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2-3

Author: 琉斗六
last update publish date: 2026-03-22 21:00:29

 婦人に示された方へ走ると、山の林へと足跡が続いていた。

──熊が二頭……となると、かなり厄介だぞ……。

 そう思い、気配察知と身体強化に魔力を割いて、先へと進む。

 少し行くと、木々や草が倒された場所があった。

 その向こうに、熊が一頭、頭蓋を割られて倒れている。

 そして、その傍には、折れた杖が落ちていた。

 アルの喉が、ヒュッと鳴る。

 杖がここにある……ということは、ジュリアンは現在、無手ということだ。

──どっちだ? 急がねば……っ!

 気ばかり焦る。

 アルは、深呼吸をしてから、改めて気配察知を展開し直した。

──あちらかっ!

 さほども離れていない場所に熊が立っている。

 その足元には、子供が倒れて血を流していた。

「イアン様っ!」

 叫んだアルに熊が振り返る。

 その瞬間、グラと熊の巨体が揺れた。

 アルは間髪を入れず、抜剣して熊の背を切り裂く。

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     ジュリアンは、森の中を走っていた。 暗く淀んだ空気、思うように動かぬ足。「そんなあんよでは、追いつけないぞ、ジュリーちゃん」 嘲る声が聞こえる。 木々の隙間から、いくつもの手が伸び、ジュリアンの体を掴む。「離せっ! 子供が……っ!」「おまえは騎士になどなれやしない」「どろぼう猫の息子にお似合いなのは、娼婦の衣装だろう」 服を剥ぎ取られ、体中をいじられ、撫でられる。「いやだっ! よせっ!」 目の前に、巨大な熊が立ちはだ

  • 触れるたびに溺れる浅ましさ   2-2

     アルは、あとを全てクリスに任せて、マークと共にローデンフェルへと向かっていた。  馬車で七日の道のりを、アルとクリスの駿馬を駆って三日で駆ける。「あちらに着いたら、労ってやらなきゃな」 「ですね」 クリスがいれば、ここまでの無茶はしなかっただろう。  だが、ジュリアンに恋い焦がれるアルと、師と仰ぐマークでは、逸る心を抑えきれなかった。「第七分隊の者が、羨ましそうに見ていたな」 「皆、ジュリアン様を心配しておりますから」 とはいえ、分隊一つ……つまり十五人もの騎士がいきなり退団すること

  • 触れるたびに溺れる浅ましさ   2-1

     領主館は、こぢんまりとした石造りの建物だった。  だが、手足に不自由を抱えたジュリアンが、一人で管理できる広さではない。「屋敷を管理するため、村人に交代で来てもらえないだろうか? 働いた分の日給は出す」 ジュリアンは、村長にそう持ちかけた。「領主様のお館に勤められるような、教養のある者はいませんが……?」 「いや、教養は必要ない。屋敷の掃除と朝夕の食事の支度を頼みたい」 くどいほど〝粗相があってもお許しください〟と念を押されはしたが、約束を取り付けることはできた。  村人の手伝い程度ならば、使

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