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第6話(31)

Author: 北川とも
last update publish date: 2025-11-22 20:00:52

 別に、やましいことはしていないのだ。

 誰に対してなのか、和彦は心の中で言い訳する。やましいことはしていないはずなのに、どうしてこう、悪いことをしているような妙な罪悪感を覚えるのか――。

 ガラス張りのショールームをぐるりと見回した和彦は、落ち着かない気分で髪を掻き上げる。自意識過剰のつもりはないが、この店に着いたときから、誰かに見られているような気がして仕方ない。

 原因はわかっている。和彦についている、長嶺組の護衛のせいだ。

「――佐伯先生、どうかしましたか?」

 秦に声をかけられ、和彦はハッとする。今日は、護衛だけでなく、秦も一緒なのだ。むしろ同行者としては、秦がメインだ。

「いえ……。クリニックのインテリアを見にきたのに、つい、自分の部屋に置けるものを探してしまって……」

 苦し紛れではなく、本音も入っている和彦の言葉に、秦は柔らかな微笑を浮かべる。

「だったら、こ
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  • 血と束縛と   第3話(6)

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    last updateLast Updated : 2026-03-18
  • 血と束縛と   第3話(7)

    **** テーブルに肘をついた千尋は、おもしろくなさそうに唇を尖らせていた。あえてそれに気づかないふりをして、和彦はコーヒーを啜る。  平日の昼間から、ホテルのレストランで優雅な昼食をとれるとは、自分の境遇も変わったものだと内心で皮肉っぽく思いはするのだが、こんなことが当たり前になる日がくるのだろうかと興味深くもある。  生活そのものが大きな変化の過程にあるため、毎日慌ただしく過ごしていても、何もかもが新鮮に感じられるのだ。たとえば、こうして千尋と向き合って、食後のコーヒーを味わっていても。  

    last updateLast Updated : 2026-03-18
  • 血と束縛と   第3話(25)

    「ここは、気に入ったか?」  顔を間近に寄せた賢吾に囁かれ、さすがに意地は張れなかった。 「……ああ」 「この物件を見つけて、手付を打った俺に感謝しているか?」  和彦は賢吾を睨みつけながら、乱暴に答えた。 「しているっ」  このあと賢吾がなんと言うか、わかっているのだ。案の定、賢吾はニヤニヤと笑いながらこう言った。 「なら、ご褒美をくれ、先生」 「くれ、と言いながら、いつも強引にもぎ取っていくくせに――」  唇を塞がれて、和彦はあとの言葉を奪われる。痛いほど激しく唇を吸われ、あまりの勢いに和彦の後

    last updateLast Updated : 2026-03-18
  • 血と束縛と   第3話(3)

     もう一度賢吾に唇を吸われてから、伴われて寝室へと向かう。この部屋だけは殺風景さとは無縁で、過不足なく家具が調えられ、小物に至るまですべて賢吾の好みで統一されている。深みのある赤を基調とした空間は和彦には渋すぎるように感じられるが、賢吾のほうは非常に満足そうだ。  ドアを開けたままなのを気にしながらも、ベッドに腰掛けた賢吾が両足を開いて鷹揚に構えたのを見て、和彦はため息をついて、これからの時間に集中することにする。  賢吾の両足の間に身を屈め、カーペットに両膝をつくと、スラックスのベルトを緩めて前を寛げる。何も言わず、引き出した賢吾のものに舌を這わせた。  

    last updateLast Updated : 2026-03-18
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