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第7話

Author: 星ちゃん
その夜、深谷家の明かりは一晩中煌々としていた。

梨花はソファに座ったまま身動きもせず、爪の先が掌に食い込み、血の気の引いた手のひらをじっと見つめていた。

痛みすら感じないかのように、壁の柱時計を凝視する。

夜十二時から朝七時まで、彼女はただ時計の動きに目を奪われていた。

時報が鳴り終わる瞬間、玄関から慌ただしい足音が近づいてきた。

浩史の瞳は漆黒で刃のような冷たさを湛えていた。その視線に梨花は背筋が凍りつくのを感じた。

秘書から鞭を受け取った浩史が、一歩一歩と彼女に近づいた。

「中野梨花……お前に分かっているのか?もう少しで夏実と腹の子が危なかったんだぞ」

夏実が妊娠していたのか?

衝撃が頭を駆け抜けた後、梨花はすぐに現実に引き戻された。

そうだ……前世でも、ちょうどこの時期に彼女は身ごもっていた。

今世では自分が夏実を浩史の元へ押しやったのだから、当然の成り行きだった。

思考が中断される中、浩史が懲罰用の鞭を握りしめていた。夏実への義憤に駆られたその姿に、梨花の目頭が熱くなった。

「私がドレスに細工なんてしていないです……彼女を傷つけようなんて思ってもいない。拉致事件に、宴のラブレター、ドレスのトラブル……全部が不自然じゃないですか?仮に私が彼女を陥れようとしても、こんなに繰り返し成功するはずがない」

慎重な浩史ならこの矛盾に気付くだろう--そう信じていた。

だが彼の全身は怒りに震え、冷ややかな声で言い放った。「つまり、最近の事件は全て夏実の自作自演だと?俺が愛し、娶ったのは彼女だ。彼女がお前を陥れる理由などない」

梨花もその点が不可解だった。「私にもわからないです……」

言葉が途切れた瞬間、鞭が空を切り裂く音が響いた。

「融通のきかないやつ!」

背中に走った激痛に、梨花は唇を噛みしめた。浩史の心に住むのは夏実だけだというのに、なぜか彼を信じる淡い期待を抱いてしまった自分が愚かだった。

逃げ出そうとする足を、背後から駆け寄ったボデイガードたちが押さえつけた。

「謝罪しろ!」

鞭が再び振り下ろされ、浩史の怒声が天井に反響した。梨花は震える手で床を掴み、呻き声を押し殺す。

三度目の鞭が背中を裂く。「答えるんだ!お前は過ちを認めるのか!」

しかし俯いたままの梨花は口を閉ざしたまま。誤っていないのに、どうして謝れようか。

浩史の鞭が止まらない。

背中の皮膚が裂け、血が滲む。それでも梨花は首を縦に振らなかった。

ついに秘書が鞭に手をかけた。「浩史様、このままでは命に関わります……」

浩史はようやく鞭を放り投げた。「二度と繰り返すな」

梨花は力を失い、床に額を打ちつけて意識を失った。

その後数日、浩史は帰宅せず。梨花は背中の傷が癒えるまで床に伏せった。

歩けるようになった日、入国管理局から永住権の許可が下りたとの通知が届いた。

荷物をまとめ、スーツケースを引きずりながら玄関を出ようとした時、帰宅した浩史と鉢合わせた。

「また家出ごっこか」彼の声は氷のように冷たい。「何度言わせる?俺への執着を捨てろって。それでもお前は彼女を傷つけようとする。罰を受けて当然だろう」

梨花は疲れ切って俯いた。もう何度同じことを言えば、この人が理解してくれるのだろう。

沈黙する彼女に、浩史は眉間に皺を寄せた。「……良い。気分転換も必要だろう。夏実の胎児が不安定で、俺も結婚式の準備で忙しい。お前がここにいる限り、また何か起こりかねない」

スーツケースを奪い取ると、浩史は言い放った。「空港まで送る」

反論せず、梨花は黙って後を追った。

車が空港まで走った。梨花が黙って荷物を持って車を降りようとしたその時、浩史がようやく口を開いた。「どこ行きのチケットだ?」

梨花が口を開く前に、彼は続けた。「近場の都市にしておけ。式が終わったら迎えに行く」

「わかりました」

梨花は従順に頷き、彼の視界から消えるとすぐに携帯を取り出した。浩史の連絡先を全てブロックし、搭乗口へ歩き出した。

迎えに来るだって?

結構です。浩史。

もう二度と、この場所には戻らない。

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