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第4話

작가: アカリ
病室の中で、かつて異性との接触を極端なまでに嫌っていたはずの優弥が、口に含んだ液剤を、そのまま唇を重ねる形でひよりへ少しずつ飲ませていた。

それはもう、上司が部下を気遣うという範囲を明らかに越えていた。

次の瞬間、優弥が私に気づき、視線が一気に冷えた。

「美琴、何をしに来た。またひよりに何かするつもりか?」

胸の奥が締めつけられる。けれど私はその場で膝をついた。

「優弥様……先ほど、失礼なことを言って申し訳ございませんでした」

床に額が触れる。

「どうか……兄を助けてください」

もう一度、床に額を打ちつける。

「お願いします……」

鈍い音が響く中、優弥は何も言わなかった。

やがて、ベッドに座っているひよりが、わざとらしく小さく息をついた。

「優弥さん、もういいんじゃないですか?私はもう平気ですし、上杉さんだって長い間優弥さんを守ってきた人なんでしょ?これまで尽くしてくれたことに免じて、お兄さんのこと、許してあげましょ?」

その言葉に、優弥は優しくひよりの額を指先で弾いた。

「君は本当に甘いな。人を疑うことを覚えないと損をするぞ」

そう言ってから、懐から鈴を取り出して軽く振ると、冷たい目で私を見た。

「今回だけだ。もしも次があったら……どうなるか君ならわかるはずだ」

それだけ言うと、優弥は果物を洗いに、隣の部屋に入った。その背中が消えた瞬間、ひよりが私に向かって笑う。

「あんた、白橋家で一番鋭い剣なのに、ずいぶんと落ちぶれたものね。お兄さんって、そんなに大事?目が見えなくなっても平気だったって聞いたけど――もし鼓膜まで潰されたら、どうなると思う?」

その言葉を聞いた瞬間、頭の中が真っ白になった。気づけば私は立ち上がり、ひよりの胸元を掴んでいた。

「斉藤さん、兄に指一本でも触れてみなさい。あなたの両手を斬り落とし、兄を狙ったことを一生後悔させてやります」

けれどひよりは、少しも怯えなかった。むしろ楽しそうに笑う。

「あら、脅してるつもり?」

次の瞬間――彼女はベッド脇のマグカップを掴み、中の熱い湯を自分の足へ浴びせた。

「っ……!足が……!」

その声が聞こえた優弥がすぐ戻ってきた。

「ひより!どうした?火傷か?」

ひよりは顔を歪めながらも、なお私を庇うような声を出した。

「優弥さん……私は大丈夫だから、上杉さんのことを怒らないでください。私……ただ上杉さんのお兄さんに謝りたくて会いに行こうとしただけなんです。でも、上杉さんに嫌われてるみたいで……」

優弥の視線が跳ね上がり、怒りが露わになる。

彼の手が上がる。それは、私を打とうとしているのだろう。

けれど――その手は空中で止まり、結局下ろされなかった。

理由は明白だ。

優弥が情けをかけたからではなく、汚れた私に触れたくなかっただけだ。

その代わりに、彼は再び銀色の鈴を取り出した。

「美琴、君には失望したよ」

次の瞬間、毒虫が体内で暴れ出す。

「俺の気が済むまで、外で跪いていろ。従わなければ――君の兄も一緒に跪かせる」

その直後、私はボディーガードたちに腕を掴まれ、病院の花壇の前まで引きずり出された。

冷たい雨が降り続け、全身が濡れていく。やがて額が熱を帯び始めた。

ぼやけた視界の向こうで、病室の中では優弥がひよりの足に丁寧に薬を塗っていた。ときどき顔を見合わせて笑っている二人は、まるで恋人同士のようだ。

意識が遠のいていく。そのまま私は、静かに倒れ込んだ。

……

目を覚ましたとき、私は兄の病室のベッドに横たわっていた。兄が傍らに座り、冷たい手で私の手を握っている。

「美琴……目が覚めたか」

そう気遣ってくれる兄の顔色はまだ悪く、胸が締めつけられる。

「ごめんなさい、兄さん。心配かけて……私が不甲斐ないせいで……」

兄は首を振った。そして静かに病室の鍵をかけると、枕の下から小さなガラス瓶を取り出し、そっと私の手のひらに押し込んだ。

「私の方こそ、足手まといになって、すまない。

これは、ずっと探していたんだ毒虫の呪術を解除するための薬だ。本当はもっと前に渡すつもりだったけど、まさかこんなことになるなんて……

私たちはもう縛られる必要はない。一緒に行こう、美琴。白橋家を離れて、遠くへ行こう」

自由。それはすぐ目の前にあった。

けれど――私の脳裏に浮かんだのは、優弥の祖父、白橋康二(しらはし こうじ)の姿だった。

両親を亡くしたあの頃、私たち兄妹を引き取り、居場所をくれたのは彼だった。

十一年前、白橋家が崩れかけたあの日、私は、優弥を一生守ると彼と約束したのだ。その恩も、約束も、無かったことにはできない。

迷いが胸に広がるそのとき、ポケットの中でスマートフォンが震えた。部下からの連絡だった。

届いたメッセージには短い一文だけ。

【隊長。康二様が意識を取り戻しました】
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