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遥けし道に星の遅れ
遥けし道に星の遅れ
作者: 星ちゃん

第1話

作者: 星ちゃん
彼女は父親の友人で、自分より一回り年上の男性に恋をしてしまった。

初めて会った日、彼はスーツに身を包み、肩幅の広い逆三角形の体型で、一瞬にして人混みの中で輝いていた。

彼は笑いながら彼女の頭を撫で、綺麗なドレスをプレゼントしてくれた。

二十歳の時、彼はパーティーで薬を盛られ、彼女はそのドレスを着て、まだ幼い体を彼の「解毒剤」として捧げた。

翌朝、乱れた服姿の二人を彼の幼馴染み・橋本夏実(はしもと なつみ)に見られ、ショックを受けた夏実は顔色が蒼白になり、泣きながら外に飛び出した。しかし制御を失ったトラックに轢かれ、即死した。

それから、中野梨花(なかの りか)は深谷浩史(ふかや ひろし)が別人になったと感じるようになった。

彼は冷静に夏実の葬儀を済ませ、梨花と結婚し、毎晩彼女と床を共にし、そして冷静に「今は子供はいらない」と言い、何度も中絶に連れて行った。

十八回目の中絶で大出血を起こし、手術台で息も絶え絶えになった梨花は、医者が彼に電話する声を聞いた。

「亡くなりましたか?死んだら連絡してください」

その時、梨花はようやく悟った--彼は彼女を恨んでいると。

彼は、自ら解毒剤になった彼女を、夏実を死なせた彼女を恨んでいた。

手術台で息を引き取る瞬間、後悔が全身を駆け巡った。

そして目を開けると、彼女は浩史が薬を盛られた「あの日」に生まれ変わった。

普段は冷徹で高潔な彼が、シャツのボタンを何個か外し、目尻を赤らめてベッドに横たわる姿は、まさに雲の上から引きずり下ろされた高嶺の花だった。

前世の梨花はそんな彼に魅了され、父親の友人であること、十二歳も年上であること、全てを顧みずに解毒剤になった。

だが後になって知った。浩史と夏実は互いに想い合っており、ただチャンスが来る前に、彼女が先に割り込んでしまったのだと。

天が哀れんだのか、運命を決めるこの日に再び戻ってきた今世の梨花が成すべきことは一つだけ。二人を結びつけることだ。

迷いなくバッグから携帯を取り出し、夏実に電話をかけた。

十分後、慌てて駆けつけた夏実の手を梨花が掴む。

「彼は夏実さんが好きで、夏実さんも彼が好きなはず。タイミングが掴めなかっただけでしょ?今なら薬のせいで理性が効かないから、想いを伝える最高のチャンスよ」

電話を受けた時から疑心暗鬼だった夏実は、さらに複雑な表情を浮かべた。

「梨花さん、何を企んでるの?あなた浩史さんのことが好きでしょ?こんな時に私を呼ぶなんて……」

その言葉に、梨花は自嘲的に笑った。

確かに今の彼女は、浩史に猛アタックしている最中だ。

かつては努力さえすれば、立場や年の差も越えられると信じていた。だが彼が愛さない限り、全てが無駄になることを身をもって知った。

前世の過ちは大きすぎた。

「もう好きじゃない。これからも絶対に好きにならない」

部屋から抑えたうめき声が漏れる。

「限界よ。早く入らないと手遅れになる」

夏実が部屋を見つめた瞳に迷いが浮かんだ。

そして覚悟を決めたように言った。「……じゃああなたはここで音でも聞いてるつもり?」

梨花の身体が硬直し、道を空けた。

夏実の手が浩史の頬に触れた瞬間、彼女はドアを閉めた。

厚い扉の向こうから、男のうめきと女の喘ぎが梨花の鼓膜を揺らす。

一つ一つが鉄槌のように心を砕き、血肉を削いだ。

力尽きたように床に座り込む梨花の頬を、涙が次々と伝う。

でもどこか解放感があった。

前世の運命から、ようやく逃れられる。

顔を拭い、自分の部屋へ逃げる梨花の背後で、隣の部屋の二人は夜明けまで絡み合った。

朝、父親から電話があった。

「梨花、海外に来て一緒に暮らさないか?」

数年前、中野グループが海外進出を目指し、梨花は父親の旧友・浩史に預けられた。

その後、浩史を好きになった彼女は、何度も父親の誘いを断り続けていた。

だが今、浩史と夏実が結ばれた以上、彼女は自分の人生を歩むべきだ。

「パパ、行く。海外行くよ」

電話の向こうで父親が息を呑んだ。

「やっと気が済んだか!浩史はお前に合わないって何度も……まあいい!こっちで良い相手を紹介するからな。同い年の婚約者候補だ。ゆっくり付き合ってみろ」

父親の言葉に、梨花の腫れた目からまた涙が溢れた。

前世も同じ台詞をかけられていた。あの時聞いていれば--

手の平を掐み、笑顔を作る。

「うん、パパの言う通りにする。すぐ移民の手続きするから」

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