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許すとでも?私を15年愛す極上の夫を選ぶわ
許すとでも?私を15年愛す極上の夫を選ぶわ
Penulis: 猫ちゃん

第1話

Penulis: 猫ちゃん
二宮凪(にのみや なぎ)はシルクのネグリジェを身にまとい、大きな窓の前に立っていた。外に広がる街の灯りをしばらく眺めた後、スマホを取り出して実家に電話をかけた。

「例の縁談、受けるわ」

電話の向こうは一瞬沈黙したが、すぐに凪の父親である二宮大地(にのみや だいち)の隠しきれない喜びの声が聞こえてきた。

「凪ちゃん、いつ帰ってくるんだ?父さんが迎えに行くからな」

久しく呼ばれていなかったその呼び方に、凪は思わず鼻の奥がツンとなった。

「来週の月曜」

それだけ言うと、凪は電話を切った。

母が亡くなった途端、この男は待ちきれないとばかりに、愛人と娘を家に連れ戻ってきた。

あの二人を憎んでいる。しかし、母が遺した会社だけは、絶対にあの親子の好きにはさせない。

以前は中島渉(なかじま わたる)のため、必死に立ち回ってきた。だが、今となってはそんな面倒なことをする必要もない。最も手っ取り早い方法で、自分のものを取り返すのだ。

渉のことを思い出すと、またしても胸に鋭い痛みが走った。

時刻は夜八時半に遡る。凪は手料理をテーブルに並べたところだった。

ちょうどその時、渉からメッセージが届いた。

【会社で急用ができた。待たなくていい】

メッセージ画面を見つめる凪は、まるで感情を失った人形のようだった。

今日は凪の23歳の誕生日であり、渉と付き合って五年目の記念日でもあった。

夜六時からずっと、渉に電話をかけ、メッセージを送り続けていた。しかし電話には出ず、メッセージも十通送ってようやく一言【仕事中】と返ってくるだけ。

トーク画面は、まるで彼女の一人芝居のようだった。

【トマホークステーキ、用意したんだよ……】

【お花はバラとユリを買ったよ……】

【ワインはあなたの大好きなもの。今日の午後、ワイナリーまで取りに行ってきたの】

【アロマキャンドルも作ったんだよ。クチナシの香り。今夜、使おうね】

……

この十三年間、渉が彼女の誕生日を忘れたことなど一度もなかった。

諦めきれずにもう一度渉に電話をかけたが、電源が切られているというアナウンスが流れるだけだった。

うつむいて先ほどのメッセージが届いた時間を確認していると、突然スマホに一件のSNSの更新通知が届いた。

【VINさんのコンサート、ずっと楽しみにしてた】

添えられた写真には、男女の腕が寄り添うように写っていた。

薄暗い照明の下、男物のダイヤモンドのカフスがはっきりと見え、そこには彼女が特別にオーダーメイドしたクチナシの花が刻まれていた。

それは渉が最も好きなデザインで、このY市に一つしかないものだ。

凪はスマホを固く握りしめ、写真を何度も拡大、縮小を繰り返した。やがて目がじんじんと痛くなるまで見つめた後、スマホをテーブルに叩きつけ、陸に打ち上げられた魚のように、荒い息を繰り返した。

VINの全国ツアー初日のチケットを、凪はすぐさま手に入れた。あの時、誕生日に一番欲しいプレゼントだと渉に伝えたはずだ。

渉も一緒に行くと約束してくれたのに、開演直前になってドタキャンされた。

そして今日、自分の誕生日に、渉は自分を捨てて山下直美(やました なおみ)を連れて行ったのだ。

胸の痛みが何度も全身を駆け巡り、凪は顔を覆った。もう見て見ぬふりをするなんて、みじめでできなかった。

幼い頃、凪は病弱だった。十歳の時に療養のためK市からY市へ引っ越し、そこで渉と出会った。

体が良くなってもK市に帰りたがらなかったのは、渉がいたからだ。

二歳年上の渉は、中学から大学まで、いつも凪を守り、甘やかし、そばにいてくれた。

凪の十八歳の誕生日に告白し、周囲に知らしめた。そして、最高に綺麗な花束を贈り、一生凪だけを愛すると誓ったのだ。

いつから変わってしまったのだろう。

きっと、自分が直美の腕を引いて、渉に紹介した瞬間からだ。

白いワンピースを着た、儚げで清純な少女。か弱い笑みを浮かべ、どこか自信なさげに、おどおどとしていた。

「中島先輩、私は二宮さんに援助していただいている学生です」

その気丈さは、まるで断崖に咲く百合のようで、やすやすと男の庇護欲を掻き立てた。

それ以来、渉は凪と直美のどちらかを選ばなければならない時、十中八九、直美を選んだ。

そのことで、凪も渉を責めたことがある。

そんな時、渉はいつも眉をひそめ、心底がっかりしたような目で凪を見た。

「直美は体が弱いんだ。君と違って何も持っていない。いじめるなよ」

体が弱いからって、恥も知らずに人の彼氏を奪っていいわけ?

その時、テーブルの上のスマホが立て続けに震えた。

凪はすぐにスマホを手に取り、画面を確認した。

メッセージが三通、立て続けにポップアップで表示された。

【VINさんのヴァイオリンの腕はやっぱり世界レベルね。渉さんがもう連絡してくれて、コンサートが終わったら弟子入りさせてもらいに行くの】

【今日、お誕生日でしょう?渉さんに早く帰るように言ったんだけど、私がちゃんとご飯を食べないのが心配だからって、そばにいてくれるの。あなたから何回も電話が来て、渉さん、迷惑そうにしてたから、電源切るしかなかったみたい】

【これ、渉さんからのプレゼントなの。二宮さん、今日の私の服に似合うか見てくださる?】

写真には、美しい虹色のダイヤモンドブレスレットが写っていた。

有名ブランドの今季の新作で、予約しないと手に入らないはずのものだ。

コンセプト広告が出た時、凪も渉に話したことがあった。

やはり彼は買っていたのだ。ただ、贈る相手が自分ではなかっただけで。

凪は静かにスマホを置いて、ろうそくに火を灯して一人で誕生日をお祝った。そして、半月かけて練習した手作りのケーキと、残った料理を一緒にゴミ箱に捨てた。

それでも、凪にとって、ここを離れるのを来週にしたのには理由があった。この十三年間、彼女と渉はあまりにも深く結びつきすぎていたからだ。

感情的にも、生活の上でも。

それを断ち切るのは、容易なことではなかった。

時間が必要だったのだ。

うとうとと眠りについた頃、ベッドサイドに誰かが腰かける気配がした。

次の瞬間、ひんやりとした手が凪の頬に触れ、優しくつまんだ。そして、いつものように甘く、魅力的な声が耳元で囁いた。

「凪ちゃん、ごめん。遅くなった。誕生日プレゼントだ、気に入るかな?」

その声に起こされ、凪は眉をひそめながら目を開けた。

渉は黒いシャツ一枚で、ジャケットはどこかに脱ぎ捨ててきたようだった。

陰影に縁取られた端正な顔立ちは、満足げな表情で彩られ、一層セクシーで魅力的だった。

その瞳に見つめられれば、吸い込まれてしまいそうだ。

凪は体を起こすと、渉が差し出した箱を開けるのを見つめた。

箱の中には、虹色のダイヤモンドブレスレットが静かに横たわっていた。

「ずっと欲しがってただろ?つけてやるよ」

渉がブレスレットを取り出そうとした、その時、電話が鳴った。

彼は箱をベッドに放り出し、立ち上がって電話に出た。

「転んだのか?怪我はないか?泣かないで、今すぐ行くから」

焦るあまり、ベッドサイドに戻って一言説明する余裕すらなかった。

「渉……」

凪が見上げて呼び止めたが、その声は無情に閉ざされたドアに遮られた。

渉は振り返らなかった。

数分後、案の定、直美からメッセージが届いた。

【ブレスレット、つけてもらった?二宮さん、受け取ってくれなくちゃだめよ。私が渉さんをずいぶん説得して、あなたに贈ることを納得させたんだから。彼は、聞き分けのいい私を不憫に思ったのか、コンサートの後、どうしてもって言って、もう一つ買ってくれたの】

【こっちのブレスレットに込められた意味が好きなの。『愛される人は永遠に幸せでいられる』って】

それは同じブランドの、最もクラシックなペアブレスレットだった。

渉が会社を立ち上げた年、彼は凪を連れてこのブレスレットを見に行ったことがある。

当時、会社の資金繰りは苦しく、いくつかのプロジェクトの立ち上げ資金は、凪が母の形見の陶磁器を二つ売って工面したものだった。

渉に負担をかけたくなかったのだ。

だが、会社が軌道に乗っても、渉がブレスレットを彼女に買おうとすることは二度となかった。

プロジェクトの資金が回収できた後、彼女はあの陶磁器を買い戻そうとしたが、すでに謎の人物に高値で買い取られており、二度と手元に戻ることはなかった。

夜、渉は帰ってこなかった。

朝食をとっている時、またしても直美からメッセージが届いた。
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