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第9話

Author: 三々秋色
飛行機がアメリカに到着したその日。

臨は本当に盛大な歓迎会を開いてくれて、私は戸惑うばかりだった。

臨は空港で嬉しそうに私の荷物を受け取った。佐倉家と江戸川家は代々続く付き合いで、佐倉家は国内に残り、一方江戸川家は海外で発展を遂げていたのだ。

臨も私と暁の秘密の恋の五年を知っていた。私が暁の周りをうろつくのを見るたびに、彼は不甲斐なさに歯がゆい思いをしていたものだ。

彼はからかうように私に尋ねた。「鳴神から君を奪おうと五年も企んできたけれど、まさか今回、勝手に崩れるとはね。今回は本当に決心したんだね?」

私は頷いた。「決心したの」

私の口調を聞いて、臨も無意識にふざけた態度を改めた。「世の中にはいくらでもいい人がいるさ。暁とは、別れるなら別れるで、もっと良い人が見つかるさ」

私は思わず笑ってしまった。「もう、元気づけようとしなくていいわ。彼を離れると決めたあの瞬間から、彼との過去は全て断ち切ると決めたの」

「今は仕事一筋で、すぐにでも腕を振るいたいわ」私は臨の肩を叩き、こっそりどんな役職を用意してくれるのか尋ねた。

臨はさすが私の幼馴染だ。義理堅い男だ。

彼は真剣な顔で言った。「君のスキルなら、うちの会社でも才能を埋もれさせてしまうんじゃないかと心配になるくらいだよ。だから、来てくれるのは本当に嬉しい。待遇も役職も申し分ないものを用意するさ」

彼の言葉で、私はすべてを理解した。

どうせ国内で暁のそばにいた時よりも、ずっと高い役職に違いない。

安心した私は彼に尋ねた。「突然抜擢されて、縁故採用だと罵られるのが怖くないの?」

臨は口元を上げて笑った。「もちろん怖くないさ。それどころか、今後君に何かあったとしても、俺が責任を持つよ」

彼がそう言った時、彼は私にとても近く、その約束は私の耳から心にまで響くようだった。

私は俯いて何も言わず、ただ静かに彼との距離を取った。しかし臨はとても忍耐強く、常に私から半歩離れた距離を保っていた。

空港を出るまで、彼の影は私のすぐそばに寄り添い、私の後ろを、静かで頼りになる守護者のように付いてきていた。

歓迎会の後、私は正式に臨の会社に入社した。

最初は、もちろん不満を抱く者もいたが、私は全く慌てなかった。国内で培った経験と優れた経歴を直接提示し、皆を納得させた。

暁のもとを離れてから、私の生活は徐
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