Masuk「でも〜」
「ん?」 「もう一度やり直してね! プロポーズ」と言うと、 「え〜〜」と苦笑いをしている。 「だって、友達にプロポーズは? って聞かれて何て言うの?」 「ベッドで全裸で!」と笑っている。 「ふふふふ、でしょう? イヤよ」 「ハハハハッ、事実だし」と、笑っている。 「そうだけど〜」 「で? 綾! 俺と結婚してくれる?」と、もう一度聞かれた。 そう言えば、まだ返事をしていなかった。 「うん! する! しよう! こちらこそ、よろしくお願いします」と言った。 「やった〜!」と、ぎゅっと抱きしめられる。 そして、いつものように、優しいキスをした。 止まらない…… ──え? また? と思ったが…… 「今度は、優しくね」と言うと、 「うん……」と、 そして、もう一度、今度は優しく抱かれた。 でも、やっぱり私は、さっきのことが少し気になっていた。 2人でお風呂に入って、 これから先の具体的な話をした。 「ご挨拶に行かなきゃな」と智之が言う。 「うん。1回では許可が出ないかもよ〜」と私が言うと、 「そっか、何度でも認めてもらうまで、頑張るよ」 「うん、頑張って」と笑い合う。 そして、そのまま泊まりたかったが、当然前もって女友達の名前を使って、偽装工作をしていなかったので、今日は帰ることにした。 もう一度玄関でキスをして、一緒に部屋を出た。 そして、又自然に手を繋いで駅まで送ってもらった。 私の家は智之と同じ路線で、この駅から5駅だから1人で帰れる。 なのに、 「大丈夫?」と心配してくれる優男だ。 「うん。大丈夫! また、明日ね」と言うと、 「おお、車で迎えに行く」と。 「うん、ありがとう」 智之は、少し前に車を買ったばかりだ。 今日は、焼肉だったから、2人共ビールを飲んだので、電車があるうちに帰ることにしていた。 なのに、「やっぱり綾の駅まで送って行く」と、 一緒に電車に乗ってくれて、私の最寄り駅まで送ってくれた。 ──やっぱり、そういうところ、本当に優しい そして、私の家の最寄り駅まで送ってもらって、 「ココからは大丈夫?」と又心配そうに言う。 「大丈夫だよ」と笑顔で言ったのに、 「やっぱり、家の近くまで行く」と、結局改札を出て、家まで一緒に歩いてくれた。 駅からは徒歩5分。今は、11時前。 私にしては遅くなったが、街灯もあるので明るい。 我が家の門限は、一応11時と勝手に設定。 そうしないと、9時とかって父に言われ兼ねないのだ。 家の近くまで送ってくれる智之に、 「過保護だね〜」と私が言うと、 「うん、過保護だよ〜綾に何かあったら大変だから」と、とても心配してくれる。 「ふふ、ありがとう」 家の近くまで帰って来た。 周りをキョロキョロ見回して、誰も来ないのを確かめてから、ぎゅっと抱きしめてくれた。 「じゃあな」 「うん、ありがとうね」と言うと、もう一度キョロキョロして、私の顔を両手でガッツリ持って、やっぱりキスをした。 「「ふふ」」 思わず笑い合った。 「じゃあ、気をつけて帰ってね」と言うと、 「うん、綾も」と言う。 「ふふ、私は、あと30秒程だから大丈夫よ」 「おお、気をつけろよ」と笑っている。 「ふふ、ありがとう」と手を振りながらゆっくり歩き出す。 『見てるから、早く入れ』と言わんばかりに家の方を指差し、ジッと見ながら手を振ってくれている。 最後にもう一度手を振って門の中へと入った。 その後、智之が帰ったか確認して、見えなくなるまで後ろ姿を見てから、家の中に入った。 そして、すぐに 〈ありがとう。気をつけてね〉と、メッセージを送った。 〈おお、また明日な〉とすぐに返って来た。 バイバイするこの時に、 ──あ〜早く一緒に住みたいな〜ずっと一緒に居たい! と思ってしまうのだ。別々の家に帰る時が1番切ない。 でも……もうプロポーズを受けたんだから、と今日は、ニヤニヤが止まらない。急いで匠も拭いたのか、早く寝室に戻って来た。 そして、 「今日は、モコモコ要らないかも」と、私の姿を眺めている。 「知らないよ! 大変なことになっても〜」と言うと、「もうなってる!」と言う。 「ふふ」 無視して、布団の中に入った。 すると、匠は、「綾、コレ」と、ふと婚姻届を出した。 「え?」と私が驚くと、 「俺は、いつでも良いと思ってたから、用意してた」と言われた。 「そうなんだ」と、ニヤける。 その婚姻届を見ると、結婚雑誌に付いている物だと分かった。 「匠もしかして、コレ?」と聞くと、 「いや〜コレを買うのは、なかなか勇気が要るよな」と雑誌を出しながら笑っている。 「ふふ、言ってくれれば買いに行ったのに」と言うと、 「うん、そうなんだけど、先に書いておきたかったから」と、匠の欄には、既に名前が書き込んである。 役所までは行く時間がなくて、たまたま行ったコンビニで見つけて、タイミングは『今だ!』と思って買ったそうだ。 「店員さん、おばさんだったんだけど、ニコッとされたよ」と笑っている。 「ふふ、ありがとう。頑張ったね」と、頭をヨシヨシしてあげた。 「書いてくれる?」と言うので、 「うん!」と、私は下着のまま、それに記入した。 「一生忘れないよ! 綾がセクシーな格好でサインしてくれたこと」と言いながらお尻を撫でる。 「ヤダ、もう!」と笑い合う。 そして、私はとんでもないことに気づいた! 「え〜〜〜〜!」 「何? どした?」と驚く匠。 「ねえ、匠! 私……もしかして、綾瀬 綾になっちゃうの?」と言う
この前は、この辺りまでしか出来なかった2人。 優しく愛撫されながら、じっくり、ゆっくり、お腹から下へと下がっていく匠。 ドキドキする。 しかし、そんな恥ずかしさも飛んで行ってしまうくらいの感覚。 パンティに手がかかり…… 「ああっ……」と思わず声が洩れる…… 堪らなく気持ち良くしてくれる匠。 「んんっ……あっ……んっ」我慢出来ずに洩れる声、それがしばらく続く…… そして…… 匠は、私をずっとふわふわ包み込むように優しく抱く…… まるで、あの日アイツのせいで、怖い思いをしたことを忘れさせてくれているようだ。 優しく……気持ち良く……ひとつになっている感覚 ──あ〜ん、素敵…… ふわふわした気持ちのまま初めて匠に抱かれた…… 思わず私は、匠に抱きついていた。 「綾〜〜」と、抱きしめてくれる匠。 「大好き」と言うと、 「俺も大好きだよ」と、キスをして優しく頭を撫でてくれる。 そして、見つめながら、 「最高だった!」と言った。 「ふふ」 やっぱり恥ずかしいので、匠の胸に顔を埋める。 そして、匠の隣りで腕枕をされる。 「不思議なくらい、何もかもが合うんだよな〜」とポツリと言っている匠。 それは、私も思っていたことだ。 何でも私の考えていることを分かってくれる匠。 私は上体を起こして、寝転んでいる匠の顔を上から、黙って見つめてみた。 ──好き! キスして! と、思いながら…… すぐに素敵なキスをし
頭から足の先まで念入りに綺麗に洗う。 そして、上がってセクシーランジェリーを着て、 鏡の前でクルクル回ってみる。 「うわ〜エロッ」 我ながら、なかなかエロく見えるものだ。 そして、ドライヤーを使うと、匠が来てしまうので、隠す為にモコモコパジャマを着る。 「うん、良し!」 ──女の子は、こういう演出も大変なのよね〜 そして、洗面室のドアを開けて、しばらくドライヤーをしていると…… 匠が来た! 「なんでココで?」と、ドライヤーを持って、また、 私の手を引いてリビングへ 「こっちでやると、髪の毛が落ちちゃうから」と言ったが、「大丈夫! 掃除機が吸ってくれるよ」 とお掃除ロボを指差す。 そして、また髪を乾かしてもらう。 恒例となった、振り向きキス。 私がなかなか振り向かないので、後ろから肩をトントンする匠。 「ん?」と振り向くと、 やっぱりチュッとする。 「ふふ」 しばらく振り向かない! また、待ちきれなくなって、肩をトントンする匠。 「ん?」と振り向く。 チュッとする。 「ふふっ」 ──絶対、次は、左側だと思っているよなあ と思ったら、やっぱり左の肩をトントンする匠。 でも、振り向かない私。 「ハハッ」と笑っている。 「なんで?」と言うので、 私は、ガッツリ後ろを向いて、ソファーに座る匠の膝の上に跨いで座った。 「え?」と笑いながらも、チュッとして、髪を乾かしてくれる。
「美味しいね〜」 「うん、美味い!」 それだけで幸せだ! そして、締めの冷麺まで食べて、お腹がいっぱいだ。 「あ〜どうしよう! 食べ過ぎたあ〜」 「俺も〜! 美味かったからな」と言う匠。 「うん」 「ちょっと俺もトイレ」と匠もトイレに行った。 ──もう、智之たちは、帰ったのかなあ? 出来れば、こんなところで会いたくない! マンションの近くだし、 また浮気現場に出くわすなんて、最悪だ。 アイツは、絶対、地獄に堕ちる! すると、匠が戻って来た。 「もう居なかったぞ」 「そう、良かった。じゃあ帰ろうっか……」 と、席を立ってお会計へ 匠が支払ってくれている。 そう言えば、お金のこと、まだ何も決めていない。きちんと話さなきゃな。 「ご馳走様でした」 「おお」 「お金のこと、ちゃんと決めようね」と言うと、 「え? そんなの大丈夫だよ!」と言うが、 「ううん、私も働いてるんだし。ちゃんと後で決めよう!」と話しながら外に出ると、 お店とお店の間で、カップルがキスをしていた。 ──!!! 智之とさっきの女だ! 私の顔が驚いた顔になったものだから、匠も気づいたのだろう。 そちらの方を見て…… 「え?」と、言ったが、 私は匠の手を取り、首を横に振り、その場から離れた。 「関わりたくない!」 「分かった」 なぜか2人は、早足で歩いていた。 しばらく黙って歩い
美和と別れて、2人になると、 「たまには、外食でもするか?」と、匠が言ってくれた。 「うん、いいね」 今から帰って食事の用意をしなくちゃ、と思っていたので嬉しかった。 「何食べたい?」と聞かれて、 「そうだなあ〜」と悩んでいると、 「豪勢に焼肉でも行くか?」と匠が言った。 少しイヤな思い出が蘇ったが、そんなことを言っていたら、匠とどこへも行けなくなる。 なので、 「うん! 焼肉行こう!」と言った。 そして、匠が検索してくれて、マンション近くの焼肉屋さんを予約。 「すぐ近くだから、呑んでも歩いて帰れるね」 「うん、そうだな、呑むぞ〜!」 「呑むぞ〜食べるぞ〜!」 「ハハッ」 「「オオ〜!」」 そして、私たちの最寄り駅まで電車で帰って、焼肉屋さんへ 「とりあえず、生で良いか?」 「うん」 「お疲れ〜」 「お疲れ様〜」 生ビールで乾杯した。 次々に運ばれて来るお肉や野菜。 タン塩から焼いてくれる匠。 「ありがとう」 「うん、もうコレ焼けたぞ」と器に取ってくれる。 「ありがとう! いただきま〜す! う〜ん、美味しい〜! 最高〜!」と言うと、 「綾は、タン塩が大好きだよな」と言う。
──週末金曜日 山脇さんは、あの日から出勤せず会社を退職したようなので、もう会うことはないだろう。 智之は、時々会社に居ることもあるが、 私は、もう話すことはない。 観念したのか、噂で籍を入れたと聞いた。 なので、 たとえ会ったとしても、私の中では、会社に居る、特に部署も名前も分からない、顔だけ見たことがあるような〜という社員さんと同レベルで、会釈するだけの人になった智之。 同じ会社に居る以上、それは仕方のないことだ。 しかし、噂は、すぐに回り、面白おかしく言う人も居るのだろう。 山脇さん本人が辞めたことで、取り巻きだった人たちも、「山脇さんが彼女から寝取ったらしいわよ〜」と言っているのを聞いてドン引きした。 あんなに、山脇さん贔屓だったくせに、辞めたとたん、コロっと意見が変わったようだ。 なので、私は、『彼氏を寝取られた可哀想な元カノ』になってしまったようだ。 まあ、それも事実だけど、もうそんなことは、引きずってはいない! 匠のおかげで、私は、前に進めてる。 いつものように、美和と食堂でお弁当を食べる。 「ハハッ、まあ事実だし、どうでもいいけど、あの人たちホント暇よね〜」と私が言うと、 「ホントホント! いちいちコロコロ意見が変わって大変だね! 噂好きも」と言う美和。 「でも、良かったんじゃない?」と美和。 「ん?」 「屑之がクソな行ないをしたことが証明されたんだから」と言う。 屑野郎から屑之に変わった。 美和、上手いこと言うなと思った。 「そうだね。もうどうでもいいんだけどね。じゃあ、やっぱり私は可哀想な元カノなのね」と言うと、







