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第3話:討伐命令!元婚約者は敵か味方か

Auteur: fuu
last update Date de publication: 2025-07-02 19:30:29

冬の終わり、空気はまだ冷たいが、日差しが少しずつ春の気配を感じさせるようになっていた。

グランフォード領では、魔人たちと共に生活の基盤が少しずつ整いつつあった。

廃墟だった家々には煙が立ち、畑には芽が出始めている。

カイラムが設計し、リビアと魔人たちが建てた炊事棟では、毎日湯気が立ち昇っていた。

「うーん、いい匂い!今日もグルメ国家に近づいてる気がする!」

エリシアはパンの焼ける香ばしい匂いに鼻をひくつかせながら、完成間近の食堂を視察していた。

魔王の孫・カイラムは隣で冷めた目をしていたが、決して止めようとはしない。

そのとき、空を裂くような鋭い音が響いた。

「魔力反応!?誰か、空から来る!」

警戒の声に、即座にカイラムが魔法障壁を展開する。

エリシアも背後に跳び退いて構える。飛来してきたのは、一機の飛空艇。

その船体には王家の紋章――双頭の竜が描かれていた。

「まさか、王家が……もう動いたっていうの?」

飛空艇から降り立ったのは、数人の騎士。そして、その中心に立つ青年は見覚えのある顔だった。

「……レオニス・アルバレスト……!」

「やぁ、久しぶりだね、エリシア。」

金髪に碧眼、テンプレ王子――その張本人、第一王子レオニスが、笑顔のまま言った。

「君と、君の家族に“正式な王命”を届けに来たよ。君達、反逆者として処刑が決まった。」

その言葉に、グランフォード領の空気が凍り付く。

「処刑だって……!?おかしいでしょ、何もしてない!」

「王命だ。反論は許されない。君が“勝手に建国した”というだけで、十分反逆罪なんだ。」

「ふざけんなッ!!」

地を蹴って跳び出したのは、リビアだった。素早く詠唱し、魔炎の槍を空に放つ――が、その軌道を、王子の従者が淡々と振るった剣で断ち切る。

「……はっ、騎士団でも上位の使い手だね、こいつ。」

「当然だよ、君たちを殺すために、精鋭を連れてきたんだ。」

その瞬間、背後の森がざわついた。木々の間から現れたのは――

「魔物!?でも、魔王領の魔物は……!」

「さあ、討伐開始だ。」

王子の合図とともに、空から放たれる魔法、そして魔物たちの咆哮。

「……ッ、カイラム!住民の避難を!リビア、対抗魔法を展開して!」

「エリシア、君は!」

「私は……守るの!この領地と、ここで築いた仲間を!」

その眼には、もう転生前の“情けないOL”の影はなかった。覚悟を決めた勇者の末裔として、彼女は剣を取る。

戦場となった魔王領の丘には、吹雪の名残がまだ残っていた。

砕けた氷の破片が、火球の熱で蒸気となって空を這い、視界は霞んでいた。

「エリシア、お前が……お前がここまでとは……。」

剣を支えに立ち上がるレオニスの姿に、エリシアは無言で木刀を構えていた。

その切っ先は、もはやただの“元婚約者”には向けられていない。

「王子っていう肩書きだけで、誰かを処刑していいと思ってるの?」

「思ってないさ……だけど……僕には、僕の使命がある。王家を守る義務があるんだ!」

「なら聞くけど、あなたの“使命”って、私を切り捨てることだったの?」

「それは――」

レオニスの言葉が詰まる。だが、その間を縫うように、後方で戦っていたカイラムの声が響いた。

「エリシア!背後から来るぞ!」

反射的に飛び退いた直後、王家の騎士の放った斬撃が地面を抉る。

魔力によって強化されたそれは、並の魔物なら一撃で沈めるものだった。

だが、エリシアは止まらない。木刀を大きく振り、相手の剣を受け止める。そして、衝撃とともに叫ぶ。

「覚えてる!?あなた、私に言ったのよ。“君とは違って無邪気で可愛らしい子が好きだ”って!」

「……そんなこと……。」

「あるわよ!5歳の誕生日に振ってきた男の顔なんて、一生忘れないわ!」

一瞬、レオニスの瞳が揺れた。その隙を突くように、リビアが魔術を展開、周囲に霧の障壁を作り出す。

「今だ、撤退するぞ!」

「でも――。」

「いいから!」

カイラムの腕を引かれ、エリシアは霧の中に消える。その中で、レオニスは小さく呟いた。

「……あの時、俺は……お前を守りたかっただけなんだよ、エリシア。」

◆◆◆

「ふぅ……なんとか退けたけど……」

森の奥、仮設の拠点でエリシアは疲れ切った顔で座り込んだ。だが、心の中では別のことが渦巻いていた。

(レオニス……あなた、なぜあんな目をしていたの……?)

魔物の出現と王家の命令、そして元婚約者の“本心”のような揺らぎ――複雑な要素が交差し、事態はより混沌へと進み始めていた。

「エリシア様……これを……。」

差し出されたのは、王家の騎士が落としていった勲章だった。その裏には、ただ一言、こう刻まれていた。

――『グランフォード家に危害を加えるな。王命に背いても。』――

「……レオニス……。」

その言葉の意味を、彼女はまだ完全には理解できていなかった。

けれど、ただ一つ確信した。

(私たちの戦いは、まだ終わらない。真実を、見つけ出さなきゃ……!)

——〈次話〉“魔王の遺産と、建国の真の意味”

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