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第19話(11)

Auteur: 北川とも
last update Date de publication: 2026-03-11 08:00:04

「お前も、そうしてくれるからだ。無防備な体を、互いに預け合っている感じだ」

 だからこうして目を閉じていても、安心していられる。こう思った瞬間、和彦の中をある感覚が駆け抜けた。反射的に目を開くと、千尋に顔を覗き込まれていた。

「先生?」

「……なんでもない」

 千尋の頭を抱き寄せて、和彦はもう一度目を閉じる。それが合図のように、千尋がゆっくりと律動を始める。

「あっ、あっ、あぁっ――」

 千尋にきつくしがみつき、しなやかな体の感触だけでなく、内奥を行き来する熱い欲望の感触も堪能する。これ以上なくしっかりと繋がっているのだという感覚が、たまらなく気持ちいい。

 そう実感すればするほど、さきほどの感覚が無視できないほど存在感を増していく。

 身震いしたくなるような強い疼きが、背筋を這い上がっていた。内奥に押し入る欲望を強く締め付け、千尋を呻かせる。

 耳元で繰り返される激しい息遣いを聞きながら、和彦はあの夜のことを――守光の自宅に泊まったときに起こった出来事を思い返す
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  • 血と束縛と   第43話(19)

     一方の南郷は、生まれは本人が語っている通りだとして、居場所を求めて這い上がり、今は総和会内で守光の隠し子ではないかと噂されるほどの側近となった。そして和彦は、英俊とは違う道を歩むよう言われ、医者としての人生を送ると同時に、佐伯家の異物として在り続けるはずだった。それがなぜか長嶺の男たちのオンナとなり、佐伯家の脅威となった。 南郷にどんな思惑があって、こんな話をしたのかは不明だが、和彦は警戒を強くする。 もし自分と南郷に重ねる部分があったとしても、親しみは感じない。そう心の中で誓って、椀を手に和彦は席を立った。南郷は、さすがにあとを追いかけてはこなかった。** 別荘に戻った和彦を出迎えた吾川が、おやっ、という顔する。「どうかされましたか、佐伯先生。顔が赤いですが」 長靴を脱いだ和彦は、反射的に自分の顔に触れる。実は車中でずっと、顔どころか体も熱くなって気になっていたのだ。暖房が効きすぎていたのだろうかとも思ったが、そうではない。和彦のあとから玄関に入ってきた南郷が、答えを口にした。「イノシシの肉を食ったせいだろうな。滋養が高いから、身が燃えてるんだろ」「……体が温まるって、そういう意味ですか」「たっぷり分けてもらってきたから、晩メシは肉パーティーだな。シカの肉もあるぞ、先生」 ちらりと笑みを浮かべた吾川がすぐに表情を隠し、こう切り出してきた。「少し早いですが、昼食を召し上がりませんか? そのあと、会長がお話があるそうですから」 いよいよかと、反射的に和彦は背筋を伸ばす。「いえ……、お腹は空いていないので。今からでも、会長のお部屋にうかがっても大丈夫ですか?」「では、少々お待ちください。お茶を淹れてきますから、一緒に参りましょう」 吾川がキッチンに向かい、和彦はその後ろ姿を見送ったあと、急に手持ち無沙汰となる。ダウンジャケットを部屋に持って行こうかと逡巡していると、南郷が片手を突き出してきた。「ジャケットを部屋に持って上がっておく」 ここは素直にお願いし、茶器とおしぼりの載った盆を手

  • 血と束縛と   第43話(18)

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  • 血と束縛と   第43話(16)

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  • 血と束縛と   第43話(15)

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     しっかりダウンジャケットを着込んだ和彦は、静かに部屋のドアを開け、廊下の様子をうかがう。もともと騒々しさとは無縁の場所ではあるのだが、深夜ともなり、二階に人の気配は感じられなかった。足音を殺して廊下に出てしまうと、あとは開き直るだけだ。 素早く一階に下りると、非常灯だけが点るエントランスホールを駆け抜けて、玄関から自分の靴を取ってくる。この別荘の造りはほぼ頭に入っており、最短距離で庭に出るためダイニングへと移動した。誰かが使っていた形跡がテーブルの上などに残っているが、人はいない。和彦はこの隙にと、キッチン脇にある裏口から庭へと出ていた。 慎重な足取りで歩きながら、ダウンジャケットの前を掻き合わせる。雪を踏みしめるサクッ、サクッという微かな音すら聞こえるほど、静かだった。まだ起きている者もいるだろうが、別荘から聞こえてくる物音はなく、皆が息を潜めているようだ。 この瞬間、強烈な孤独感に襲われた和彦は、臆病な小動物のような動きで庭を見回していた。ここから表の通りに出られないかと考えたのだ。 いや、出ること自体は不可能ではない。ただし、何重もの鉄条網を潜り抜け、明かりもない暗く細い道を通っていかなければならない。しかも今は雪が積もっており、足を取られるのは必至だ。深夜にやるべき冒険ではないだろう。 頭では理解しているが、未練がましく広い庭に足跡を残していく。そうしているうちに、また雪が落ち始める。立ち止まると、感覚を奪う寒さが爪先から這い上がってきた。かまわず和彦は空を仰ぎ、落ちてくる雪を顔で受ける。「――こんな時間に雪遊びか、先生」 前触れもなく揶揄するような声をかけられ、一瞬呼吸を止める。次の瞬間、弾かれたように声がしたほうを見ると、いつからそこにいたのか、マウンテンパーカーを着込んだ南郷が立っていた。 なぜ、という言葉がまっさきに頭に浮かぶ。別荘に到着したとき、南郷の姿はなかった。移動の車列にも加わっていなかったため、少なくとも今夜は、南郷はここにはいないと思ったのだ。しかし現実は――。 いつだって南郷は、いてほしくない場面で登場する。まるで、和彦の驚きを楽しむかのように。 声もなく警戒する和彦に、南郷は大仰に肩を竦めて見せる。

  • 血と束縛と   第4話(27)

    「――先生」  呼ばれて、おずおずと振り返ると、そこに真剣な賢吾の顔がある。何か言われたわけでもないのに、和彦は小さく喘いでから賢吾の唇にそっと自分の唇を重ねた。すると、賢吾のもう片方の手に、和彦の柔らかな膨らみは包み込まれる。 「ひっ、あぁっ」  泡で滑る手に柔らかく揉みしだかれ、たまらず和彦は、ビクッ、ビクッと腰を震わせ、背をしならせる。下肢が、甘く溶けてしまいそうだった。 「あとでたっぷり、ここを揉んで悦ばせてやる。最近、弄られるのがよくなってきたみたいだからな。今は、洗うだけだ」  賢吾の的確に動く指は貪欲に、和彦の官能を刺激する

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  • 血と束縛と   第20話(13)

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  • 血と束縛と   第19話(21)

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    last updateDernière mise à jour : 2026-04-05
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