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離婚して、今さら愛してると言われても
離婚して、今さら愛してると言われても
Penulis: 中道 舞夜

1.甘い夢

Penulis: 中道 舞夜
last update Tanggal publikasi: 2025-10-24 08:55:16

月明かりが静まり返った寝室を青白く照らす深夜二時、寝室のドアが開く音が聞こえた。寝たふりをしていた私の背中に、硬く熱い胸板が押し付けられる。

「……起きてるんだろ」

住吉グループの次期後継者であり、夫でもある住吉奏多は、私の耳元で小さく囁いて返事も待たず、大きな手で私の腰を引き寄せた。口元から漂うウイスキーの香りとガウン越しに伝わる体温の熱さに心臓が跳ねる。

奏多の手は迷いなくガウンの隙間に滑り込み、指先は繊細な動きで私の身体の曲線をなぞっていく。後ろから首筋に落とされる熱くて深い吸い付くようなキス。その感触に身体が震えた。

「あ、んっ……奏多……」

その声に、奏多は私の髪を乱暴にかき分け、剥き出しになった胸に何度も指ではじいて弄ぶ。熱に浮かされたような声が漏れると、奏多は私の耳たぶを甘く噛み、吐息を吹きかけた。

「もう感じたのか?いやらしい女だな」

意地悪な言葉で罵られているというのに、奏多に触れられているという事実だけで、私の内側は愛おしさで疼いてしまう。奏多の指が私の身体の奥深くに侵入し、容赦なく快楽の渦へと引きずり込んでいく。奏多は、自分のガウンを床に脱ぎ捨てると私の中へと入ってきた。

激しく求められるたび、私は奏多を拒絶することができず、むしろその腕の中にしがみついてしまう。汗ばんだ肌が密着し、吐息が重なり合う。

この瞬間だけは、彼が私を見ているのだと感じることが出来た。

(もっと、もっと私を見て――――――)

愛を乞うように奏多の首に腕を回すと、奏多は鼻で笑い、動きをはやめて私の身体を支配していった。

――――翌朝、着替えを終えて家を出ようとする奏多はリビングに立ち寄ると分厚い封筒を手渡してきた。

「……これは、何ですか?」

私が尋ねると、奏多は視線すら合わせずに冷たく言い放った。

「昨日の『奉仕』への報酬だ。お前のような女には、言葉よりも金の方が分かりやすいだろ。岡田家への仕送りもしておいた」

心臓をナイフで抉られたような衝撃が走る。彼にとって私は身体を売る女と同じ、あるいはそれ以下の存在なのだ。

「報酬だなんて……私はあなたの妻として……」

「妻? 笑わせるな」

奏多が立ち上がって私に歩み寄る。彼の鋭い瞳が私を射抜いた。

「二年前、あのホテルでお前が仕組んだスキャンダル。俺はそのせいで、麗華との未来を奪われた。お前がその薄汚い身体で俺の隣を勝ち取った代償は、一生かけて払わせてやる」

「私は、何も仕組んでなんていない! あの夜のことは、私も……」

「黙れ。お前の言葉など一切信じるものか」

奏多は、お金が入った封筒をわざと逆さにして私の足元にぶちまけた。百万円を束ねる帯が取れ、床に散らばる一万円札に屈辱で視界が滲む。膝をつき、足元に散らばった札束を震える手で一枚ずつ拾い集めるが、 惨めで、苦しくて、息ができない。

奏多がいなくなってから寝室で着替えをしていると、姿見に自分の身体が映り込んでいた。胸元には赤紫色の痕が点々と残っている。これは、奏多からの愛の証ではなくただの「所有物」として扱った刻印だ。

(身体を重ねている時だけじゃなくて、普段から奏多に愛されたい……)

奏多に抱かれるたびに『この人は愛はないけれど欲のために私を抱いている』と虚しさがこみ上げてきたが、いつか私を見てくれる日が来るかもしれないと淡い期待を抱きながら奏多のために、食事や身支度などをこなしているのであった。

(もし、子どもが出来たら……奏多は変わってくれるのかな?私たちをいい方向に導いてくれたりするのかしら)

もう一か月半も生理が来ていない。もしかしたらという微かな期待を胸に、私は病院へと向かった。

「おめでとうございます。妊娠していますね。」

主治医である森本医師が、私のお腹に機械を当てながらにこやかに話しかける。モニターを覗くと小さくて丸いものが僅かに動いている。

「これが赤ちゃん。まだ小さくて人のカタチはしていないけれど、これからどんどん大きくなって手や足が作られていくんですよ。ほら、今もこうして動いているでしょう。これは、赤ちゃんの心臓の動きだよ」

まだ私のお腹に命が芽生えているなんて信じられなかったけれど、画面に映る小さな丸は確かに呼吸をしている。その事実に、言葉で言い表せないほどの喜びがこみ上げる。しかし、森本医師は表情を少し険しくしてから付け加えるように言った。

「ただし、遥さんは通常より子宮の壁が非常に薄いため他の人より流産の可能性が高いです。決して無理をしないようにしてください」

(流産の可能性……?)

せっかく宿ったこの命が産まれる前になくなってしまうことに恐怖で背筋が凍る思いだった。あのエコー画面だけでも喜びに満ちているのに、この子が外の世界を知る前に命が途絶えるなんて悲しみで心がおかしくなりそうだ。

(森本医師の言うことを守るためにも、奏多に言って無理をしない生活を心掛けなくちゃ……)

妊娠したことへの喜びを噛みしめながら病院を後にした。しかし、家に入る直前まで胸にあったわずかな安堵や高揚感は、玄関に置かれたハイヒールを目にした瞬間、静かに消え失せたのだった。

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