เข้าสู่ระบบメダル、神社の看板、明天《あす》の服、それらに描かれていた肖像画は、肖像画ではなく鏡だった。
そこには僕自身の姿が写っており、しかも、その姿は僕の方をずっと見ているのだと明天は言った。 「その面《めん》が原因なんです。今回の事件は」 「これが、僕の姿?」 鏡には言葉では形容し難い、不気味な面を着けた僕が写っている。いや、ありえないだろ、大体こんな姿になってたら、朝鏡を見た時点で気づくだろ。 いや、僕は、本当は知っていた。 思い出した。 わざと忘れていた、昨日の記憶を。 昨日、僕は門宮と一緒に、破砕機のメンテナンスの作業をしていた。 僕は工具を取りに、一旦離れた。 そして必要な工具を持って戻ってくると、そこにはリーダーに殴られている門宮がいた。 僕は怖くなり、その様子をただ見ていた。動けなかったのだ。 門宮は声を上げることなく、動かなくなり、破砕機の投入口に身体を無理やり突っ込まれた。 そしてリーダーは、なんの躊躇いもなく、破砕機のスイッチを入れたのだ。 ぐちゃぐちゃ、ベギィ!ゴギッ!ちゃりん。 肉と骨が碎ける音が響いて、機械は停止した。 落ちたメダルの音に反応して、リーダーは振り返った。 「あ…………」 僕はリーダーに見つかっていた。 呼吸は荒く、血走った目で僕を見つめている。 そして焦りながら僕の方へ、迫ってくるリーダーに対して、僕はこの事実を忘れたい。そう強く強く思った。 そしてこの事実を忘れる事にした。 リーダーも僕も、工場のみんなも、忘れた。 事故は起きていない。そう記憶は改ざんされたのだ。 僕は、嫌な現実を直視して、忘れたいと強く願うと、僕自身の記憶を含めた周囲の人間の記憶を改ざんできる。 願うたびに、そのことを思い出すんだ。 そしてこの時、改ざんした、全ての記憶を思い出す。 そして今、明天の言葉で、僕はこの事を思い出した。 だが、今回は記憶の改ざんは起きなかった。何故だ? 「それは、真実に気づいたからですよ」 「くっ!」 僕は逃げるように走り出した。 忘れたい!忘れたい!忘れたい! 違う、これは真実じゃない!ありえないだろ!僕が記憶を改ざんしたなんて!デタラメだ!そんな事、あるわけが無い! 僕は工場の普段は使われない古い倉庫へ駆け込んだ。 時間を稼げば、記憶の改ざんがまた起こると思ったからだ。 「はぁ、はぁ、忘れろ!忘れろ!忘れろって!」 願っても何も起きない、こう願うと全て忘れられたと思ったのに。僕は悲しみを知らずに生きていたいんだ!忘れろ! ふんっ!と頭に力を入れるが、無意味だった。 「…思い出したぞ、木野」 リーダーの声が聞こえた。 記憶を取り戻したのだろうか。 「お前、見てたんだな」 「僕は、何も……何も知らない!!」 逃げようとした。 だが倉庫は狭く、使わなくなった機械や大量の備品が敷き詰めるように置いてあり、さらに僕は倉庫の奥の方にいたため、身動きが取れなかった。 それを知っているからか、リーダーはゆっくりと近づいてくる。 涙が溢れてくる。 「門宮は、知ってはならない事実を知った。だから殺した。どうして今までこの事を忘れていたのか、分からないが。全て思い出した、お前も殺さなくちゃならない」 「止めて……ください!絶対誰にも言いません!」 信じられない。 リーダーが、こんな人殺しをするなんて。 忘れたい。 嫌だ、殺されたくない。助けて。 「お願いします、待って!」 「……」 これが僕の罪、なのか? 嫌な事から逃げた僕の。 僕は殺されなきゃいけないのか? 違う!そんなわけが無い!悪いのはあいつじゃないか! 「僕は、僕はもう警察に話してます!」 「何!?」 「あなたが殺したという事実をね!」 そうだ、あいつは門宮を殺した殺人者だ!その事実は間違いないじゃないか!殺しがバレたらきっと動揺する!そうだ、追い詰められているのはあいつの方だ!僕は僕の決断を信じる。 自分の命がかかっているんだ、それだけじゃない、門宮を殺した犯人を絶対に許さない! 「僕を殺せば、お前の犯行は明白にな……」 「黙あああぁぁぁれ!!!!!」 「うっ!」 僕の言葉はただの煽りにしかならなかった。リーダーは両手を広げ、発狂しながら僕の首を掴んできた。 抵抗したが、力及ばず。リーダーは僕の首を思いっきり、絞めてきた。 リーダーは血走った目をぎょろぎょろとさせながら、腕に力を込める。 「ぁ……ヵ……」 息ができない。めっちゃ苦しい。 僕の目玉が飛び出そうだった。 それでもリーダーの手は緩まない。 あれ?どうして?僕は間違ったのか? 意識が…………遠の………く。 せめて……この事実だけでも……忘れ……たかっ……た。 ちゃりん♪ 「その手を離しなさい」 「痛っ!お前は!?」 「ガハッ!ゴホッ!」 意識が戻った。 四つん這いで、僕は嗚咽しながら、必死に息をする。 僕の視線の先にメダルが見えた。 その時、明天の声が聞こえた。 僕は勘違いしていた、本当のヤバい人はリーダーだった。 「どうしてここが!?」 「いやぁ、あなたが知る必要は無いですよね。取り押えなさい」 「はっ!」 近くにいた、他の警官がリーダーを捕まえて、そのまま連行していった。 「怪我はありませんか?」 僕は明天に、泣きながら謝った。 どれだけお礼を言ったか分からないほど感謝した。 それと同時に、自身の浅はかな行動を悔いた。緊迫した状況下ではあったが、あの時、命乞いをしていれば首を絞められる事も無かったかもしれない。 「いやぁ、私も同じくその面をしていましたから。同じ過ちを犯しています」 明天も、かつて僕のように、記憶の改ざんをやっていたらしい。 「でも私は、もう既に治っています。あなたもそうですよ、ほら、何も映らないでしょ?」 明天の服の模様、肖像画の様な刻印は見えなかった。 明天はどうやら、このメダルを投げつけて、リーダーを止めたらしい。 「あなたの面は取れました、記憶の改ざんは、もう起こりません。ですが、面をつけた人は、この世にまだまだ存在します。あなたにもその人たちが見えるはずです」 僕と同じ苦しみを抱えている人が、今もまだどこかにいるのか。 「真実と向き合わせれば、面は取れます。私があなたにしたように。いいですか?面はあなたにしか見えないのですよ。ですが、まぁだからと言ってあなた自身には何も影響は無いですからね、お気になさらず」 明天は、そう言うと立ち去ろうとした。 「分かりました。本当にありがとうございました!」 「……おや……あなた、まだ見られていますよ」 「え?」 「では」 明天は去った。 それから、一夜明け、僕は新しく生まれ変わったような気分になった。 これで門宮が報われたのかどうかは、分からない。 ただ一つだけ気がかりなことがあった。 明天は、『もう面は取れた』と言っていたが、本当にそうだろうか? 確かめる方法は、あのメダルや、神社の紋章をその目で見ることだ。 いや、あの場所にはもう正直行きたくない。真実と向き合う必要は無くなったのだ。事件は解決したのだ。 ……それでも、真実と向き合う必要がある。 僕は真実を否定した結果この惨劇を起こした。 だったら、最後の最後まで、自分の目で真実を確かめよう。その責任がある。 恐怖心もあった、もしあのメダルにまた、あの不気味な仮面が映っていたら、僕はまた記憶の改ざんを起こしてしまうのだろうか? そう思った僕は仕事終わりの夕暮れにあの神社へ向かった。 山は暗いので、携帯のライトで照らしながら進む。すぐに神社が見えた。 あ、人影だ。隠れないと。 ライトを消して息を潜め、コッソリとその人影を覗いてると、どうやら、賽銭箱の前に立っているようだった。明天?なのだろうか。 「まずいな……」 僕にも言えたことだが、明天らしき人物は、賽銭箱をしばらく覗き込むと何かを確信したのか、おもむろに賽銭箱を持ち上げたのだ。 「えっ!?」 声が出てしまった。 賽銭箱を持ち上げるのはかなりの力が必要なはずだ。だが明天は、それを軽々とやってのけた。 声で居場所がバレたのか、その人はこちらを見ると、ニヤッと笑みを浮かべながら、山の奥へ走り去ってしまった。 賽銭箱の小銭が踊り、ちゃっちゃっ♪っと音が辺りに響く。その音は次第に遠くへ行った。 「明天……だった。あ、メダル。まずい!メダル持ってかれた!?」 状況は理解できないが、今、明天はメダルが入った賽銭箱をそれごと持っていったのだ。 どうして……。その昔、お婆さんは犬を飼っていた。 名前は、なな。 毎朝の散歩はとても楽しく、お婆さんは行くたびに、ななに何度も語りかけていました。「今日はご機嫌じゃのう♪」「雨が降らんくて良かったな♪」「何かおった?あぁ、そりゃカナヘビじゃのう♪」「今日はもう少し歩くかのぉ♪」 孫のいないお婆さんにとって、ななは、家族同然の存在だった。「どしたん?」「何か見つけた?あっち?」「今日は元気ない?」「あぁ、お前の気持ちが理解できればのぉ」 お婆さんは、ななの気持ちを少しでも理解したかった。 だから、いつも問いかけた。 痛い所はない? お腹空いた? 寂しくない? ワン!と吠えるだけ、それとしっぽの振り方で、何を思っているのか、ななの気持ちを考えた。 そんな感じで、5年間毎朝、いつも楽しく散歩へ出かけた。 ところが、ある日。 お婆さんは散歩が終わった後の、ななの様子がおかしいことに気づいた。 ほとんど動けず、息を荒くし、口元から泡を吹いていた。「なな!?ななぁ!!しっかりして!大丈夫!?」 お婆さんは、ななを抱えて大慌てで山を降りましたが、山を降りる途中で、息絶えてしまった。 お婆さんは悲しみのあまり、動かなくなったななを、抱えてその頭を撫でながら、どうして……どうして……と何度も何度も嘆いていた。 すると、お婆さんの隣を大きな散布用の除草剤タンクを背負った業者の人が通りかかった。 除草剤タンクが目に入った瞬間、お婆さんは確信した。 山道は、雑草が多く生えている。 ななは、あの除草剤が撒かれた草むらの中を通ってしまったのだ。 そう気づいたところで、今更遅い、何も考えずに除草剤を撒いた業者も許せなかったが、何よりもそれに気づけなかった自分自身を許せなかった。 後悔だけがお婆さんを飲み込んだ。 あの時、お前の気持ちに気づけていればこんな事には、ならなかったのにな。 大丈夫?痛い所は無い? 毎日の問いに意味は無かった。 だって、ななの気持ちなんて、一生分からないから。 お婆さんは山の中にあるそれなりに大きな木の根元に、ななを埋葬することにした。 何もしてあげられられなくてごめんね。 そう思いながら、何時間もかけて丁寧に埋葬した。 そして木の幹に名前を掘った。 ここがななの墓。 お婆さんが泣き腫らした顔で
門宮の死、それはリーダーの仕業だった。それを知った僕もリーダーに殺されそうになったが、明天《あす》に助けられた。 彼は僕にとっての命の恩人だ。 だが僕が見たのは、賽銭箱を持ち去る、明天の姿だった。 その賽銭箱の中に、僕の求めているメダルが入っている。 明天を追わなければ。あのメダルは僕の真の姿を映すすと、明天は言っていた。 実際、あのメダルに刻印されていた肖像画は、奇妙な面を着けた僕だったのだ。それが僕の姿だった。 メダルだけでは無い。明天が居る神社も、明天の着ている服にある模様も、奇妙な面を付けた僕のことを表していた。 明天の事も何も分かっていない。 明天は一体何者なんだ? 神主?それとも警察?霊媒師?? 『見られている』、この発言は何を表しているんだ? 命の恩人とは言え、不可解な点が多い。 そして、これは現実の出来事なのか? 確かに、明天の言っているのはデタラメのように思えるが、実際に門宮を殺した犯人はリーダーだった。 僕はこの事実を認めたくないと強く思い、僕を含めた工場内の全ての社員の記憶を改ざんした。 そのせいで、門宮の遺体の発見が遅れてしまい、誰にも解けない事件が完成した。 でも本当にそんな事が有り得るのだろうか? それを確かめるためにも、今はそのメダルを見る必要がある。 明天は日が沈みかけた、薄暗い森の闇に紛れて、走っていった。 しかし、どうやって追えば。 そう考えていると、 ちゃっちゃっ♪ と、賽銭箱を揺らしているような音が聞こえてきた。 今も山の中を走っているのか。 そう思った僕は、賽銭箱の音を追いかけることにした。 間違いなくそこにいるはず。 でもどうしてだろう、追っていると言うよりは、誘われているような気がする。 それでも僕は、その音がする方へ生い茂った草木をかき分け進んだ。 どのくらい進んだのだろう。 暗闇の山の中、今自分がどこにいるのかさえ、分からない。 それでも、 ちゃっちゃっ♪ っと音は聞こえてくる。 その音から離れたり、近づいたりしている。 明天は何故、街ではなく、山奥へ逃げるのか? そう思っていると、音が止んだ。 視界が悪い。 辺りを見回しても明天のいた痕跡など分からない。 しまった。これでは、探しようがない。 ちゃりん♪ 硬貨を落としたような音が
メダル、神社の看板、明天《あす》の服、それらに描かれていた肖像画は、肖像画ではなく鏡だった。 そこには僕自身の姿が写っており、しかも、その姿は僕の方をずっと見ているのだと明天は言った。 「その面《めん》が原因なんです。今回の事件は」 「これが、僕の姿?」 鏡には言葉では形容し難い、不気味な面を着けた僕が写っている。いや、ありえないだろ、大体こんな姿になってたら、朝鏡を見た時点で気づくだろ。 いや、僕は、本当は知っていた。 思い出した。 わざと忘れていた、昨日の記憶を。 昨日、僕は門宮と一緒に、破砕機のメンテナンスの作業をしていた。 僕は工具を取りに、一旦離れた。 そして必要な工具を持って戻ってくると、そこにはリーダーに殴られている門宮がいた。 僕は怖くなり、その様子をただ見ていた。動けなかったのだ。 門宮は声を上げることなく、動かなくなり、破砕機の投入口に身体を無理やり突っ込まれた。 そしてリーダーは、なんの躊躇いもなく、破砕機のスイッチを入れたのだ。 ぐちゃぐちゃ、ベギィ!ゴギッ!ちゃりん。 肉と骨が碎ける音が響いて、機械は停止した。 落ちたメダルの音に反応して、リーダーは振り返った。 「あ…………」 僕はリーダーに見つかっていた。 呼吸は荒く、血走った目で僕を見つめている。 そして焦りながら僕の方へ、迫ってくるリーダーに対して、僕はこの事実を忘れたい。そう強く強く思った。 そしてこの事実を忘れる事にした。 リーダーも僕も、工場のみんなも、忘れた。 事故は起きていない。そう記憶は改ざんされたのだ。 僕は、嫌な現実を直視して、忘れたいと強く願うと、僕自身の記憶を含めた周囲の人間の記憶を改ざんできる。 願うたびに、そのことを思い出すんだ。 そしてこの時、改ざんした、全ての記憶を思い出す。 そして今、明天の言葉で、僕はこの事を思い出した。 だが、今回は記憶の改ざんは起きなかった。何故だ? 「それは、真実に気づいたからですよ」 「くっ!」 僕は逃げるように走り出した。 忘れたい!忘れたい!忘れたい! 違う、これは真実じゃない!ありえないだろ!僕が記憶を改ざんしたなんて!デタラメだ!そんな事、あるわけが無い! 僕は工場の普段は使われない古
工場内は常に騒音が鳴り響いていて、うるさい。 だがその日はやけに静かだった。いや、今はいつも以上に騒がしいはずだ。重大災害の発生、それに伴い慌てふためく職場の人。それでも僕は静かに感じたのだ。 救急隊の人が破砕機に挟まった人の救助を試みているようだが、半身が潰されているであろう人を、一体どうやって救うのか。 僕にはそんな事を気にする余裕などない。 周りの音もきこえないほどに、思考を巡らせる。 「誰だ!昨日ここで作業していたのは!答えろ木野!」 何があったのか問い詰められているが、僕は俯いたまま目を瞑った。 落ち着け、これはきっと現実じゃない。昨日の事を思い出すどころか、現実否定を始めていた。 それでも、目を開けたところで何も変わらない。 乾いた血が付着したメダルが真紅に輝いて見える、まるでそれが現実を突きつけてくるように感じた。 あの時付着したのは、油汚れじゃなくて血だったのか。 そんな訳ないだろ、誰も怪我なんかしてない、血なんか一滴も流してない。 「木野!」 「…だから!そのっ!」 「よしましょう。今この精神状態で話し合った所で何も理解できません。今し方警察の方も到着しました。今の我々に必要なのは冷静になる事です」 「人が死んだのに落ち着けってか!」 悲惨な現状を直視すれば、精神的におかしくなる。 僕たちは事務所に戻って、後のことは警察に任せた。 今日の仕事は無くなった。 でも微塵も嬉しくない。 人が死んだのだ。 それもごく身近な人が。 後に警察の調べで、遺体の制服から推測すると死亡したのは門宮と断定された。 遺体の一部(上半身)が著しく損傷しており。死因は見ての通りだった。 今もこれは事故死として捜査が進んでいる。 僕も警察の人に色々な事を聞かれたが、何一つ証拠にならなかった。 僕だけじゃない、この件については職場の誰もが何も知らなかった。 1つ僕たちの発言と矛盾しているのは死亡推定時刻だ。それは昨日の14時31分。僕たちはその時間、通常通りの作業をしていたのだ。 こんな大きな事故があったにもかかわらず、誰も気づかなかったのだ。 僕も警察にその事を言われたが、絶対に違う。その時間、彼は僕にメダルを渡していたはずだ。 それ以外、何も起きていない
忘れたい。誰しもが1度は願った事があるだろう。それがもし叶うことができたなら、この先どれだけの痛みや後悔を無くすことが出来るだろうか? 逃げたい。 今、僕は人生において、重要な選択の場面だ。 目の前の景色にただ唖然と立ち尽くしている。 現状、何も考えれる余裕などなく、今はただ逃げたい。 逃げた先に後悔しかないと分かっていても逃げたかった。僕が悩んでいるのは、それは。「これじゃ…僕が……」 この事故はどうして起こった? 全部、僕のせいだ。 ちゃりん♪ メダルが落ちる音を聞いて、ふと、我に返った。 何か考え事をしていたような気がするが、上手く思い出せない。清掃作業は退屈すぎて、よく考え事をするのだが、つい意識が遠のく時がある。 メダルが落ちる音、この音はここの職場では違和感があった。落ちているメダルを見ながら何故?と考える間もなく、声が聞こえた。「ハズレか……またサボりですか〜木野先輩?」「…門宮」 ぼーっとしているところを、後輩に見られた挙句、よく分からないメダルを投げつけられたようだ。サボりと指摘してくるところが生意気を超えて、失礼であるが、僕は気にしない。こんな態度にも、もう慣れた。 僕は入社5年目で、門宮は入社1年とちょっとの、ほぼ新社会人だ。 この職場は、プラスチック容器のリサイクル工場であり、僕らの仕事は破砕機や溶融機などの機械オペレーターだ。 機械が止まっている暇な時はメンテナンスと清掃をしている。 門宮は僕の隣に落としたメダルを拾い上げ、僕に見せてきた。「いいっしょコレ〜」「いい物なら職場に持ってこない方がいいだろ。汚れるし」「別にいいですよ、これ先輩にあげる予定なので」「だから汚れてもいいってのか!おい!」 さすがに突っ込んでしまった。舐められすぎだろ僕。慣れてないわ、やっぱり。「まぁ何でもいい。所でそれ何のメダル?」「これは旅行の記念メダルですよ」 見てみると百円玉と同じような色と絵柄で、五百円玉くらいの大きさのメダルだった。「ふーん。どっか行ってきたの?」「はい!実は―――」 はい、始まりました。門宮の俺の彼女めっちゃ可愛いでしょ話、旅行編。 門宮は饒舌に旅行での内容を話始める。何とか島に行ったとか、美味い飯を一緒に食べたとか。これを話し出すと止まらないのである。まぁ一応聞