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第2話(27)

Author: 北川とも
last update publish date: 2025-10-25 15:00:20

「……つい最近、ぼくは別の人間に、同じ目に遭わされたぞ。しかも、職も、普通の生活も奪われた。ああ、住んでいたマンションも、強引に移らされることになったな。他にいろいろと迷惑を被っているが、謝ってもらってない」

「だが、刺激的な生活を手に入れたろ。ヤクザの組長のオンナっていう立場も」

 ヌケヌケと賢吾に言われ、思わずカッとした和彦はベッドから腰を浮かせかけたが、イジメられた子供のような顔をしてこちらを見る千尋に免じて我慢してやる。

 そうだ。和彦は確かに千尋に甘い。

 自覚があるからこそ決まり悪くなり、和彦はベッドに腰掛け直すと、腕組みして尊大に言い放った。

「二度としないというなら、許してやる」

 現金なもので、この瞬間にはもう、千尋は目を輝かせる。息子の態度とは対照的に、父親のほうはニヤニヤしながら物言いたげな様子で和彦を見ていた。一瞬臆しそうになった和彦だが、ささやかな強気を貫く。

「……あんたは他人事みたいな顔をしているが、父親なら、しっかり息子を躾けろ」

「躾けているだろ。厳しく」

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  • 血と束縛と   第25話(15)

     秦だけでなく、その秦の後ろ盾となった長嶺組――賢吾からも。「組長には報告しておきましたから、当分先生には、窮屈な思いをさせるかもしれません」「……基本的に、どこに行くにも護衛をつけてもらっているから、ぼくの場合、さほど生活に影響があるとも思えないが……。あっ、護衛が面倒だから、夜は出歩くなと言うことか?」 和彦としては真剣に問いかけたのだが、怪我をしている組員までもが、苦笑に近い表情を浮かべて首を横に振る。「先生に、そんな野暮は言いませんよ。ただ、俺たちみたいな連中の面倒を見てくれる大事な人なんですから、気をつけてほしいだけです」「それを言うなら、君らもだ。日ごろ振り回して、世話になっているからな」 短く息を吐き出して和彦は、今度こそ切り傷の縫合に取り掛かった。**** 午後の診察時間の終了まで一時間近く残して、クリニックにはすでに緩やかな空気が漂っていた。最後の患者を見送ってしまうと、完全予約制のこのクリニックでは、あとは仕事が限られるのだ。 週明けに入っている予約について打ち合わせを済ませてから、あるスタッフは医療用品や薬剤の在庫を確認し、手が空いているスタッフは掃除を始める。和彦も、診察室を――というより、自分が使っているデスクの上を片付ける。 それが終わると今度は、コピー用紙を一枚取ってきて、卓上カレンダーを眺める。「――……ついこの間、花見でバタバタしていたのにな……」 ぽつりと洩らした和彦は、簡単な文面を考えてコピー用紙に書いていく。すると、診察室の掃除のため入ってきた女性スタッフが、ススッと近づいてきた。「何を書いているんですか、佐伯先生」「ゴールデンウィークの休業日のお知らせ。患者さんにはもう電話で伝えてあるけど、配達業者が困るかもしれないから、そろそろ玄関のドアに貼っておこうと思って」「はあ、この間開業したと思ったら、もうゴールデンウィークなんですねー。バタバタしていたから、なんだかあっという間です

  • 血と束縛と   第25話(14)

    **** 突然、電話が鳴り、ビクリと体を震わせた和彦は考えるより先に起き上がると、サイドテーブルの子機を取り上げた。『――お休み中、申し訳ありません』「いや……」 寝起きで掠れた声を発した和彦は、反射的に時間を確認する。室内の暗さから見当はついたが、深夜だった。 こんな時間、長嶺組の組員からかかってくる電話の内容は、ほぼ決まっている。『うちの組の者がトラブルに巻き込まれて、怪我をして戻ってきたんです。ひどく痛がっていて、どうやら骨折をしているようで……。それで、クリニックのほうで診てもらいたいのですが』「そうだな。レントゲンを撮る必要があるから、クリニックのほうが都合がいい。麻酔もすぐに準備できる」 話しながらベッドを下りた和彦は、イスの上に置いた着替えを取り上げる。『すでに車は待たせてあります。準備ができたら降りてください』 五分で降りると返事をして、電話を切る。 ジーンズに穿き替えながら和彦は、最近急に物騒になってきたように感じていた。先日は、総和会の第二遊撃隊が面倒を見ることになったという男を手術したが、やはり、外を出歩いているときに襲われて大怪我を負ったと教えられた。 普段は無用な揉め事を避けたがる世界だが、些細なことで様相は一変する。血生臭い空気に当てられて小さないざこざが起こり、それが大きな闘争へと繋がる危うさと緊迫感をいつでも孕んでいるからだ。もっとも、こんな世界に身を置き、医者をしている和彦だけがいつ血の匂いがするかと身構えており、男たちにとってはこれが当たり前なのかもしれない。 和彦はTシャツを着込み、その上からパーカーを羽織って、慌ただしく玄関に向かおうとしたが、すぐに引き返して洗面所に飛び込む。眠気はとっくに消えてしまったが、顔を洗って気持ちを切り替える。 一階に降りると、すでに待機している長嶺組の車に乗り込み、まっすぐクリニックへと向かった。 患者を含めた数人の組員たちはすでに到着しており、待合室にいた。和彦の姿を見るなり素早く立ち上がり、一斉に頭を下げ

  • 血と束縛と   第5話(19)

     頷いて一階に降りると、案内されてリビングに向かう。賢吾はすでに寛いだ服へと着替え、ソファに腰掛けていた。  和彦の姿を見るなり、なぜかニヤリと笑いかけられる。 「ずいぶん、派手なTシャツを着てるな」 「……千尋のを借りたんだ。ここに寄ったのが予定外だったから……」 「ああ、騒動があったらしいな。その話は後回しだ。先に、先生に話しておくことがある」  手で示され、和彦はやや緊張しながら賢吾の隣に腰掛ける。すでにリビングは二人きりとなり、息が詰まりそうな沈黙が流れる。だからこそ別の部屋の、組員たちの声や、気配がよく伝わってきた。

    last updateLast Updated : 2026-03-20
  • 血と束縛と   第5話(5)

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    last updateLast Updated : 2026-03-20
  • 血と束縛と   第5話(9)

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    last updateLast Updated : 2026-03-20
  • 血と束縛と   第5話(23)

    ** 三田村がいたなら、こんな場所に和彦が一人で出向くことを、絶対阻止していただろう。だが、その三田村は側にいない。  あんたが悪いのだと、和彦はグラスに口をつけながら、ひっそりと心の中で呟く。同時に、大きな窓の向こうで花火が打ち上がり、店内で歓声が上がる。男らしい歓声が。 「――先生、楽しんでますか?」  和彦が腰掛けているソファの背もたれに腕をかけ、中嶋がひょいっと背後から身を乗り出してくる。和彦は、手にしたグラスを軽く掲げて見せた。  当然のように中嶋が隣に座ったので、ここぞとばかりに疑問をぶつける。

    last updateLast Updated : 2026-03-20
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