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第2話

Auteur: 吉乃婆婆
last update Date de publication: 2026-05-26 16:24:29

「3人だ。手配はお前の仕事だ。今すぐこっちに来て不手際を楓香に謝れ。」

「………。わかりました。今から向かいます。」

甘かった。あの妹が私を甚振る絶好の機会を逃すはずがなかった。

凛華はすぐにホテルに連絡してシッターの派遣を依頼した。二人はすぐに向かえるそうだ。あと一人は1時間後ぐらいになるという。それまではスタッフを派遣して対応してもらうことにした。こんなに簡単なことなのに、なぜ自分でしないのか。

その上、皆の前で楓香に謝らせるつもりらしい。それだけで済めばいいが。

翔月は何かに付けて人前で凛華に横柄な態度を取る。それに対して彼女が従順に従う姿を見せることで、自分がいかに彼女に愛されているのかを見せつけたがる。

あくまでこの結婚は、凛華が翔月を好きすぎて割り込んだ結果だと周囲に思わせる為らしい。

楓香もまた、凛華を使用人の様に扱う。若桜家での自分と彼女の立場の違いを知らしめる為だろう。

実際は、翔月についてはそれが契約内容の一つだから。楓香については子供の頃からの習慣だから。

それだけの理由で言われるがままに従っているに過ぎないのだが。

しかし、彼らに親しい者たちにとっては、何らかの手を使って二人の間に割り込んで翔月と結婚した図々しい女。

それが凛華への評価だった。

そのせいで傷ついた楓香は大学を辞め、親の勧める政略結婚をして子供を産んだ。が、相手の家族とうまくいかず先月離婚して子供を連れて実家に戻ってきた。

これが表向きの事情となっている。

実際は、楓香が酔って男友達と関係を持ち妊娠してしまった。まだ学生だった彼女は、気づいても言い出せず隠しているうちに中絶出来る時期が過ぎてしまった。それで仕方なく産むことになった。そこで、地方で産むために架空の結婚話を創り上げて街を離れた。

若桜家としては、楓香が翔月と結婚して得られるはずの資金援助が諦めきれずに、もうすぐ卒業する凛華を取り敢えず嫁がせることにした。

翔月には、学生の内に子供を産むような娘など東雲家が受け入れてはくれないだろう。しかし、翔月との子供を堕ろすのは忍びない。なので、地方で無事に産みたいと申し出た。その間、縁談を避ける為に凛華と契約結婚をして待っていて欲しい、とも。

何とも図々しい申し出を翔月は受け入れた。

翔月は幼い頃の命の恩人が楓香だと信じているから。

そんな事情を知らない 友人達の凛華への当たりは、ずっと厳しいものだった。

1時間後、凛華はちょうど一緒になったもう一人のシッターと共に会場に入って行った。

「遅くなり申し訳ありませんでした。もう一人のシッターが到着しました。」

「あら、お姉さん一足遅かったわ。お友達はさっき一人帰ってしまったの。相変わらずの役立たずね。」

茶色の長髪を華やかに結い上げて、ワインカラーのドレスを着た楓香が翔月に寄り添いながら凛華を見た。

「全くだ。楓香の誕生日を仲間たちと祝う会なんだ。当然予想される事態だったろうに。こっちに来て楓香に謝れ。」

不機嫌そうな顔で翔月が言った。

以前の凛華ならば、

「何で私が?悪いのは事前に連絡をしなかった楓香でしょ。」

と言い返す所だ。そうすると更に厳しい言葉で罵倒されて、最終的には膝をついて謝罪をさせられるのだが。

しかし今日の凛華は落ち着いた表情のまま、

「気が利かなくてごめんなさい。不自由をお掛けしたお友達には私から改めて謝罪に伺いましょうか?」

素直に非を認めて、丁寧に謝罪した。

楓香はそこまで言われてしまえば、皆の前でそれ以上追及する事も出来ずに、

「まぁ、いいわ。彼女には私から言っとく。」

と、引き下がらずを得なかった。翔月も、

「楓香がそう言うなら、まぁ、いいだろう。用が済んだらさっさと帰れ。」

と、面倒そうに言った。

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