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第7話

작가: ドドポ
「知らない顔だな。最近売り出し中の新人アイドルか?」

「あの顔立ちはそこらのアイドルよりずっと綺麗だぞ」

ピーターの隣にいる女性パートナーについて、囁き合う声が増えていく。

ピーターの横に立つ澪の存在感は圧倒的だった。漆黒のベルベットのビスチェドレスが、完璧なボディラインを完璧に引き立てている。

ウェーブのかかった髪はアップスタイルにまとめられ、そこにあしらわれた白と黒のダイヤモンドが密に敷き詰められたヘアクリップは「ピアノ」シリーズで最も高価なジュエリーであり、目を逸らせないほどの輝きを放っていた。

洵はピーターの連れているその女性の後ろ姿に見覚えがあると感じていた。そして、相手が振り返った瞬間、息を呑んだ。

「澪?!」

千雪、莉奈、洋子も驚愕に目を見開いた。

洵は言葉を発しなかったが、その両目は以前よりも強く輝いていた。

澪がこれほど鮮烈な赤いリップメイクをしているのを、彼は初めて見た。

濃厚なメイクだが下品さは微塵もない。スタイリストの腕が良いのか、それとも澪という「素材」が良いのか。

「まさか夏目さんが新しいパトロンを見つけていたなんて。私、余計な心配をして損しちゃったわ……」

千雪がしおらしい声で言うと、洵の瞳の中の冷たい光が明滅した。

今夜の澪の装いはすべてピーターから借りた「プレゼント」だった。

洵と千雪がいちゃつく姿など見たくはなかったが、来てしまった以上、逃げ帰る道理はない。

洵の視線は最初こそ澪に向けられたが、その後はまるで彼女が見えていないかのように、相変わらず千雪と寄り添っていた。

その絵に描いたようなハンサムな顔に、澪は自分には一度も見せたことのない笑顔と優しさを見てしまった。

洵を見返してやりたいという澪の勝気な心は次第に敗北感へと変わっていった。

彼女は冷静さを取り戻すために洗面所へ向かった。離婚を決意したのだから、今さら気にする必要はないはずだ。

洗面所から出た時、足の痛みは無視できないほどになっていた。

普段履き慣れないハイヒールが、ひどい靴擦れを起こしている。

澪は踵を見ようと体をよじり、バランスを崩して倒れそうになった。だが、誰かがとっさに彼女を支えた。

「あり……」

礼を言いかけた澪の視線が、洵とぶつかった。

洵の微笑んだような唇は魅惑的で、瞳は宝石のように深い。

だが、至近距離でその目に見つめられ、澪は理由のない緊張を覚えた。

腕を引き抜こうとしたが、洵は彼女の腕を力強く掴んで離さなかった。

「俺に嫉妬させるために、そこまで無理する必要はない」

洵の声は淡々として冷ややかで、最後には嘲笑さえ混じっていた。

「気を引こうとするにしてはやり方が拙劣だな」

そう言うと、洵は手を離し、一枚の絆創膏を彼女に渡すと、振り返りもせず洗面所の方へと入っていった。

澪が弁解しようとしても、洵はその隙さえ与えなかった。少し迷ったが、彼女は洵がくれた絆創膏を使った。

足の痛みは和らいだが、胸のつかえは重くなった。

会場に戻った澪は心が乱れており、ビュッフェ台の前に立ち尽くしたまま動いていないことにも気づかなかった。

「見たことない料理ばかりで、何を食べたらいいか分からないんじゃない?」

莉奈と洋子が近づいてきた。

「教えてあげるわ。これは高級キャビアよ。パンケーキと一緒に食べるの」

莉奈が言い終わるや否や、洋子が肘でつついた。

「まずはキャビアが何か説明してあげなさいよ。聞いたこともないかもしれないじゃない!」

澪が二人を相手にする気になれずにいると、今度は千雪が立ちはだかった。

「莉奈、洋子、適当なこと言わないで。夏目さんは古代人じゃないんだから、キャビアくらい聞いたことあるに決まってるでしょ……」

千雪は艶やかに微笑むと、キャビアをスプーンですくい、パンケーキの上に乗せて澪に差し出した。

「でも、食べるのは初めてよね?洵も悪いのよ、あなたをこういう場所に連れ出して、世間を見せてあげなかったんだから」

「恥ずかしいからでしょ!昔はよく千雪を連れていろんな場所に出席してたじゃない。それに引き換え今は高卒の嫁をもらうなんて、篠原社長も運が悪いわよね」

「ほんとよ。片や海外帰りの博士、片や専業主婦。どういう神経でこんな場所に恥をさらしに来たのかしら」

三人に囲まれ、代わる代わる嘲笑を浴びせられたが、澪は淡然と笑った。

「千雪さん、そんなに博識なのに、自分がすくったのがベルーガキャビアだって分からないの?それは単体で味わうか、シャンパンに合わせるのが適してるのよ」

千雪の貼り付けたような笑顔が凍りついた。

「パンケーキに合わせるなら、こっちのオシェトラキャビアよ」

澪はそう言いながらパンケーキを一枚手に取り、慣れた手つきでスモークサーモンを薄く敷き、その上にオシェトラキャビアとサワークリームを乗せ、千雪に差し出した。

「こっちが王道派の食べ方よ」

澪が作ったパンケーキと、自分の手にある厚ぼったいパンケーキを見比べ、千雪の顔色が青ざめる。

「何よ、知ったかぶりして。あなたの言ってることなんて嘘に決まってるわ」

洋子が千雪をかばうように前に出た。

「たまたま合ってたとしても、それが何?毎日料理ばっかりしてるから詳しいだけでしょ!自分が優秀だとでも思ってるわけ?」

莉奈も慌てて加勢する。

澪は作ったパンケーキを皿に戻し、どうでもよさそうに言った。

「確かに私は優秀じゃないけど、少なくともあなたたちよりはマシね」

そう言い捨てて背を向けると、ちょうど洵が千雪の元へ戻ってきた。

「どうした?顔色が悪いぞ。どこか具合でも悪いのか?」

洵が尋ねると、千雪は首を振り、じっとキャビアを見つめた。

「キャビアが食べたかったのか?」

洵は自ら皿を手に取り、千雪のために作り始めた。その組み合わせ方は先ほど澪が作ったものと全く同じだった。

その時、一人の客がビュッフェ台に近づき、迷ったように呟いた。

「こんなにたくさん種類のキャビアがあるけど、何が違うんですか?」

千雪は我に返り、すぐに先ほどの澪の説明をそのまま使って相手に解説し、感謝と感心を得た。

「お若いのに博識ですね。素晴らしい」

千雪は謙遜した。

「すべて彼氏に教わったんです」

客は千雪が洵の腕に手を回しているのを見て、思わず称賛した。

「男の方は才能、女の方は美貌。お二人は本当にお似合いですね!」

洵は千雪を見つめ、生まれつき微笑んでいるような唇の端を上げた。

「その逆もまた然り、ですがね」

「逆……ということは女に才能があり、男に美貌があるということですか。篠原社長、褒め言葉が巧みですね。二人とも才色兼備ですね!」

莉奈と洋子もそれに便乗して盛り上げる。

千雪は伏し目がちに、はにかむような笑みを浮かべた。誰が見ても、千雪こそが世界で一番幸せな女性に見えただろう。

少し離れた場所で、澪は千雪が自分の知識をさも自分のもののように披露したのを聞いていたが、あえて指摘する気はなかった。

どうせ説明したところで、洵の称賛の眼差しが自分に向けられることはないのだ。

澪の心は矛盾していた。一方で、自分はすでに離婚を決意しており、たとえ今から洵が態度を改めたとしても、戻るつもりはなかった。

しかしもう一方で、悔しさがあった。

なぜ、あの時の約束を覚えているのは自分だけで、自分だけが深く囚われているのか?

なぜ、三年間必死に守ってきた結婚生活が、帰国したばかりの初恋の人に敵わないのか?

澪はグラスの酒を一気に飲み干した。

強い酒が喉を焼き、熱く辛い感覚が、逆に頭を少し冷やしてくれた。

彼女は空になったグラスを見つめ、あることに気がついた。

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