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56.家族

last update Date de publication: 2026-03-07 19:03:24

遥side

「あなたは、住吉社長の秘書の……」

声のする方へ振り返ると、そこには奏多の秘書である佐藤さんが立っていた。

「住吉の秘書を務めております、佐藤と申します。東宮様、この度は長期間にわたる弊社の監査にご尽力いただき、誠にありがとうございました」

一階ロビーの待合のソファで待機していた佐藤は、銀の細いフレームの眼鏡に、きっちりとセットされた髪。丁寧にアイロンがけされたシャツと、皺一つないスーツ姿と洗練された姿だった。彼は丁寧にお辞儀をし、今回の監査に対する謝辞を述べてくる。

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  • 離婚して、今さら愛してると言われても   165.誓い②

    遥side「えっ……遥?」驚きのあまり、声も出せずにこちらを見つめる直人だったが、チャペルな扉がゆっくりと開き、私は前を向いたまま一歩、また一歩とバージンロードを踏みしめる。祝福の拍手と、参列者たちのざわめき。その中にかつて私を地獄から引き上げてくれた恩人たちの顔がある。周囲の拍手を聞き、ふいをつかれて動揺していた直人も真剣な眼差しに切りかえてゆっくりと進んでいった。参列してくれたハリー、俊、そして私のこれまでの全てを知る信頼できる友人たち。彼らは心からの笑顔で私を見守り、中にはうっすらと涙を浮かべて「おめでとう」と眼差しで語りかけてくれる人もいた。私たちの結婚式を、こんなにも多くの人が祝福してくれる。自分の人生が、決して誰かの付属品ではなく、これほど多くの人々に支えられ、愛されていたという実感が、胸の奥を熱く突き上げて感動で視界が滲む。壇上には、未来の私たちが立っている。壇上に辿り着くと、リングガールを務める花蓮が大勢の視線を一身に浴びながらも、誇らしげに胸を張って歩いてくる。彼女は小さな宝物を届けるように、慎重に私たちの元へ指輪を運んでくれた。その役目を果たし、安堵したのか壇上の脇へ戻ろうとしたその時、直人が素早く花蓮の手をそっと握り、壇上の真ん中へと促した。「……え? 直たん、花蓮はもう終わったから

  • 離婚して、今さら愛してると言われても   164.誓い

    遥side「遥、準備はできたかい? 開けても大丈夫かな」俊がドアをノックする音に、私は慌てて髪を整えながら返事をする。鏡に映る自分は、八年前に経験した結婚式とは別人のような穏やかな笑みを浮かべていた。「大丈夫よ。でもあと少しだけ待って……髪飾りを留めたら終わるから」ドアが開く音と同時に、仕立ての良いスーツに身を包んだ俊と、淡いピンクのドレスでおめかしした花蓮が部屋に入ってくる。二人の顔を見た瞬間、心から力が抜けていくのが分かった。「ママ、すっごく綺麗!プリンセスみたい!」「そうだね。遥、本当に綺麗だよ。直人君もすごく喜ぶんじゃないかな」ウェディングドレスを纏い、髪をアップにまとめた私を見て、花蓮は興奮気味に小さな手を叩いている。私は屈みこみ、花蓮の鼻先を軽くつついた。「プリンセスだなんて大袈裟よ……でも、ありがとう。みんなに祝福されて本当に幸せだわ」「それにしても……遥、今日はウェディングドレスを着ないのかい? 結婚パーティーなんだから、白を着ても誰も文句は言わないのに」

  • 離婚して、今さら愛してると言われても   163.最終決戦③

    遥side「花蓮ちゃん……遥……!」直人が、夜の帳が降りた河川敷を全速力で駆け抜けてくる。その額からは汗が流れ、呼吸は乱れており、必死な様子がはっきりと伝わってきた。「花蓮ちゃん、無事でよかった……! 本当に、本当によかった……!」直人が膝をつき、震える花蓮の肩を優しく抱き寄せる。花蓮は直人の温もりに触れてもなお、麗華に植え付けられた不安から逃れられずにいた。彼女は直人の瞳を覗き込み、縋るように震えた声で問いかける。「直たん……直たんも、花蓮のこと探してくれていたの? 心配してくれたの……?」「当たり前じゃないか……! 何を言っているんだ。花蓮ちゃんがいなくなったと聞いて心配で心配で心臓が止まるかと思ったんだぞ」私と同じように、いや、それ以上に必死な直人の言葉に、花蓮の張り詰めていた心が音を立てて崩れた。大粒の涙をボロボロとこぼし、直人の胸に顔を埋めて何度も何度も謝罪を繰り返す。「ごめんなさい……本当にごめんなさい……心配かけて、ごめんなさい……!」

  • 離婚して、今さら愛してると言われても   162.最終決戦②

    遥side「麗華……あなたが運命だと言っていたこの場所であなたは一体何をしていたというの?奏多を助けた?何人かがあなたたちに助けを求めても知らん顔をして、ずっと高みを見物をしていたわよね?周囲がざわつく中でも、あなたたちは気にせずに肉を焼いてお酒を飲んでバーベキューを継続していたわ。……あなたたちが動いたのは、救命隊員が到着してタンカーに運ばれる奏多の名前を知った時だったわ、違う?」私の言葉に麗華は眉間に皺を寄せて、激しく歯を食いしばり表情を歪ませていた。「言いがかりよ……何適当なことを言っているの?奏多を助けたのは私なんだから」「そう……?その日、今はトップになっている西村家の息子もあの場所にいたの。彼に聞けば真実が分かると思うわ。このことだけじゃなくて、奏多の子供を妊娠した話も嘘だったのね……あなたの嘘でどれだけの人が惑わされて迷惑を被ったと思うの?」「迷惑? 違うわ! 私の人生を奪ったのはあなたよ! あなたさえいなければ、奏多は私のものだった。私はただ、彼に愛されたかっただけなのにっ……!」その悲鳴に近い叫びは、奏多への歪んだ執着そのものだった。周囲の犠牲や迷惑など顧みない、あまりに利己的で独りよがりな愛情。奏多は、そんな彼女を冷徹な視線で見下ろし、深く溜め息をついた。「麗華、もういい。麗華に恋愛感情を抱いたことなど一度もない。今後、俺の心が麗華に向くことは絶対にない。……それに遥と結婚するきっかけとなったスキャンダルも、すべては他の人間が仕組ん

  • 離婚して、今さら愛してると言われても   161.最終決戦

    遥side 「……なんで遥はここだと思ったんだ?」 俺が麗華に助けられたことの詳細を遥は知らないはずだった。それにもかかわらずなぜ『ここしかない』と断言しているのか不思議でならなかった。 「仕えていた西村家の息子がここが好きで家政婦や執事たちと一緒によく来ていたの。彼の方が少しだけ年下で私が川で彼のことを見張っていたんだけれど、ある日、川上から流されてきた同年代くらいの男の子がいて助けたの……。西村家の息子が大人を呼びに行って、私が川に入ってその男の子を引っ張り出して助けたんだけれど……その時、周りも助けに加わる中で遠くから傍観しているだけのグループがいたの。それが、星野家よ……」 「なんだって……?」 「星野家の存在を知っていた人は、彼らに助けを求めに行った。だけど、『一般人のために我々が動く義理なんてない』と一蹴されたわ。救急車を呼んで、駆けつけた救助隊が病院に搬送するために男の子の名前を叫んでいるのを聞くと、星野家の人たちがざわついて彼を助けると言いだした。それがあなたなの……」 「助けたのは麗華じゃなかったのか……それに、そのことを知っていたのか……何故、自分だと言わなかった?」 「もし言ったら、あなたは私の言うことを信じてくれた?……あなたは、麗華こそが命の恩人だと盲信していた。私が何を言っても信じてもらえないどころか、嘘だと罵倒したんじゃない?だから言わなかったの」 遥の言葉に何も言い返せなかった。麗華の嘘は、八年前ではなく出会った頃から、すべてが嘘で塗り固められていたのだ。 「いたわっ……」 茂みの向こうに、麗華と花蓮の後姿が見えた。麗華は花蓮に興味を持たず、つまらなそうにスマホをいじっている。スマホ自体に興味があるわけではなく、スマホの画面をじっと眺めて誰かからの連絡を待っているようだった。 「遥、二手に分かれよう。俺は麗華の気を引いて時間を稼ぐようにする。その隙に花蓮ちゃんを助け出してくれ」 「分かった」 麗華にバレないように奏多だけが迂回をして麗華の前に向かって走りだした。私はじっと草

  • 離婚して、今さら愛してると言われても   160.思い出の場所

    奏多side遥の娘が行方不明になった。東宮俊からその事実を告げられた瞬間、俺の思考は強制的に停止した。そして、最後に一緒にいた人物が「星野」という女だと聞いたとき、麗華の顔が鮮明に脳裏に浮かび、喉の奥がカラカラに乾き、心臓が握り潰されるような痛みに襲われた。すぐさま住吉家の精鋭であるボディーガードたちを総動員させ、街中を捜索範囲に網を広げさせた。東宮花蓮の特徴を思い返した時、ふと疑念が浮かんだ。(遥の子は六歳……俺と離婚して一年と経たずに生まれているな。逆算すると、離婚した時に遥は既に妊娠していた事になる……。遥は何も言わなかったが、あの子は俺の子なんじゃないのか……)遥の会社ですれ違った時の様子を思い出す。リボンをつけてフリルの多いワンピースを着て見た目は幼い女の子なのに、歩き方や立ち振る舞いは堂々としていて大人顔負けだった。遥に似ていて目を奪われたが、もしかしたら本能的にそれ以外の何かを感じていたのかもしれない。もしそうなら、俺は、俺の子どもを授かった遥を無碍に扱い地獄に突き落としたことになる。そのことが背筋を氷のように冷やした。あの子は何があっても守る、そう強く思い、俺は麗華の思考回路を嫌悪感を押し殺して掘り起こす。(どこへ向かう?麗華が考えそうな場所はどこだ……?)その時、ポケットに入れていたスマホ

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