LOGIN「できることなら一人で運転して、ドライブを楽しみたかった――、という口ぶりだ」
「そろそろ運転の仕方を忘れそうなんだ」 運転はダメだと言いたげに、三田村に小さく首を横に振られてしまった。和彦は軽くため息を洩らす。「まあ、いい。もう一つの希望は叶えられたし」「なんだ?」「――忙しい若頭補佐と、平日の昼間からドライブを楽しむ」 三田村から返事はなかった。和彦は、ぐっと好奇心を抑え、三田村がどんな顔をしたのか、バックミラーを覗き込むような、はしたない行為はやめておく。 途中、自販機で缶コーヒーを買っていると、傍らに立った三田村に言われた。「もう少し走ったところに、砂浜に下りられる場所があったはずだ。周りに店もないようなところだが、そこでいいなら、休憩していこう」 和彦は目を丸くして、無表情の三田村の顔を凝視する。「……急いで帰らなくていいのか?」「コーヒー一本飲む余裕ぐらいある」 当然、和彦の返事は決まっていた。 三田村が言っていたのは、きれいな人工砂浜のことだった。行きしなに見かけたときは数台の車が停まっていたが、今は一台だけだ。季節外れの海は、こんなものだろう。 缶コーヒーを持ったまま砂浜に下りてみると、離れた場所に、波打ち際ギリギリのところに並んで腰掛けている男女の姿があるが、他に人気はない。 靴に砂が入るため歩き回ることもできず、すぐに階段に引き返す。積み上げられたテトラポッドの陰に入り、強い陽射しを避けながら、思う存分海を眺めることができる。「風が気持ちいい……」 階段に腰掛けた和彦が、柔らかく吹きつけてくる風に目を細めながら洩らすと、隣に腰掛けた三田村に缶コーヒーを取り上げられる。再び手に戻ってきたときには、しっかりプルトップが開けられていた。和彦はちらりと笑うと、缶に口をつける。「夏場なら、いくらでも店が出ていて、にぎやかなんだがな。そういう光景を見ると、若い頃、勉強だと言われて、屋台でこき使われたときのことを思い出す」 思いがけない三田村の話に、和彦はつい身を乗り出して尋ね** 鷹津が帰ったあと、すぐに賢吾に連絡を取って、起こった出来事を報告した和彦は、バスルームに駆け込んだ。 念入りに何度も体を洗いながら、鷹津から投げかけられた言葉や、屈辱的な行為、恥知らずな自分の反応を湯と一緒に流してしまいたかったが、もちろんそれは不可能だ。 バスルームを出て、身震いしたくなるような嫌悪感と悔しさを、安定剤とともに無理やり飲み下す。何かあったときのためにと、心療内科医の友人に処方してもらっていたものだ。 ベッドに潜り込んだ和彦は、怒りに身を震わせ、シーツを握り締める。衝動のままに何かを殴りつけたくもあったが、和彦には、本当は自分自身を殴りたいのだとわかっていた。鷹津に精神的に打ちのめされた今、自分をさらに追い詰めるのは、つらい。 どうせ朝になれば、嫌というほど自己嫌悪に責め苛まれるのだ。だったら今は、薬の力を借りてでも眠ってしまったほうがいい。 少し前に、秦に安定剤を飲まされてひどい目に遭ったので、軽めのものを出してもらったのだが、それでも効き目は確かなようだ。緩やかな眠気がやってきて、和彦の思考は散漫になってくる。 いつの間にかウトウトしていると、ベッドが揺れ、体を横向きにしている和彦の背後で誰かが動いている気配を感じる。次の瞬間、強い力で腰を引き寄せられ、ぬくもりに包まれた。 一瞬、鷹津かと思って身を強張らせた和彦だが、しっかりと抱き締められ、腕の逞しさを感じると、体の力を抜く。眠る前に、自分が誰に連絡を取ったのか、思い出したのだ。「――……わざわざ、来なくてよかったのに……。ぼくは平気だと、電話で話してわかったはずだ」 まだ意識がはっきりしないまま、寝ぼけた声で和彦が言うと、抱き締めてくる腕の力が強くなる。「そう言うな。俺の可愛いオンナの一大事だ。駆けつけないわけにはいかねーだろ」 耳に唇が押し当てられ、忌々しいほど魅力的なバリトンが囁いてくる。シャワーを浴びてまだ半乾きの髪が、そっと掻き上げられた。 和彦がようやく目を開けると、ライトの控えめな明かりが、壁に大きな人影を作り出していた。今、和彦を背後から抱
強引に事に及ばれたら、和彦は抵抗のしようがない。だが、鷹津はそうしようとはしなかった。和彦の唇と舌を貪りながら、柔らかな膨らみを手荒く揉みしだき始め、たまらず熱い吐息をこぼす。 反り返り、濡れそぼった和彦のものはすでに限界を迎えかけており、だからこそ、例え鷹津の手であろうが、きつく扱かれると歓喜に震えた。「うっ、あっ、あっ、触る、なっ……」「なら、俺のものを尻に突っ込んでやろうか? 好きなほうを選べ」 鷹津を睨みつけた和彦は、すぐに顔を背ける。そのまま、鷹津の手に高ぶりを扱かれ、和彦は快感に煩悶する。感じている和彦に触れることを、明らかに鷹津はおもしろがっていた。 胸の突起を執拗に嬲られ、嫌がっているうちに官能が高まっていく。そんな自分の姿に気づいた和彦が身を捩ろうとすると、待ちかねていたように両足を抱え直され、内奥の入り口に鷹津の欲望が押し当てられる。 無言で、抵抗するなと恫喝され、求められるまま和彦は、鷹津と濃厚な口づけを交わす。舌を絡め合いながら、和彦のものを扱く鷹津の手の動きが速くなっていた。 体を起こした鷹津が見ている前で、和彦は絶頂に達してしまう。噴き上げた精で下腹部を濡らし、全身を震わせていると、そんな和彦を鷹津は、暗い愉悦を湛えた目で見下ろしていた。「なるほど、いい〈オンナ〉だな。俺相手にも悦んで見せてくれるなんて、節操のない、いやらしい体だ。お前は、ヤクザなんてクズに相応しい人間ってわけだ」 鷹津は囁くように罵りながら、喘ぐ和彦の唇を何度も啄ばむ。ここで和彦は、鷹津の行動に気づいた。鷹津は、和彦を罵り、唇に触れながら、自分の高ぶりを片手で扱いていた。そして――。 低い呻き声を洩らした鷹津が、和彦の体の上に素早く馬乗りになる。迸り出た生暖かな精が勢いよく胸元に飛び散り、肌を汚す。突然のことに和彦が反応できないのをいいことに、鷹津はまだ熱い欲望を胸元に擦りつけてきた。 自分が放った精で汚れた和彦を、欲望の冷めた眼差しで鷹津は見下ろし、鼻先で笑った。「ヤクザのオンナにお似合いの姿だ。俺の精液で汚れて……壮絶に、そそる。取り澄ました顔より、ずっと色っぽ
そう言いながら鷹津が指を動かし、内奥を掻き回してきたかと思うと、襞と粘膜の感触を楽しむようにじっくりと撫で上げてくる。意識しないまま和彦の息遣いは妖しさを帯び、誘われたように鷹津が顔を寄せ、傲慢に命じてくる。「舌を出せ。吸ってやる」 この状態にあっても、鷹津の命令に従うのが嫌だった。和彦は唇を引き結んで顔を背けたが、鷹津は何も言わず内奥から指を抜き、体を起こした。ベルトの金属音とファスナーを下ろす音が聞こえて和彦は身を強張らせる。その間に両足を抱え上げられ、わずかに綻んだ内奥の入り口に〈何か〉が押し当てられた。「まあ、いい。長嶺のオンナを抱いたという既成事実さえあれば、お前がどんな反応をしようが関係ない」 鷹津の欲望は、すでに熱く高ぶっていた。賢吾のオンナである和彦を嬲っているということに興奮しているのかもしれない。鷹津そのものの凶暴さをうかがわせるものが、内奥の入り口に擦りつけられてから、押し入ってこようとする。 この瞬間、絶対的な拒絶感が和彦を襲う。鷹津だから受け入れられないというより、ただ、賢吾の許しのない行為に及ぶことを、体が拒んでいたのだ。 秦とのことがあったあと、自覚もないまま和彦は、こんな状態になるよう賢吾に調教されたのかもしれない。 声も出せないまま、ただ怯えて鷹津を見上げる。和彦のすがりつくような眼差しに気づいた鷹津は、軽く目を見開いたあと、動きを止めた。そして、じっと和彦を見下ろしてくる。「……そんな目をするのは、長嶺に対する操立てか? 長嶺以外に、その息子や飼い犬とも寝ているお前が」 和彦の答えも待たず、覆い被さってきた鷹津が唇を塞いでくる。肩を押し退けようとしたが、すかさず凄まれた。「尻に突っ込まれたくなかったら、拒むな。お前は従順に、長嶺相手のように感じて見せればいいんだ。――俺に対して」 鷹津の意図がわからず眉をひそめたときには、再び唇を塞がれていた。内奥に挿入されたのは指で、妖しく激しく蠢き、和彦の官能を嫌でも引きずり出す。「あっ、はあっ……、あっ、あぁっ」 ねっとりと内奥を掻き回され、たまらず声を上げる。眼前で鷹津がニ
「お前、俺を心底嫌っているだろ。なのに体は反応する。……ヤクザの組長を骨抜きにするには、それぐらい淫乱じゃねーとダメってことか」 思わず鷹津を睨みつけると、髪を掴まれて唇を塞がれる。濡れた先端を擦り上げられてたまらず呻き声を洩らした途端、待ちかねていたように舌で口腔を犯されていた。「長嶺にしていたようにしてみろ。いやらしいキスをしていたろ。うっとりした目であのクズを見つめながら――」 引き出された舌を吸われて鷹津の求めているものがわかった和彦は、柔らかな膨らみを強く揉みしだかれる刺激に狂わされ、鷹津と舌先を触れ合わせたあと、絡める。 馴染みのある感覚が、和彦の胸の奥でうねる。それは、他の男たちと共有してきた肉欲の疼きだ。 和彦の変化に気づいたのか、獣じみた粗野な口づけを続けていた鷹津がふいに体を起こし、再び和彦の体をじっくりと見下ろしてくる。次に男の関心を引いたのは、興奮のため凝った胸の突起だった。 胸元に顔を伏せた鷹津が、上目遣いに和彦の反応をうかがいながら、舌先で突起を弄る。和彦はビクリと体を震わせて、思わず鷹津の頭を押し退けようとしたが、身を起こしたものを強く握り締められ、簡単に抵抗を封じられる。 突起をたっぷり舐められてから、痛いほどきつく吸い上げられていた。「あうっ、うっ、うぅっ」 絨毯の上で、ヒクンと背をしならせた和彦は、うろたえて顔を背ける。鷹津に触れられて嫌でたまらないはずなのに、体が急速に鷹津の愛撫に馴染み始めていた。 和彦の動揺をよそに、鷹津は容赦なくことを進める。和彦の片足を抱え上げたかと思うと、唾液で濡らした指を内奥の入り口に這わせてきたのだ。「やめろっ」 本能的な恐怖から和彦が声を上げたときには、強引に指が挿入されていた。痛みで呻き声を洩らそうが、鷹津は頓着しない。狭い場所を押し開くようにして、太く長い指を付け根まで内奥に収めてしまった。「あっ、あっ、うあっ、あっ――」 きつく収縮を繰り返す内奥で、鷹津は無造作に指を出し入れし、繊細な襞と粘膜を蹂躙するように擦り上げてくる。ときおり指を曲げて内奥を押し広げられると、和彦は苦痛の声を抑えられない
鷹津の手が、いきなり柔らかな膨らみをまさぐってきた。反射的に上体を捩って逃れようとしたが、力を込めて揉まれると、瞬く間に下肢から力が抜け、動けなくなる。「長嶺に、ここも開発してもらったのか? 一番弱い部分を無防備に晒して、あれだけ感じてたんだ。さぞかし、あの蛇みたいな男は、たっぷりとお前を可愛がってるんだろうな」 何かを探るように柔らかな膨らみを指で揉みしだかれる。痛みと、ときおり背筋まで駆け上がってくる強い刺激に、和彦はビクビクと腰を震わせる。それでも、やめろとは言えなかった。鷹津がまさぐっているのは、肉体的な弱みだ。そこを押さえられると、何もできない。 和彦の柔らかな膨らみを執拗に攻めながら、鷹津がのしかかってくる。「俺に逆らうなよ、佐伯」 低く囁くように恫喝され、唇を塞がれる。歯列をこじ開けられて舌を捩じ込まれていた。流し込まれる唾液と、下肢から容赦なく送り込まれる強い刺激に、今にも吐きそうになる。生理的な反応から和彦の目に涙が滲むと、鷹津はおもしろがるような表情となり、和彦の目元に唇を押し当て、チロッと舌先で涙を舐め取った。 耳を舐られてから、首筋に噛み付く勢いで激しい愛撫が与えられる。同時に、下肢に伸びた鷹津の手に和彦のものは握り込まれ、強く上下に扱かれる。 変わった、と和彦は思った。ここまで和彦をいたぶってきた鷹津が、今度は和彦から快感を引き出そうとしていた。「……い、やだ……。やめ、ろ……」 和彦の弱々しい訴えに、鷹津は深い口づけで応える。感じやすい粘膜をたっぷり舐め回され、脅されるまま舌を差し出すと、激しく吸われて噛みつかれる。その間も、和彦のものを扱く手は止まらず、先端に爪を立てて弄られる。 肌をきつく吸い上げられ、鬱血の跡をいくつも散らされていた。その頃には和彦の体は熱くなり、肌が汗ばむ。これまで何人もの男の愛撫を受けてきたものは、今は鷹津の手の中で形を変え、身を起こし、先端に透明なしずくを滲ませていた。 生理的なものとはいえ、和彦は自分の体の反応が忌々しい。鷹津はそんな和彦の、快感を求める体と、苦しげな表情のギャップを楽しん
「うぅっ……」 恐怖と痛みに、鷹津の肩に手をかけたまま和彦は動けない。再び鷹津に唇を舐められてから、強靭な舌にこじ開けられそうになり、さすがに顔を背けようとしたが、敏感なものを握る手に力が込められ、痛みに声を上げる。 口腔に鷹津の舌がヌルリと入り込み、露骨に濡れた音を立てて舐め回されながら、唾液を流し込まれる。いっそ気を失ってしまいたくなるような嫌悪感が、全身を駆け抜ける。厚みのある体にのしかかられながら、本能的なものから抵抗するが、明らかに鷹津は、和彦の抵抗を楽しんでいた。 「ひっ」 和彦のものの根元が、指の輪によって強く締め付けられる。痛みに息が詰まり、体が強張る。そんな和彦の耳元に顔を寄せ、鷹津が囁いてきた。 「抵抗するなら、握り潰してやろうか? これが使い物にならなくなったら、長嶺たちも、お前を本当の〈女〉にしてくれるかもな」 屈辱から、カッと体が熱くなる。和彦は間近にある鷹津の顔を睨みつけるが、圧倒的に優位に立っている男は、蛇蝎の片割れであるサソリの例えに相応しく、怖い笑みを唇に刻んだ。 抵抗心を確かめるように鷹津にじっくりと唇を吸われ、和彦は必死に歯を食い縛る。すると、握られたものを手荒く扱き上げられる。快感など湧き起こるはずもなく、ただ痛い。和彦の苦痛の表情に気づいたのか、鷹津の手が下肢から退く。 ほっとできたのは、ほんの数瞬だった。 喉元に大きな手がかかり、和彦は目を見開く。軽く喉を絞められて息苦しさに小さく喘ぐと、その状態で鷹津は、カーゴパンツと下着をさらに引き下ろし始めた。もちろん和彦は声を出せず、抵抗もできない。下肢を剥かれた挙げ句に、上着と、引き裂かれたシャツも脱がされていた。 鷹津は、冷めた目で和彦の体を見下ろし、まるで検分するように片手で触れてくる。 「これが、三人のヤクザと寝ている〈オンナ〉の体か……」 鷹津に触れられる部分から鳥肌が立つ。いつの間にか喉元にかかった手は退けられたが、それでも和彦は動けなかった。鷹津の凶暴性は、次の瞬間には暴発しそうな危うさがあり、だからこそ手加減を忘れて痛めつけられそうなのだ。 「――足を立てて開け。大きくな」 命令されて片足を抱えられると







