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11.東宮家の令嬢

last update publish date: 2026-01-04 18:03:38

遥side

ある日の朝、書斎で資料に目を通していた私に俊が穏やかな笑みを浮かべて語りかけてきた。

「遥、今度の財界のパーティーがあるのだけれど、僕と一緒に出席しないかい?」

その言葉に手にしていたペンを止めた。華やかなパーティー、それは使用人として奏多と会い、私の人生を変えた場所だった。今回は規模も出席者も全く違うが、私の脳裏に嫌な思い出が蘇ってくる。

「パーティー?……気持ちは嬉しいけれど私はいいわ。まだそういう場所には慣れないし、何より緊張してしまって」

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    遥side「遥、準備はできたかい? 開けても大丈夫かな」俊がドアをノックする音に、私は慌てて髪を整えながら返事をする。鏡に映る自分は、八年前に経験した結婚式とは別人のような穏やかな笑みを浮かべていた。「大丈夫よ。でもあと少しだけ待って……髪飾りを留めたら終わるから」ドアが開く音と同時に、仕立ての良いスーツに身を包んだ俊と、淡いピンクのドレスでおめかしした花蓮が部屋に入ってくる。二人の顔を見た瞬間、心から力が抜けていくのが分かった。「ママ、すっごく綺麗!プリンセスみたい!」「そうだね。遥、本当に綺麗だよ。直人君もすごく喜ぶんじゃないかな」ウェディングドレスを纏い、髪をアップにまとめた私を見て、花蓮は興奮気味に小さな手を叩いている。私は屈みこみ、花蓮の鼻先を軽くつついた。「プリンセスだなんて大袈裟よ……でも、ありがとう。みんなに祝福されて本当に幸せだわ」「それにしても……遥、今日はウェディングドレスを着ないのかい? 結婚パーティーなんだから、白を着ても誰も文句は言わないのに」

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    遥side岡田が警察の車両へ連行されるのを見届け、何十年にも及ぶ因縁がようやく終わったことに安堵を覚えたのも束の間だった。鞄に入れていたスマートフォンが激しく震えている。電源を入れると画面を埋め尽くす通知の山だった。執事長、運転手、そして秘書に至るまで数十件もの不在着信が私を追い詰めていた。「どうしたの? 遥、そんなに驚いて……」「……何件も着信があるの。何だか、嫌な予感がする」「僕のところにもだ……。何があったんだろう」俊も自身の端末を確認し顔を曇らせた。先に気が付いた私が執事長に掛け直すと、受話器の向こうから聞こえてきたのは、冷静さを欠いた悲痛な叫びだった。「遥様……大変、大変申し訳ございません! ピアノ教室へ花蓮様をお迎えにあがったのですが…………どこを探しても姿が見当たらないのです」「え……? 花蓮が、いない……? 」私の叫び声に俊と直人が目を大きく見開いて、私たちの電話に聞き耳を立てている。

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