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第189話:ホラー映画祭り

Auteur: Sunny
last update Date de publication: 2026-08-17 22:26:31

ホラー映画祭り。

上映作品は三本。

どれも、それなりに癖が強かった。

血。

呪い。

精神系。

ポスターだけで、もうちゃんと怖そうだった。

映画館のロビーには、同じイベント目当てらしい人たちがちらほらいる。

黒い服の人。

カップル。

一人でパンフレットを見ている人。

休日の昼なのに、ここだけ少し夜みたいな空気だった。

三人でポスターの前に立つ。

一番最初に指を差したのは楓だった。

「絶対これだよね」

一番派手なスプラッター系。

赤い文字。

血まみれの手。

いかにも、というビジュアル。

私は少し眉を寄せた。

「いや、違う」

ほぼ同時だった。

「いや、違うでしょ」

翔太の声も重なった。

二人とも、同じ作品を見ていた。

少し静かな心理系ホラー。

ポスターの色は暗く、顔の見えない人物が、古い部屋の奥に立っている。

考察が多そうなタイプ。

派手ではない。

でも、あとからじわじわ来そうな怖さがある。

楓が露骨に嫌な顔をした。

「えー、なんで?」

翔太が少しだけ笑う。

それから、私を見る。

「やっぱりね」

「……え?」

「愛子、これ選ぶと思った」

あまりにも自然に言った。

分かっていたみたいに。

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    休日。目が覚めた時には、時計は十一時を少し回っていた。カーテンの隙間から、春の日差しが斜めに差し込んでいる。昨日飲んだハイボールのせいか、少しだけ頭が重い。でも。それ以上に、胸の奥がなんとなく落ち着かなかった。倉庫。正人の腕。抱きしめられた時の熱。見ないで、と誤魔化した声。好き、と少し困ったみたいに笑った顔。昨日だけで、感情が動きすぎた。ぼんやりしたままスマホを見る。通知。翔太。心臓が少しだけ跳ねる。<起きた?><頑張って早めに起きたけど><楓さん何時に来る?>思わず少し笑ってしまう。頑張って早めに起きたって。休日感がすごい。少し前まで仕事帰りで疲れていたくせに。でも、なんだかんだちゃんと起きてくるところが翔太らしい。私はベッドの上で少し考えてから返信する。<楓、もう近くまで歩いてきてるらしい><コーヒー買って公園少し歩いてから行こ>数秒で既読。<了解>相変わらず短い。必要なことだけ。でも、それが妙に落ち着く。準備をしながら、鏡を見る。今日はラフでいい。映画だし。楓もいる。ただそれだけ。なのに。なぜか少しだけ、服を迷った。白の薄手ニット。黒のパンツ。スニーカー。張り切りすぎていない。でも、ちゃんと外に出られる格好。鏡の前で髪を整えながら、昨日のエレベーターを思い出す。疲れた顔。少し低い声。自然と近い距離。見透かすみたいな視線。――なんかあった?あの感じが、まだ頭に残っている。考えるのをやめる。違う。今日は普通に遊ぶだけ。翔太と。楓と。それだけ。待ち合わせは、マンション近くの公園前だった。休日の昼。犬の散歩をする人。ベンチで本を読む人。小さい子どもがシャボン玉を追いかけている。少し風が強い。でも、春っぽい空気だった。先に見えたのは楓だった。キャップ。サングラス。無駄に目立つ。高身長。タトゥーの入った腕。芸能人か海外アーティストみたいな空気なのに、やっていることはただのシスコン。「おっせー」「十分早い」「日本って待ち合わせ厳しくない?」「楓が適当すぎるだけ」「愛子、朝から厳しい」「昼です」そんなやり取りをしていると、後ろから声がした。「おはようございます」振り向く。少しだけ、止まる。翔太だった。ラフだった。

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