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49.虚勢

Author: 酔夫人
last update Last Updated: 2025-12-24 11:01:32

男たちは揃って馬鹿みたいな顔をして、徐々に状況が飲み込めたのかニヤッと笑う。

「まさか、ヤラせてくれるのか?」

「いいわよ。必要なら無理やりされているような演技もしてあげる」

突然協力的になった私を疑わしげに見る。

当然だ。

「なにを企んでいる?」

「何してもいい。受け入れる。でも、体に傷や痕をつけないでほしいの」

これ、と分かるように縛られた後ろ手を奴らに見せる。

「言ったでしょう、李凱っていい男を捕まえたところだって」

「はあ?」

「彼は裏ビデオなんかに興味はない。まあ、映像を知られても似ているとか合成だとか言って誤魔化せるわ。でも、私の体に他の男の痕跡があったらさすがに気づいて……絶対に許さないわ」

眉間に皺を寄せる。

「彼が私を『妹』というくらい大事にしていることも知ってるでしょう? 李凱が台湾の、そういう友人に頼んであんたたちを……まあ、いろいろするのは全然構わないのよ。正直言って、この状況だと『やっちゃえ』って言いたい心境だし」

凱をそっち系の人にしてしまったけれど、いいわよね。

「問題はそのあと。凱って潔癖なところがあるから、他の男に抱かれたことを絶対に嫌がると思うの。被害者だと言っても、李凱は選び放題だから我慢する必要なんかないじゃない。私は彼に捨てられちゃうわ。だから……どう?」

男たちが実行に移すとなったら……無事ではすまない。

逃げられればいいけれど、後ろ手で縛られた状態で部屋を出ることはできない。

「さんざん言って俺らを脅しておきながら、今さら?」

「世間話だし、あんたたちが白川茉莉の子分だと思うとね……嫌味を言いたくなる私の気持ちを分かってよ」

「俺たちは子分じゃ……「はいはい、それは別にどうだっていいから」」

軽くあしらっ

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