Beranda / BL / 血と束縛と / 第34話(18)

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第34話(18)

Penulis: 北川とも
last update Tanggal publikasi: 2026-06-10 08:00:48

 八月最後の日だった。

 和彦はウィンドーを覗き込むようにして、外の様子をうかがう。クリニックからの帰宅途中なのだが、日が暮れてから急に天候が崩れ、とうとうどしゃ降りの雨となっている。

『――雨すごいね』

 電話の相手である千尋の言葉に、見えるはずもないのに和彦は頷く。

「ああ。クリニックを閉める頃に降り出したから、よかったといえばよかったが……。お前は、本宅にいるのか?」

『珍しく、午後からずっとね。先生が仕事休みだったら、どこかに一緒に出かけたかったのにさ』

「この暑い中、どこに出かけるつもりだったんだ」

『いろいろあるよ。まずは、映画なんてどう? あと、秋物も並んでるから、服を買いに行くとかさ』

 ここのところ、千尋と気楽な気分で出かける機会もなかったので、素直にいいなと思ってしまう。

「お前の予定が合うなら、クリニックが休みの日に出かけるか。ぼくも、買いたいものがあるし」

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  • 血と束縛と   第34話(19)

     尋常でない出来事があったにも関わらず、総和会の男たちの動きは迅速だった。速やかに代わりの車が呼ばれ、和彦だけがその車に乗って現場を立ち去ったのだが、そのあと、警察を呼んで処理したとは到底思えなかった。 どしゃ降りの雨の中、車の外にいた男たちは、ずぶ濡れになりながら明らかに殺気立っており、あんなぎらついた目をして警官と相対すれば、さらに面倒な事態になるのは目に見えている。 先生は何も心配しなくていいと言われたが、自分が乗っている車があんな目に遭い、安穏とした気持ちでいられるはずがない。頭の中は疑問符が飛び交っていた。 車をぶつけてきたのはどこの誰なのかということはもちろん、今夜はこのホテルで休むよう言われた理由も、時間の経過とともに気になってくる。 本部までは、もう少しだったのだ。歩いてさえ行けた距離だ。なのに、わざわざ離れたホテルへと連れて来られた。おそらく隣か前の客室も、総和会によって押さえられているはずだ。護衛の手間を考えても、ホテルの部屋を取った利点が見えてこない。 もう一度ため息をつこうとしたとき、部屋の外で慌しい気配がする。また何か起こったのかと、反射的に飛び起きたと同時に、ドアがノックされた。和彦はベッドの上で動けず、じっと息を潜める。すると、ナイトテーブルの上に置いた携帯電話が鳴った。相手は千尋だ。『――先生、ドア開けて』 電話に出ると、開口一番にそう言われて面食らう。再びドアがノックされ、ようやく和彦はベッドから下りた。 念のためドアスコープを覗いて、ドアの前に千尋が立っているのを確認する。ドアを開けると同時に千尋が押し入り、和彦をきつく抱き締めてきた。「よかったっ……。本当に無事だった」 呻くように千尋が洩らした言葉に、和彦は目を丸くしたあと、小さく笑みをこぼす。千尋の背後に目を向けると、護衛としてついてきたのだろう。廊下に長嶺組の組員たちが立っている。和彦が頷くと、ドアが閉められた。「……大丈夫だと言っただろ。どうして来たんだ」 茶色の髪をくしゃくしゃと撫で回しながら和彦が言うと、不安そうに千尋が見つめてくる。「迷惑だった?」

  • 血と束縛と   第34話(18)

    **** 八月最後の日だった。 和彦はウィンドーを覗き込むようにして、外の様子をうかがう。クリニックからの帰宅途中なのだが、日が暮れてから急に天候が崩れ、とうとうどしゃ降りの雨となっている。『――雨すごいね』 電話の相手である千尋の言葉に、見えるはずもないのに和彦は頷く。「ああ。クリニックを閉める頃に降り出したから、よかったといえばよかったが……。お前は、本宅にいるのか?」『珍しく、午後からずっとね。先生が仕事休みだったら、どこかに一緒に出かけたかったのにさ』「この暑い中、どこに出かけるつもりだったんだ」『いろいろあるよ。まずは、映画なんてどう? あと、秋物も並んでるから、服を買いに行くとかさ』 ここのところ、千尋と気楽な気分で出かける機会もなかったので、素直にいいなと思ってしまう。「お前の予定が合うなら、クリニックが休みの日に出かけるか。ぼくも、買いたいものがあるし」『予定なんて、合わせるよっ。じゃあ、来週の日曜は?』「ぼくのほうは、今は予定が入ってないから大丈夫」『だったら俺、じいちゃんに、その日は絶対に先生に予定を入れないように言っておくから』 総和会会長の孫だからこその発言だなと、和彦は密かに苦笑を洩らす。今の守光に、こんなことを面を向かって言えるのは、おそらく千尋ぐらいだろう。賢吾ですら、長嶺組組長という立場から気安く口にはできないはずだ。「あまり強引な頼み方はするなよ」 柔らかな口調で窘めた和彦は、ここで異変に気づく。大雨のため、普段以上に慎重な運転を続けていた車が、前触れもなく加速したのだ。それに伴い、前に座っている護衛の男たちが目に見えて緊張する。「どうかしたんですか?」 和彦が問いかけると、助手席に座っている男が硬い声で答える。「車の通りが少ない道に入ってから、急に後続車が車間を詰めてきたんです。どうも、動きが不自然で」 和彦がおそるおそる振り返ると、確かにすぐ背後を走る車があった。それでなくてもどしゃ降りの雨の中、この車間の近

  • 血と束縛と   第34話(17)

     和彦は声を洩らして笑っていたが、中嶋が律動を再開し、すぐに尾を引く嬌声を上げる。中嶋に抱き締められ、両腕の中で滑る体を奔放に捩って乱れていると、ふいに、内奥から欲望が引き抜かれ、下腹部から胸元にかけて、中嶋の精が飛び散った。「……さすがに、本部に帰る先生の中に、俺の精液を残すわけにはいきませんからね」 息を乱しながらの中嶋の言葉に、納得せざるをえない。「そんなことまで、頭が回ってなかった……」 和彦が率直に告げると、中嶋がゾクゾクするほど挑発的な表情で応じた。「そんなに、気持ちよかったですか?」「気持ちよかった。自分が浅ましい人間なんだと実感させられた。……周りの男たちが大層な扱いをしてくれるから思い違いをしていた。ぼくは、オンナであろうがなかろうが、本来、こういう人間なんだ。プライドが傷ついたなんて発言は、おこがましかったな」「先生は、自分を正しく客観視しようとしすぎですよ。誰も採点なんてしないんだから、気楽に」 中嶋の発言に、正直驚いた。和彦は目を丸くしたあと、苦々しい顔となる。「子供の頃からの癖だな。採点はされていた。――父親から」 まるで慰めようとするかのように中嶋に頬を撫でられたが、ローションがついてしまい、思わず破顔する。 唇を重ね、抱き合いながら、精がこびりついた下肢を密着させているうちに、中嶋を組み敷く格好となる。和彦は、高ぶった欲望をためらいもなく、潤んだ内奥に再び埋め込んだ。** 気だるさと、清々しさをまとった和彦が本部に戻ったとき、すでに日付は変わっていた。堂々の夜遊びだ。 エレベーターを降り、ラウンジの前を通り過ぎようとして、ぎょっとする。誰もいないと思っていたが、ソファの背もたれの向こうで大きな影が動いたからだ。姿を見せたのは南郷だった。どうやら、ソファに深くもたれかかっていたらしい。 和彦が全身の毛を逆立てる勢いで警戒すると、南郷は露骨に頭の先からつま先まで眺めてきた。そして、芝居がかった下卑た笑みを見せた。「わかってはいるつもりだった

  • 血と束縛と   第34話(16)

    「まだ、役目があるんだから、イッたらダメだ。その代わり、こっちを――」 和彦は、中嶋の欲望をくすぐるように撫でてから、柔らかな膨らみをてのひらに包み込む。ビクリと中嶋の体が震え、間欠的に声を上げる。内奥を緩やかに突きながら、柔らかな膨らみを優しく揉みしだき、探り当てた弱みを指先で弄る。 内奥が激しく蠢き、和彦の欲望を舐め上げるように刺激してくる。普段、自分もこんなふうに反応しているのだとしたら、男たちが執拗にこの部分を攻めてくるのもわかる気がした。 中嶋の興奮を鎮めるため、柔らかな膨らみから手を離し、ビクビクと震えている内腿に指先を這わせてくすぐる。激しい律動は必要なかった。和彦は二度、三度と内奥から欲望を出し入れしたあと、ぐうっと奥深くへと押し入り、絶頂を迎える。 精が注ぎ込まれていると感じたのか、中嶋の内奥が激しい収縮を繰り返し、まるで絞り上げるように和彦の欲望を咥え込む。 腰から溶けてしまいそうな快感は数瞬のうちに去り、次に押し寄せてきたのは脱力感だった。和彦は大きく息を吐き出してから体を離すと、中嶋の隣に転がる。 手足の指先にまで充足感が満ちていき、全身から汗が噴き出す。自分が主導して動くとやはり体の反応がいつもとは違う。これまでも中嶋とは体を重ねていたが、今夜は特別な気がした。 中嶋がしどけなく髪を掻き上げて顔を上げ、熱っぽい眼差しを向けてくる。「やみつきになりそうですよ。先生とのセックス。秦さんも三田村さんもいないから、本気を出しました?」「君のほうこそ、いままでと反応が違った。本気でぼくに応えてくれたか?」 ここで中嶋の目の色が変わり、しなやかな獣のような動きで身を起こし、和彦にのしかかってくる。「――次は、俺の番ですね」 力の抜けた両足を抱え上げ、中嶋が腰を密着させてくる。物欲しげにひくついている内奥の入り口に、欲望の先端が擦りつけられ、思わず和彦は喉を鳴らす。中嶋は一息に、内奥の深い場所までやってきた。「んうっ……」 和彦が仰け反ると、露わになった喉元を舐め上げられる。深く繋がったところで、貪るように唇と舌を吸い合い、汗とローションで濡れた肌をぴった

  • 血と束縛と   第34話(15)

     中嶋の手が欲望に伸び、ローションを塗り込めるように扱かれる。和彦は新鮮な感触にビクビクと震わせ、そんな和彦に興奮を覚えたのか、中嶋に唇を求められる。促されたわけではないが、和彦もおずおずと中嶋の欲望に触れ、自分がされているように扱く。 ふざけ合いの延長のような前戯に小道具が加わり、和彦の戸惑いは中嶋によって巧みに溶かされていく。貪り合うような激しいセックスとは違う気楽さは、和彦が現在置かれている息も詰まるような緊張感から解放してくれてもいるようだった。 元ホストだけあって、こういう手管にも長けているのだろうかと考えたりもしていたが、すぐにそんな余裕はなくなる。 中嶋の手がさらに奥へと伸び、内奥の入り口をまさぐられた。和彦が微かに声を洩らすと、中嶋はうっすらと笑みを浮かべてから、再びてのひらにたっぷりのローションを垂らし、和彦の両足の間をまさぐってくる。中嶋の指の動きに呼応するように、淫靡な音が一際大きく響く。 内奥に一本の指がヌルッと挿入されてくる。ローションのおかげでほとんど痛みはなく、馴染みのあるはずの異物感も驚くほどすんなりと体に馴染む。 二本、三本と指を増やされていくに従い、自分の息遣いが妖しさを帯びてきたことに、和彦は気づいていた。反り返った欲望の先端からは透明なしずくが滴り落ち、中嶋が指先で掬い取りながら問いかけてくる。「先生、どっちが先がいいですか?」 その問いの意味を理解し、和彦はうろたえる。「……君に、任せる」「言ったでしょう。傷ついた先生のプライドを癒す手伝いをすると。そのためには、先生がまず選ばないと。自分がどうしたいのか」 本当はプライドなどと大した話ではないのだ。ただ和彦は、南郷に嘲りを含んだ言動を取られるのが、たまらなく嫌なのだ。オンナなのだから、男に庇護される代わりに、男からのどんな嘲りも受け入れろと、言外に示されているようで。 物騒な世界に引き入れられる以前、和彦にとって男と体を重ねることに、建前や価値など見出す必要はなかった。そうしたいから、しているだけで、それで心も体も満たされていた。誰にも迷惑をかけないのだから、誰も立ち入るなと、心の中で密やかに主張しながら。

  • 血と束縛と   第34話(14)

    「――先日の法要のあと、噂というほど下世話なものではないのですが、それとなく情報が流れてきたんです。先生が、長嶺の三世代の男たちと〈盃〉を交わしたと」 話しながら中嶋の手が、和彦の胸元へと這わされる。「俺はてっきり、先生が文字通り盃をもらったんだと思ったんですが、翌日の様子を見て、事情を察しましたよ。ああ、この人は、三人の男たちに抱かれたんだって……。あの宿にいた誰もが俺のように、〈盃〉の意味を理解したはずです。先生は特別なオンナであると、周知させたかったんでしょうね。先生の立場上、堂々と文書を回すことができないので、あくまで伝聞として」「特別なオンナ、か……。大層な響きだ」 自虐的に和彦が洩らすと、再び中嶋が唇を重ねてくる。「投げ遣りな態度は、先生に似合いませんよ」 口づけの合間に中嶋に囁かれ、和彦はのろのろと両腕を動かす。ラグの上で中嶋と抱き合いながら、互いの体をまさぐる。中嶋にシャツのボタンを外されながら、和彦は、中嶋が着ているTシャツをたくし上げ、熱を帯びた肌に触れる。 シャツの前を開いた中嶋がうっとりした様子で目を細め、和彦の胸元をてのひらで撫でてきた。「総和会会長のオンナの体に、俺は触れているんですね。――先生の体は厄介だ。こうしていると、まるで自分が力を得たような錯覚に陥りますよ」「……君もすっかり、総和会という組織に染まってきたな」「というより、先生という人に、染まってきたのかもしれません」 Tシャツを脱ぎ捨てた中嶋が覆い被さってきて、素肌同士が重なる。すでにもう条件反射になっているのか、和彦の中で、男としての本能がゾロリと蠢く。一方の中嶋も、今夜は〈女〉を感じさせない。野心家として、和彦に刺激されるものがあるのかもしれない。中嶋はあくまで、男のままだった。「――俺は先生の遊び相手なんです。小難しい理屈は置いて、思いつくままに享楽に耽りましょう。この間の連休のときとは違って、今夜は三田村さんはいませんが」 和彦は、中嶋の滑らかな背を両てのひらで撫でながら、掠れた声で呟いた。「そのほうが、いい&he

  • 血と束縛と   第4話(2)

     また指で呼ばれ、和彦は賢吾のあとについていく。工事後は待合室となるホールでは、施工業者の人間が集まって持ち込む機材について話し合っている。その様子を一瞥した賢吾は、奥の部屋へと向かう。 「……護衛の人間は?」  ホールを見て、賢吾が一人でこのフロアにやってきたのは確認した。 「物騒なツラした人間を、一般の業者がいる場所に連れてくるわけにはいかないだろ。設計士は前からの馴染みだが、業者のほうはそうじゃないんだ。クリニックを始める前に、妙な噂は立てたくない」 「自分は物騒なツラじゃない、と言いたいんだな」  皮肉でもなんでもなく、思ったまま

    last updateTerakhir Diperbarui : 2026-03-19
  • 血と束縛と   第4話(18)

    「総和会から連絡したいことがあると、中嶋さんが来るの。奥さんがいる家より、こっちのほうが、難波さんが捕まりやすいんだと思う」  和彦の疑問を察したように教えてくれたが、その口調からは、愛人である自分の立場に対する引け目のようなものは一切感じ取れない。案外、仕事のようなものだと割り切っているのかもしれない。 「ねえ、佐伯先生、クリニックの話、本当?」 「あっ、まあ、クリニックを開くのは本当ですよ。今はまだ、準備中ですけど」 「だったら、開業したら、わたしのことも診てくれる?」  まだ二重瞼の手術を諦めていないのだろうかと思いながら、和彦は微

    last updateTerakhir Diperbarui : 2026-03-19
  • 血と束縛と   第3話(34)

     似合わないことを語るヤクザの組長と、思いきり顔をしかめているその息子を交互に見てから、たまらず和彦は噴き出す。肩を震わせて笑っていた。 「……本当に酔ってるな、先生。こんなに楽しそうに笑えるなんて、初めて知った」  賢吾がしみじみと洩らした言葉に対して、千尋が余計な茶々を入れた。 「俺なんて、先生と何回もバカ笑いし合ってるぜ。やっぱり先生の感性は、おっさんより、若者と一緒にいるほうが合ってるんだよ」 「はいはい、子守りしてもらってよかったな」  同じレベルでやり合っている父子は放って、和彦はふらつきながらも先を歩き、駐車場に停められた一

    last updateTerakhir Diperbarui : 2026-03-19
  • 血と束縛と   第4話(13)

    「普段生活している場所だと、どんな雑菌がいるかわからないんです。その雑菌が傷に入ったら、大変なことになりますよ。それに処置するにしても、もっと明るい照明が必要です。瞼を少し切って、糸をすべて取り除くことになりますから」 「それで、お前が上手くできるという保証はあるのか? もしかすると、もっとひどいことになることもあるんだろう。場所を変える云々も、自分の腕に自信がないからだろう。だいたい、こんな若い医者の言うことが信用できるか」  さてどうしたものかと、和彦は中嶋と顔を見合わせる。聞き分けの悪い患者の相手は慣れているが、クリニックの仕事とはわけが違う。組の事情などという

    last updateTerakhir Diperbarui : 2026-03-19
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