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last update publish date: 2026-09-06 19:38:04

第4章

翌日、登記所の前で、エレーナは胸を張って凛と立っていた。彼女の手は小さなバッグを固く握りしめ、その隣にはダミアンが高慢ちきに立っていた。

職員が二通の離婚証明書を持って現れ、一枚ずつ手渡した。

「こちらが離婚証明書になります、旦那様、奥様。これで正式に離婚が成立いたしました」職員は事務的に告げた。

エレーナはかすかな笑みを浮かべて書類を受け取った。一方、ダミアンはただ深くため息をつき、見返すこともせずに離婚証明書をコートのポケットに押し込んだ。

「俺なしで生きていけると思っているのか?」ダミアンは嘲るようなトーンで口を開いた。

エレーナは顔を向け、片方の眉を跳ね上げた。「もちろんですわ」

ダミアンはくすくすと笑い、胸の前で腕を組んだ。「バカなことを言うな、エレーナ。俺のお金なしで生きていけるわけがないだろう。俺が提示した慰謝料を断るべきではなかったな」

エレーナは皮肉めいた笑みを浮かべた。「あら、今更ご心配なさってくださるの?」

ダミアンはまるで同情するかのように、ゆっくりと首を振った。「俺はただ現実的に考えているだけだ。お前には誰もいないし、まともな仕事すらない。本気で世界がお前の味方をしてくれると思っているのか?」

エレーナは小さく笑い、自信に満ちた眼差しで男を見つめた。「世界が私の味方をしてくれる必要なんてありませんわ。ただ、あなたのお金に頼らず自分一人の力で立っていられるという確信があれば十分です、ダミアン様!」

ダミアンは目を細めた。「面白い。俺の慰謝料なしでどこまで持ちこたえられるか、見ものだな」

エレーナは胸の前で腕を組んだ。元夫の言葉に何一つ反応を示さなかった。

男は再び、今度はより見下すように鼻で笑った。「それにお前、こんな姿になったお前を求める男が他にいると思っているのか?」

エレーナは笑いを噛み殺した。「で、どうして私がそんなことを気にしなければなりませんの?」

ダミアンは一歩歩み寄り、低く鋭い声を放った。「お前にはもう魅力がないんだよ、エレーナ。自分の手入れすらできていない。太ったし、昔ほど美しくもない。そして何より、俺に男の跡継ぎを産むことができなかった」

エレーナは笑みを絶やさず、その眼差しをいっそう冷たくさせた。「本当に面白いお方ですこと、ダミアン様! まるで私がまだあなたの気を引きいたがっているかのような言いぐさですわね」

ダミアンの顔が強張った。

エレーナは穏やかに、だが致命的な声で続けた。「お聞きなさい、ダミアン様。あなたが私をどう思おうと知ったことではありませんわ。男の子を欲しがる執着ゆえに結婚生活を裏切るような男からの承認なんて、私には一切必要ありませんの。私が泣いてあなたに乞い願うとでもお思い? 大間違いですわ、あなた。それどころか、私は心から感謝しているのですから」

「感謝だと?」ダミアンは嘲笑を込めて繰り返した。「すべてを失ったことに感謝しているというのか?」

エレーナは静かに、けれど自信に満ちた笑みを漏らした。「妻を一度だって尊重しなかった男から、ついに自由になれたことに感謝しているのですわ。私が打ちのめされるとお思い? まさか、ダミアン様。あなたから解放されて、今とても幸せですのよ。これまでずっと、あなたは私にあまりにも多くの要求を押しつけて圧迫してきましたわ。美しくあり続けなければならない、完璧に手入れをしなければならない……そのくせ子育てを助けるベビーシッター一人雇ってくれませんでしたわね。男の子を期待して、早く次の子を妊娠させるためだけに私に触れて……妊娠している子が女の子だと分かった途端、私を投げ捨てたのですから」

男は彼女を鋭く睨みつけた。エレーナの言葉など一顧だだにしていなかった。

「もういい、エレーナ。これ以上この話をする必要はない! お前が落ちぶれていく姿を見るのが楽しみでならないよ」彼は冷たく呟いた。

エレーナは肩をすくめた。「私も、私を見くびったことをあなたが後悔する姿を見るのが楽しみで仕方がありませんわ!」

これ以上待つことなく、エレーナは背を向けると確かな足取りで歩み去った。

登記所の外に出ると、エレーナは静かにタクシーに向かって歩いた。心の中では、すでに大きな決断を下していた。かつての自分を取り戻す時が来たのだ——あの最低男の陰に隠れて生きるだけの、ダミアン・ランカスターの妻としてではなく。

彼女は素早く携帯電話を取り出し、長いことかけていなかった連絡先へとダイヤルした。そう時間を置かずに通話が繋がった。

「エレーナ?」電話の向こうから、驚いたような声が響いた。

エレーナは小さく微笑んだ。「久しぶりね、タマラ」

一瞬の静寂の後、ヒステリックな悲鳴が上がった。「嘘でしょ、エレーナ!? 本当にあなたなの!?」

エレーナは静かに笑った。「ええ、私よ」

「今までどこにいたのよ!? 5年間も音沙汰なしで! 永遠に消えてしまったのかと思ったわ!」

エレーナはため息をついた。「消えてなんかいないわよ、タマラ。ただ、妻として、母親としての生活に追われていただけ」

タマラは鼻を鳴らした。「あのクイーン・エリザベスをファッション界からそのまま姿を消させるなんて、一体どんな結婚生活よ!? あなたを探している人がどれだけいるか分かってるの!? あなたは伝説なのよ! 未知のデザイナーがどこへ行ったのか、みんな未だに噂しているわ!」

エレーナはかすかに微笑んだ。「復帰するわ、タマラ」

タマラは数秒間絶句し、ついに叫び声を上げた。「本気!? エレーナ、本当に戻ってくるの!?」

タマラには見えないものの、エレーナは深くうなずいた。「ええ、業界に戻りたいの。私の地位を取り戻すわ」

「なんてこと……冗談じゃないわよね、エレーナ?」タマラの声は興奮に満ち溢れていた。「待って、本名で戻るの? それともペンネームのまま?」

エレーナは一瞬考え、自信に満ちた声で答えた。「当面は、クイーン・エリザベスのままでいくわ。本当の私が誰なのかを知られる前に、私が誰であるかを世界に思い出させたいの」

タマラはくすくすと笑った。「その考え方、好きよ。それじゃあ、計画は?」

エレーナは車のシートにもたれかかった。「新しいコレクションから始めたいの。5年間も休業していたんだもの、ブレイクスルーとなるようなものが必要よ。クイーン・エリザベスが戻ってきたことを、すべての人に知らしめたいの」

タマラは嬉しそうに笑った。「素晴らしいわ、エレーナ! 本当にファッション界を再び震撼させることになるわね! 待ちきれないわ!」

エレーナは微笑んだ。「あなたの助けが必要なの、タマラ。最高のチームとリソースが必要だし、何より、もう一度世界に私への興味を持たせたいの」

タマラは深く息を吸い込み、極めて熱のこもった声で言った。「エレーナ、すべて私に任せて。私が全ても手配するわ。準備ができたら言って頂戴、すぐにうちの者たちに連絡するから」

エレーナはまっすぐ前方を見つめた。その瞳は強い決意に満ちていた。「準備はできているわ、タマラ。当然私の物であるべきものを取り戻す準備はね」

タマラは興奮を隠せずに笑った。「それなら準備なさい、クイーン・エリザベス! あなたが戻ってきたことを、世界が知ることになるわ!」

エレーナは自信に満ちた笑みを浮かべた。これがすべての始まりだった。虐げられる女性はもういない。役に立たないと扱われる妻ももういない。

今や世界は、彼女が自らの名で頂点に立つ姿を目にすることになるのだ。

「ダミアン! 私を見くびったことを後悔させてやるわ! そして、私のお腹の中にいるこの子は絶対に産むわ」エレーナは心の中でそう誓った。

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