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54.ひとりの夜

Auteur: 中岡 始
last update Dernière mise à jour: 2025-09-26 14:53:24

扉が閉まる音がした瞬間、部屋の空気が変わった。

音が消えた。体温が引いた。空間にぽっかりと穴が開いたようだった。

蓮は動けず、しばらく玄関の方をじっと見つめていた。

去っていった背中は見えないのに、そこに焼きついている気がして、視線を逸らせなかった。

暗い部屋に戻ってきたのに、まだどこかに瑛司の気配が残っているような錯覚に陥る。

そこにいてくれたらいいのに、と一瞬思いそうになって、蓮は自分の胸をきつく抱きしめた。

その感情が一番厄介だ。

一番、壊される。

「……違うって言えよ、バカ」

かすれた声が口からこぼれた。

何に対してだったのか、自分でもよくわからない。

瑛司に向けたのか。

それとも、いまにも崩れ落ちそうな自分自身にか。

ソファに崩れるように座り込んだ。

肘掛けに頭をもたせ、脚を抱え込む。

部屋の灯りは瑛司が出ていく前のまま、薄暗く落ちていて、輪郭がぼやける家具たちが不安定に揺れ
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  • 選んだのは、壊れるほどの愛~それでも、あなたを選ぶ   57.壊れるなら、一緒に

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