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第10話

Author: ザザザ魚
私の決意が固いことを察したのか、病院を出てから、私は蓮に会うことはなかった。

けれど、蓮がうちの家の前で跪いていたことは、やはり両親にも知られてしまった。

両親が私の恋愛について尋ねてきたのは、これが初めてだった。

私は嘘が得意な人間ではないし、もう両親に隠すつもりもなかった。

最初、母は眉をひそめていた。話を聞き終える頃には、母の目は心配そうな色でいっぱいになっていた。

母は私を抱きしめ、以前と同じように私の背中を撫でた。

「どうしてそんなに馬鹿なの。お母さん、何があっても、あなたが幸せなのが一番大事だって言ったでしょう。

どうしてまだそんなに馬鹿みたいに、十年も待っていたの」

私は、両親から叱られるのだと思っていた。

けれど、叱られるより先に向けられたのは、両親の愛情だった。

蓮が言った「公にする」という言葉を聞いても涙を見せなかった私の目が、この時になって潤んだ。

隼人とのことについて、母は何も聞かなかった。

けれど翌日、私は隼人から電話を受けた。両親が黒川家を訪れ、婚約を取り消したという。

娘のことを一番よく分かっているのは母親だ。

私がもう恋愛に失
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  • 遅すぎた約束   第10話

    私の決意が固いことを察したのか、病院を出てから、私は蓮に会うことはなかった。けれど、蓮がうちの家の前で跪いていたことは、やはり両親にも知られてしまった。両親が私の恋愛について尋ねてきたのは、これが初めてだった。私は嘘が得意な人間ではないし、もう両親に隠すつもりもなかった。最初、母は眉をひそめていた。話を聞き終える頃には、母の目は心配そうな色でいっぱいになっていた。母は私を抱きしめ、以前と同じように私の背中を撫でた。「どうしてそんなに馬鹿なの。お母さん、何があっても、あなたが幸せなのが一番大事だって言ったでしょう。どうしてまだそんなに馬鹿みたいに、十年も待っていたの」私は、両親から叱られるのだと思っていた。けれど、叱られるより先に向けられたのは、両親の愛情だった。蓮が言った「公にする」という言葉を聞いても涙を見せなかった私の目が、この時になって潤んだ。隼人とのことについて、母は何も聞かなかった。けれど翌日、私は隼人から電話を受けた。両親が黒川家を訪れ、婚約を取り消したという。娘のことを一番よく分かっているのは母親だ。私がもう恋愛に失望していたとしても、母は私が一時の感情で結婚を決めてしまうことを望まなかった。こんなにいい両親がいるのに、私はどうして間違った恋にいつまでも浸っている必要があるのだろう。私は隼人に謝り、彼に食事をご馳走した。それから私は、時々両親について出張へ行き、時々海外旅行へ行く、以前のようなお嬢様の暮らしに戻った。私は蓮と美晴について、意識して避けることはしなかった。だから世界一周の旅の途中で、美晴についての話を耳にした。「彼女が愛人をしていたって話、誰かが広めたみたい。しかも学校の全体集会の場で、誰かがその内容をパワーポイントにして暴露したらしくて、今じゃ学校中の人が知ってる。彼女の両親も知ってるみたい。村の人たちはもともと考え方が保守的だし、それに美晴の両親は彼女を学校に通わせたくなかったみたいで、数日前、学校まで来て無理やり連れて帰ったらしい。今は、年寄りの男と無理やり結婚させられるかもしれないし、家に戻って農作業をすることになるかもしれない。どちらにしても、この先の人生はもう終わったようなものだよ」私は少し意外に思った。美晴に仕返しをしようとは思っ

  • 遅すぎた約束   第9話

    私は蓮を病院へ運んだ。医師の診断では、蓮は出血が多かったことが原因で倒れたという。桐谷家から人が来て、私はそこで初めて、蓮が桐谷家の宴席で、私と結婚すると宣言していたことを知った。二つの家が代々敵対していることを、蓮は知らなかったわけではない。蓮の父親も、まさか息子がそんなことを言い出すとは思っていなかった。感情が昂ぶった蓮の父親は、彼を桐谷家の先祖を祀る場所へ連れて行き、そこで跪かせて、よく考えるよう言いつけた。空が白み始めた頃、蓮の父親はもう一度、彼に考えを尋ねた。それでも、蓮の答えは変わらなかった。そのため、蓮はさらに家の掟による百回の鞭打ちを受けることになった。蓮の母親は息子を不憫に思い、彼を支えて部屋へ戻り、傷の手当てをしようとした。ところが、ほんの一瞬目を離した隙に、蓮は姿を消していた。しかも、彼はそのまま高橋家まで駆けつけ、高橋家の門前に跪いていた。蓮の母親はそこまで話すと、複雑な眼差しを私に向けた。私は一瞬、どう反応すればいいのか分からず、そのまま何も言わなかった。ちょうどその場を離れる隙を探していた時、蓮が目を覚ました。蓮の母親は、やはり息子のことが心配だったのだろう。適当な理由をつけて病室を出て行き、私と蓮だけを残した。蓮は私がまだそこにいるのを見ると、ほっとしたように息をついた。そして、脱いだ服の中から離婚届受理証明書を取り出し、私に差し出した。「紗月、本当に俺が悪かった。もう全部片づけた。だから、そんなに残酷にならないでくれないか?」そう言いながら、蓮は二度目に私の前で涙を流した。私は一瞬、ぼんやりとしてしまった。まるで、初めて私のために泣いた蓮を見ているようだった。あの時、私は帰宅途中に突然、交通事故に遭った。蓮は私と連絡が取れず、何度も電話をかけ、何通もメッセージを送ってきた。焦りのあまり、最後には直接私の家まで探しに行こうとしたほどだった。けれど、最後には冷静さを取り戻し、人に私の行方を探らせた。そして、私はまだ意識を失ったままだと知った。その後、両親が隣の病室で休んでいる隙を見て、蓮はこっそり私の病室へ入ってきた。ちょうどその時、私は目を開けた。目に入ったのは、目を真っ赤にして、子供のように泣きながら私を抱きしめている蓮だった。彼は私を

  • 遅すぎた約束   第8話

    蓮の言葉は切迫していて、まるで必死に私を引き留めようとしているようだった。「もし俺が公にするって言ったら、お前は俺を許してくれるのか?俺たちは、また前みたいに戻れるのか?」蓮の問いかけが多すぎて、私はそのほとんどを聞き取れなかった。ただ、最初の一言だけははっきりと聞こえた。「俺たちのこと、公にしないか?」って……この数年間、私は何度、蓮がこの言葉を口にする夢を見たか分からなかった。私の誕生日に、蓮がケーキのろうそくを吹き消しながら言ったこともあった。蓮が私を旅行に連れて行った時に言ったこともあった。蓮が私のために朝食を用意してくれた時に言ったこともあった。映画館で映画を見ている時に、蓮が私に言ったこともあった。……だからその後、似たような場面に出くわすたび、私はいつも蓮がこの言葉を口にするのを期待した。でも、毎回私が手にしたのは失望だけだった。それどころか、回数が重なるうちに、私の感情は蓮から見ても分かりにくいものになっていた。あまりにも何度も失望したからなのか、それとも本当に吹っ切れたからなのか。私は自分でも思っていなかったような、笑顔で断った。「蓮、もう必要ない」そう言って、私は振り返ることなく、そのまま立ち去った。だから私は、蓮の目に浮かんでいた、あまりにも悔しそうな色を見ることはなかった。その日以来、私は蓮に会うことはなかった。彼ももう諦めたのだと思っていた時、突然、執事が私のところへやって来た。「お嬢様、桐谷家の御曹司が外で朝からずっと跪いておられます。お嬢様に会いたいそうです」私は呆然とした。無意識に大きな窓の前まで歩き、外にいる人を見た。蓮はまっすぐ地面に跪いていた。今日の太陽はそれほど強くない。それでも朝からずっと日差しを浴びていたせいか、彼の身体は明らかに震えていた。私が最初に思ったのは、蓮を心配することではなかった。両親は今日、出張から帰ってくる。蓮の姿を両親に見られたくなかった。そう思い、私は外へ出た。私が扉を開けた音は、すぐに蓮の耳に届いた。彼は顔を上げ、私に笑いかけた。その時になって初めて、私は蓮の顔色が異常なほど青白いことに気づいた。彼の声は大きくなかった。それでも、私ははっきりと聞き取った。「紗月、まだ俺のことを心配してく

  • 遅すぎた約束   第7話

    私は隼人に送ってもらわず、一人で通りを歩いた。通りを歩く人は少なく、どこか静かだった。静かすぎて、私はなぜか、初めて蓮に心を動かされた時のことを思い出した。あの頃、私はまだ高校三年生だった。遠くの学校から転校してきたばかりで、みんなにはそれぞれ一緒にいる友達がいて、誰も私に近づこうとはしなかった。それどころか、私をいじめる人さえいた。私は先生に言う勇気もなく、忙しい両親にも言わず、ずっと隠していた。そんなある日、近づいていた暴風雨のため、学校が急きょ早く終わることになった。誰かが悪意を持って、私を教室に閉じ込めた。その夜、学校は停電していた。私たちの教室は校舎の隅にあり、誰も私に気づかず、助けを呼ぶ声も誰にも届かなかった。私は暗闇が怖くて、隅にうずくまり、泣き続けた。蓮が現れたのは、そんな時だった。彼は教室の鍵を壊し、手にした明かりで暗闇を照らしながら私の前まで歩いてきた。彼の声は、不思議なくらい安心できるものだった。「もう泣くな。俺が家まで送ってやる。誰かにいじめられたなら、やり返せばいい。なんで泣くんだ?これから誰かにいじめられたら、俺に言え。俺がお前を守る」それからずっと、この記憶が私を支えてくれていた。五年、六年、七年と待ち続けて……そして今、その記憶はすっかり消耗し、もう以前のようにはっきりと思い出せなくなっていた。突然、スマホの画面が明るくなった。隼人からのメッセージだった。彼はもともと噂話が好きで、さっき私と蓮が話していたことも聞いていたらしい。家に帰ってから、やはり我慢できなかったのか、私に聞いてきた。【つまり、彼があなたと付き合っている間に別の女と婚姻届を出したから、俺との結婚を受け入れたってこと?】私は隠すつもりもなく、「そう」と返した。私と隼人は、二つの家の政略結婚というだけでなく、契約結婚でもあった。彼が女性を好きではないことは、黒川家が政略結婚の相手を探し始めた時から知っていた。あの頃、隼人はまだ私と蓮の関係を知らず、プライベートで私のところへ来たことがあった。私に自分との政略結婚を勧め、その結婚によるメリットをいくつも説明した。でもあの時の私は、蓮と最後まで一緒にいられると信じていた。だから、きっぱりと断った。その後、両親か

  • 遅すぎた約束   第6話

    会う場所は、政略結婚の相手である黒川隼人(くろかわ はやと)が決めた。私が着いた時には、隼人もすでに来ていた。彼はメニューを差し出し、笑って言った。「何が苦手なのか分からなかったから、先に見てみて」お礼を言って、私はメニューを受け取った。この店に来るのは初めてだった。私はメニューを見るのに集中していて、背後から突き刺すように向けられていた視線には気づかなかった。私が蓮の存在に気づいた時には、彼の拳はすでに隼人の顔に入っていた。突然現れた蓮に、隼人は避けることができず、まともに一発を食らった。私は驚いて声を上げ、反射的に立ち上がり、隼人の前に立ちはだかった。「蓮、何してんの?頭おかしいんじゃないの?」蓮をこんなふうに責めたのは、これが初めてだった。彼は手を強く握りしめ、力のない笑みを浮かべた。「……お前、あいつのために俺を責めるのか?」「忘れないで。私たちはもう別れたの。あなたに彼を殴る資格なんてない」そう言って、私はもう蓮には構わず、振り返って隼人を見た。申し訳なさを込めて、私は口を開いた。「大丈夫? 薬を買いに行こう」蓮は何か言おうとしたが、何を言えばいいのか分からなかった。何しろ、悪いのは確かに彼だった。蓮はもう手を出すことはなく、ただ私と隼人の後をついてきた。私が薬を買うのも、隼人の傷に薬を塗るのも、蓮は黙って見ていた。彼の顔色は良くなかった。でも、私は気に留めなかった。隼人の傷の処置が終わったことを確認してから、私は蓮のもとへ向かった。私を見ると、蓮の目がわずかに輝いた。彼はわざと手を差し出し、手の甲にある傷を見せた。それは、蓮が隼人を殴った時、誤って机の角にぶつけてできた傷だった。蓮にはボクシングをする習慣がある。どれだけその運動に慣れていても、怪我を避けることはできない。彼が傷を作って帰ってくるたび、私はいつも言っていた。「本当に、自分から怪我しにいってるみたい」そして慣れた手つきで薬を取り出し、息を吹きかけながら傷に薬を塗っていた。でも今回は、私は薬を塗らなかった。自分から声をかけることもしなかった。蓮の目の奥に、一瞬寂しさが浮かんだ。彼の口調には、これまでにないほどの低姿勢さが滲んでいた。「紗月……最初に美晴と婚姻届を出したのは、彼女の家族

  • 遅すぎた約束   第5話

    蓮は自分の耳を疑った。瞳孔がわずかに縮まり、突然早口になる。「紗月、俺を騙してるんじゃないだろうな?まだ怒ってるからって、子どもがいなくなったなんて嘘を……」「蓮……」私は彼の言葉を遮り、淡々と言った。「あなたが私の妊娠を知ることができたなら、私が本当に人工妊娠中絶を受けたかどうかも調べられるはず。両親がもうすぐ戻ってくるから、帰って。あなたの姿を見られて、桐谷家まで話が及ぶような騒ぎにはしたくないの」私の家と桐谷家の確執は、親世代よりもさらに前の話だった。母から聞いた話では、当時、曾祖母は心臓病を患い、病院で適合する心臓を待っていた。ようやく順番が回ってきたその日、桐谷家が金でその心臓を手に入れた。その結果、曾祖母は最後まで適合する心臓を待つことができず、亡くなった。それ以来、二つの家は一切関わりを持たなくなった。それどころか、互いに一歩も譲らない関係になった。物心ついた頃から、母は誰と友達になってもいい、ただ蓮だけは駄目だと私に言い聞かせていた。それでも私は、最後には彼を好きになった。そして、何の肩書きもないまま、蓮のそばに十年間いた。これまで、家同士の関係を理由にして、私たちの関係を先延ばしにしてきたのは、いつも蓮の方だった。彼を追い返そうとしたのは、これが初めてだった。蓮はしばらく呆然としていた。そしてようやく、私の言葉が本当だと信じた。掠れた声には、かすかな震えが混じっていた。「どうして……?紗月、どうしてそんなに残酷になれるんだ……」蓮の問いを聞いて、私は思わず笑ってしまった。「じゃあ、蓮、あなたはどうなの?何の肩書きもないまま十年間あなたのそばにいた私を、どうして愛人にするほど残酷になれたの? 私は一度でも、あなたにそんなことを聞いたことがある?」蓮の伏せていた瞳がわずかに持ち上がり、その目に驚きの色が浮かんだ。「どうして、お前が……」言葉の続きを口にする前に、蓮は突然ビリヤード場でのことを思い出した。反射的に私の手を取ろうとした。「話を聞いてくれ」でも私は、蓮にその機会を与えなかった。カードキーをかざし、邸宅の中へ入った。蓮がどれだけ引き止めても、私は一度も振り返らなかった。その後数日間、蓮から何度も電話がかかってきた。私はそのすべてを着信拒否にした。もう彼に会いたくなか

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