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0038-匿名

Author: chocho
last update publish date: 2026-02-24 12:28:03

展示教室の窓から、斜めに差し込む陽光。

その光が、あの絵に静かに落ちている。

戦いを終えた騎士。

剣は脇に垂れ、

表情は、不思議なほど穏やかだった。

朗読の声が、教室の中をゆっくりと流れていく。

そして――

「剣を置いた人は、静かに笑った。」

その一行が落ちた瞬間。

空気が、わずかに沈んだ気がした。

誰も、すぐには口を開かない。

数秒の沈黙が、妙に長く伸びる。

やがて、あちこちから小さな声。

「絵の中の騎士って……」

「この詩、ちょっと重くない?」

ざわめきは、壁際へと散っていく。

けれど、航平は動かなかった。

絵の前に立ったまま、

騎士の横顔を見つめている。

あの笑み。

派手ではない。

でも、どうでもいいという顔でもない。

何かをくぐり抜けたあと、

もう抗わなくていいと知った人の表情。

指先に力が入る。

握った紙が、掌の中で折れる。

さっきの朗読が、まだ耳に残っている。

一語一語が、空気に刻まれたみたいに。

――あの詩を書いたのは、自分だ。

匿名で、「星願BOX」に入れた。

誰かが深く読み解くとは思っていなかった。

まして、あの温度まで汲み取られるなんて。

けれど。
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  • 転生したら推しに激似の席隣男子がいました!?   0050-逃げない

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