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第21話(9)

Author: 北川とも
last update publish date: 2026-03-21 14:00:00

「連れてきてから聞くのもなんですが、先生、香辛料が効いた料理は大丈夫ですか? ビルの中にいくらでもレストランはあるので、遠慮なく言ってください」

「匂いを嗅いだだけでお腹が空いた」

 和彦の言葉に、中嶋はちらりと笑みを見せる。

「よかった。秦さんに教えてもらって、最近通うようになった店なんです」

 テーブルにつくと、さっそく中嶋はカレーのディナーコースを頼む。その間和彦は、コートを脱いで隣のイスに置き、混雑する店内を見回す。複合ビルだけあって、商業施設だけでなく企業のオフィスもたくさん入っているためか、いかにも会社帰りといった様子の人も多い。

 表向きは健全なクリニック勤めの和彦はともかく、きちんとスーツを着て、見た目はごく普通のハンサムな青年である中嶋は、こういう場ではよく馴染む。

 頬杖をついた和彦がじっと見つめていると、視線に気づいたのか、中嶋が首を傾げた。

「どうかしましたか、先生。そういう悩ましい目で見られると、ドキドキするんですが」

「言うことが、本当に秦に似てきたな――」

 こ
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