るのだが、それは組関係者の妻や娘であったり、さらに彼女たちからの紹介だったりするし、意外なところで、由香に勧められたというものもある。 だが、誰よりも池田クリニックの売上に貢献しているのは、間違いなく秦だ。 ホストクラブ経営という強みを活かし、美容相談を受けてみたらと女性客を唆しているらしく、何件もカウンセリング予約が入っている。カウンセリングといってもバカにはできず、池田クリニックは初回からしっかりと、カウンセリング名目でも料金を受け取っていた。 ちなみにさきほど、秦からの紹介で訪れた患者に対して、豊胸に関するカウンセリングを行ったばかりだ。 美容外科医が和彦一人しかいないため、大掛かりな手術ができない分、経営戦略は限られる。経営者としては、リスクを最小に抑えて利益を出さなくてはならない。 このクリニックを和彦に持たせてくれた男は、クリニック経営にあまり夢中になるなよと、笑いながら言っていたが――。 和彦は前髪に指を差し込みながら、天井を見上げる。すでにこのクリニックに愛着を持っているが、ときおりふと、ヤクザに望まれるままのママゴトをしているような、妙に空しい気持ちにもなるのだ。その空しさは、目を背けたい現実を和彦に突きつけてくる。 一方で、地味で手堅い利益を追い求めるクリニック経営者なりに、ささやかな喜びも味わえるのだ。 短く息を吐き出した和彦は、姿勢を戻す。労働に対するささやかな慰労として、コーヒーを飲みたくなった。実はさきほどから、スタッフの誰かが淹れたらしいコーヒーのいい香りが漂っている。 次の予約の時間までま

  • 血と束縛と   第18話(14)

     絡め合っていた舌をようやく解いてから、中嶋に抱き締められる。和彦も、中嶋の背に両腕を回し、しなやかで強靭な熱い体の感触を確かめる。ヤクザの男たちと体を重ねてはいるが、同じヤクザでありながら、中嶋の体はまったく違う存在感を持っており、それがとても不思議に感じられる。 ふいに身じろいだ中嶋が、耳に唇を押し当て囁いてきた。「――先生、いいことを教えてあげましょうか?」 和彦は、中嶋の髪を撫でて応じる。「ヤクザがそんな猫撫で声を出すときは、絶対ロクなことを言わないんだ」「いいことですよ。……自分の身を守るという意味で」 意味ありげな物言いに、嫌でも興味をそそられる。和彦は、間近にある中嶋の顔を見つめた。「なんだ」「南郷さん、女を抱き殺しかけたことがあるそうですよ」 さすがに和彦が絶句すると、その反応に満足したのか、中嶋の唇に微かな笑みが刻まれる。会話の内容の物騒さと表情が、見事に一致していない。「第二遊撃隊には、南郷さんがいた組から連れてきたという組員が何人もいるんです。そういう人たちは、まあ、南郷さんの強烈なシンパみたいなものです。だからこそ、南郷さんのことをよく知っていて、ウソは言わない。……昔、堅気の女に惚れたそうです。でも、迫力のあるあの外見に、仕事もヤクザ。普通の女なら、泣いて逃げ出す。当然、南郷さんが惚れた女も拒絶しましたが、追い掛け回して、半ば恫喝してモノにした」 和彦は、女に迫る南郷の姿が容易に想像できた。なんといっても先日、和彦は南郷に首を絞められかけたのだ。情景としては大差ないだろう。「そこまでして手に入れた女を、片時も離さず、抱き殺しかけた……。よっぽど欲しかったんでしょうね。力加減もできないほど」「……確かに、いいことを聞いた。ただし、ぼくにどう関係あるんだという気もするが……」「南郷さんが先生に興味を持った時点で、無関係じゃないでしょう」「ぼくに興味を持ったというより、あれは――」〈長嶺賢吾のオンナ〉に興味があるよ

  • 血と束縛と   第18話(13)

    「先生と二人きりだから、ついうっかりしてました」「それをつけたのは――」「秦さんです」 和彦は大きく息を吐き出すと、中嶋の隣に再び腰掛ける。「……上手くいっているみたいだな」「慣らされている最中です。今のところ秦さんは、紳士ですよ」 臆面もなく言い切られ、和彦は返事に詰まる。中嶋は、酔いのせいだけとも思えない、妖しい流し目を寄越してきた。「先日は、いいものを見せてもらいました。長嶺組長と先生の絡み合う姿に、すごく興奮したんです。……俺は、あんなふうに秦さんに抱かれたい。でも同じぐらい、先生をあんなふうに抱いてみたいとも思いました。もちろん、先生に抱かれることにも興味がある」 話しながら、中嶋がペットボトルを差し出してくる。受け取った和彦も水を飲み、喉を通る冷たい感触を堪能する。あまり意識していなかったが、アルコールのせいか、暑いぐらいの暖房のせいか、顔が火照っていた。 ペットボトルをテーブルに置いて、頬に手の甲を押し当てていると、ふいに中嶋が身を乗り出してくる。あくまで自然に、唇を塞がれた。 軽く目を見開いた和彦だが、瞬間的に胸の奥で湧き起こった衝動のまま、中嶋との口づけを受け入れ、応える。最初はぎこちなく互いの唇を吸い合っていたが、欲望の急速な高まりに背を押されるように、積極的になる。 舌先を触れ合わせたかと思うと、すぐに余裕なく絡ませ、唾液を交わす。舌を吸い合いながら、中嶋の手が和彦が着ているセーターを捲り上げてきたので、和彦も中嶋のワイシャツを引き出してボタンを外していた。 引っ張られるままソファに倒れ込み、和彦は中嶋を真上から見下ろす格好となる。「――……長嶺組長が、先生と仲良くしてやってくれと言ったのは、こういう意味も含めてですよね?」 そんなことを言いながら、中嶋のてのひらが脇腹から背へと這わされる。くすぐったいような、焦れったいような刺激に、和彦は軽く体を震わせていた。「さあ……」「俺は、そういう意図だと理解して、楽しみにしているんですよ。秦さんだ

  • 血と束縛と   第18話(12)

    「見たまま、怖いですよ。生粋のヤクザというやつです。冷たく歪に固まった鉄のよう――という表現がしっくりくるんです。遊撃隊なんてものを指揮しているぐらいですから、当然、頭は切れる。だからといって慎重というわけでもなく、必要とあれば、ブルドーザーみたいに強引に物事を進める。……不気味で、怖い人です」「そして、総和会会長のお気に入り」「会長の手足となって動く人間は、もちろんいます。ただ、第二遊撃隊の一部の人間しか関わらせないようにして、南郷さんは会長から秘密の仕事を請け負っているようです。そういう意味で、本当にお気に入り――信頼されているんでしょうね」 料亭での、守光と南郷の姿を思い返す。守光が普段、組員たちにどんな態度で接しているのかは知らないが、少なくとも、南郷に寄せる信頼を感じることはできた。南郷にしても、守光には長年世話になっているという口ぶりから、畏怖と尊敬以外に、親愛の情めいたものが滲み出ているようだった。 一方で、その守光の息子である賢吾を語るとき、南郷の口調は変化した。 あれは一体――。和彦は無意識に眉をひそめていたが、突然、眼前にグラスが突きつけられた。驚く和彦に、中嶋が首を傾げながら言う。「これ、飲みませんか?」「えっ、ああ、でも君の――」「飲みすぎました。俺には半分残してくれればいいですよ」 いつの間にか、中嶋との距離が近くなっている。和彦が気づかないうちに、間を詰めてきたらしい。 部屋で二人きりになるとわかったときから、意識しないわけにはいかなかったが、こうも間近に中嶋の存在を感じると、もう、強く意識するしかない。 和彦が水割りを一口、二口と飲んだところで、さりげなく、しかし待ちかねていたようなタイミングで中嶋が問いかけてきた。「で、南郷さんをたぶらかしたんですか?」 和彦は唇をへの字に曲げて、グラスを突き返す。そんな和彦の反応に、中嶋はニヤリと笑う。「読めないなー。先生のその反応だと、何があったのか」「……ぼくはどれだけ、誤解されてるんだ」「周囲にいる人間のほうが、物事を正しく認識しているなんてこ

Bab Lainnya
Jelajahi dan baca novel bagus secara gratis
Akses gratis ke berbagai novel bagus di aplikasi GoodNovel. Unduh buku yang kamu suka dan baca di mana saja & kapan saja.
Baca buku gratis di Aplikasi
Pindai kode untuk membaca di Aplikasi
DMCA.com Protection Status