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78.新しい時代

last update Date de publication: 2026-03-29 19:03:32

遥side

来期より父が会長、俊が社長に就任し、東宮グループは私たち親子が中心となる。世間への公表をする二か月前、新しい組織と新会社設立のことを伝えるために、ハリーと月島さんに連絡をして、都内の小料理屋で会食をした。

「実は、この度、東宮グループの代表が変わることになりまして、来期より私が社長に就任することになりました」

俊の報告にハリーと月島さんは目を丸くして驚いていたが、すぐに祝福をし満面の笑みをみせた。

「俊が社長か。それはGoodニュースだ。これから、ますます私たちと東宮グループの仕事の機会が増えるかもしれませんね」

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    奏多side「住吉社長、ここで何をしているのですか。面会はお断りしているはずですが」遥は、刃物のように鋭く、氷のように冷たい眼差しで俺を見ていた。「……東宮社長。どうしても、あなたに直接聞きたいことがあって伺いました」「私からもこの場でお話しすることはありません。すべて、弁護士を通してください」遥はそう言うと、オフィスに戻らずに、俺の横をすり抜けてそのまま正面出口へと歩き出した。慌てて追いかけようとする俺を見て、警備員を呼ぼうとしているのか受付の女性が咄嗟に内線電話を手に取ったが、遥は無言で掌を向けて『大丈夫』と制止の合図を送った。(これは、騒ぎを大きくしないために周囲の目や耳に入らない場所へ行こうと遥が気遣ってくれているのか……?)藁にもすがるような思いで、その凛とした背中を追ってビルの外へと出た。春の陽光がアスファルトを照らしているが、俺たちの間に流れる空気だけは、真冬のように冷え切っている。街路樹の影に差し掛かったところで遥がピタリと足を止めた。振り返った遥の表情には、一抹の慈悲も残っていない。「遥……」「……もうこんなことは止

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    奏多side「このスープは誰が作ったんだ?」向井という家政婦を呼び止めて尋ねると、彼女は「どうしてそんな分かり切ったことを聞くのだろう」と不思議に思いながらも丁寧に答えた。「スープ、ですか? そちらは林シェフが作ったものですが……何かお気に召さない点でもございましたか?」「……いや、シェフはまだ厨房にいるのか? 少し聞きたいことがあるんだ。ここへ連れてきてくれ」五分後、何か重大な失態でも仕でかしたのかとシェフの林が緊張で肩を強張らせながら応接間に入ってきた。俺は努めて穏やかな声を意識し、林に話しかけた。「急にメニューを変えてもらってすまなかった。林、このスープは君が作ったものだな。誰かにレシピを教わったり、あるいは一緒に作ったりしたことはあるか?」その問いの真意を察したのだろう。林シェフの肩が、目に見えてピクリと跳ねた。「それは……」「このスープ、少し味は違うが、俺は以前どこかで飲んだ記憶があるんだ。だが、それは君とは別の人間が作ったものだった。その人物は、自分のオリジナルだと言っていた。……林、君のその反応を見る限り、俺が何を言いたいか分かっているようだね

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    奏多side東宮グループのオフィスビル。そのエントランスを、遥と月島、そしてあの少女が三人で手を繋いで去っていった。その背中を見送った瞬間、俺は胸を鷲掴みにされたような息苦しさと敗北感を覚えた。結局、その日は東宮俊社長にも会えず、俺は何もできないままビルを後にした。心の中を支配する言い難い感情を吐き出したくて逃げるように馴染みのバーへと向かった。カウンターに座ると、何も言わずともマスターがおしぼりとウイスキーのダブルを差し出す。大きな氷山のような塊が、琥珀色の液体の中で静かに佇んでいた。そのことが今の俺にはありがたく心に沁みる。カラン、と氷が音を立てる。俺はそれを馴染ませる間もなく、テキーラのショットを煽るように一気に喉へと流し込んだ。食道を焼く熱い刺激が一瞬だけ思考を麻痺させてくれる。(……もしかして遥のやつ、何年も前から月島と関係を持って俺を裏切っていたのか? 家族になりたかったから離婚を切り出したのか?)酔いが回るにつれ、思考は卑屈な方向へと加速していく。二時間を過ぎる頃には、視界は霞み、グラスの中の氷は角が取れて、透明なビー玉のように俺の惨めさを映し出していた。翌朝、会社につくなり秘書の佐藤を電話で呼び出すと、慌てた様子で部屋に入ってきた。「おはようございます。……社長、何か問題でも?」 

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