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第4話

作者: ラクガキワンちゃん
碧は生配信の現場へと連れて行かれた。

眩い照明が鋭く突き刺さり、無数のレンズが、まるで冷酷な瞳の群れのように彼女を捉えている。

碧は拳を固く握りしめ、爪が手のひらに深く食い込んだ。口内に、鉄の味がじわりと広がる。

深く息を吸い込み、積み重なったすべての屈辱を喉の奥へと押し込み、彼女はゆっくりと口を開いた。

「本日はお集まりいただき、ありがとうございます。新橋碧です。このたびは、私の過った判断がために、夫と義妹にあたる小野寺舞さんとの間柄を邪推し、あろうことか、夫の関心を引くための道具として我が子を利用いたしました。その結果、然るべき医療処置が間に合わず、息子を救うことができませんでした。すべては私の責任です。小野寺舞さんには、一切の関わりもございません」

震える声で釈明を終えた瞬間、コメント欄は罵詈雑言で一気に埋め尽くされた。

『正気かよ、この女。子どもを道具にしたのか!』

『毒親!母親失格!死ぬべきなのはお前だ!』

『この人殺し!地獄に落ちろ!』

碧は一瞬にして世間の集中砲火を浴び、激しいバッシングの的となった。

ステージ脇で、朗は満足そうに頷いていた。配信が終わると、彼は歩み寄り、碧の肩を抱き寄せた。

「碧、安心しろ。世間が落ち着いたら、ネットの悪評なんて俺が綺麗に消してやる。また、昔みたいに戻れるさ」

目の前で白々しく言い放つその男を、碧はただ虚ろな目で見つめ返すしかなかった。

その時、スマートフォンの着信音が鳴り響いた。

「新橋碧さんですか?お父様が緊急搬送されました。至急、お越しください!」

「……何ですって!?」

胸を掠めるような暗い予感に突き動かされ、碧は病院へと駆け出した。

病室では、隆太郎が血にまみれ、顔はあざだらけに腫れ上がっていた。義足はどこかへ消え、その姿はあまりにも無惨で、顔には深い悲嘆と憤りが滲んでいた。

病室の入り口には、怒りに燃えた野次馬たちが押し寄せていた。

「あんたの娘が、自分の息子を殺したんだぞ!知ってるのか!」

「何が元ベテラン刑事だ。汚職刑事だったんじゃないのか!でなきゃ、こんな毒婦が育つはずがない!」

「父娘そろって地獄に落ちろ!死んだ子供に、命で償え!」

碧が駆けつけた時、隆太郎はなすすべもなく罵声を浴びせられていた。

胸を引き裂かれるような思いで、碧は隆太郎の前に立ちはだかる。

「どきなさいよ!……みんな、出て行って!」

取り乱したその声に気圧され、人々は次第にその場を離れていった。

「お父さん、大丈夫?」

震える手で隆太郎に触れようとするが、痛みを与えてしまいそうで、碧は思わず手を止めた。

碧の姿を認めた隆太郎の瞳に、かすかな希望の光が宿る。

「碧……あいつら、安晴くんが死んだなんて言ってるが……嘘だよな?な?」

その言葉に、碧の鼻の奥がツンと痛み、堪えていた涙が溢れ落ちた。

「お父さん……ごめんなさい。全部、私のせいよ……安晴くんを、守れなくて……」

碧は隆太郎の手を強く握りしめ、懺悔するように泣き崩れた。

隆太郎の指先が激しく震え、喉の奥から嗚咽が漏れる。

「碧……安晴くんは……本当に、もういないのか?」

老いた瞳に宿る淡い期待を前に、碧は言葉を失った。

彼女の沈黙がすべてを物語り、隆太郎の瞳から光が、ゆっくりと消えていく。

「そんなはずが……昨日、安晴くんの夢を見たばかりなのに……どうして、急にいなくなっちまうんだ。まだ、たった五歳じゃないか……」

隆太郎の肩が小刻みに震え、絞り出すような泣き声が病室に響いた。

しばらくして、隆太郎は突然、碧の手を強く掴んだ。その瞳には鋭い光が宿っている。

「あの日、俺が拉致されたのは……朗の仕業か?お前に、この件を追及させないために……そうなんだな?」

碧は、どう説明すべきか分からず、その場に立ち尽くした。

すべてを悟った隆太郎は、ベッドから降りようと無理に体を起こす。

「あいつを許さん!警察へ行く。安晴くんの無念を、俺が晴らしてやる!」

碧は慌てて隆太郎を抱きとめた。

「お父さん、無駄よ……今の朗は、やりたい放題なの。安晴くんの解剖結果も書き換えられて、カルテまで偽造された。今はまだ、その時じゃないの……お願いだから、生きて。私にはもう、お父さんしかいないの……」

碧は必死に、声を震わせて訴えた。

「大丈夫だ……必ず、あいつらに報いを受けさせてやるから」

隆太郎をなだめていると、再び電話が鳴った。

着信画面を見た瞬間、碧の睫毛が微かに揺れる。彼女は一度、病室を出た。

朗からだった。

「碧、義父さんの具合はどうだ?」朗の声には、微塵の感情もこもっていない。「かなり取り乱していると聞いた。変なことを口走る前に、しばらく精神病院へ入院させた方がいいんじゃないか」

碧の胸に、怒りの炎が激しく燃え上がった。

「朗……あんた、一体どこまで腐ってるの!?息子を殺しただけじゃ飽き足らず、今度はお父さんまで?……いい、よく聞きなさい。お父さんに何かあったら、私は自分の命と引き換えにしてでも、あんたたちを地獄へ引きずり込むわ!」

そう言い捨て、碧は電話を切った。

振り返ると、いつの間にか隆太郎が背後に立っていた。

心臓が跳ね上がる。

「……お父さん」

「いいんだ、碧。もう大丈夫だ」隆太郎の表情は、異様なほど静まり返っていた。「お前の言う通りにする。無茶はしない。だから一度戻って、安晴くんを……きちんと見送ってやりなさい」

隆太郎が平静を取り戻したのを見て、碧はようやく胸をなで下ろした。

碧が背を向けた、その時。隆太郎は窓の外を見つめ、低く呟いた。

「安晴くん……もう、怖がらなくていい。おじいちゃんが……」

その先は聞こえなかった。だが、息子の名を耳にしただけで、碧の胸は締めつけられるように痛んだ。

一階まで降りたところで、碧はある事実に気づき、全身の震えが止まらなくなった。

先ほど、父は確かに、こう言ったのだ。

「安晴くん、もう怖がらなくてもいい。おじいちゃんが、今すぐそばに行ってやるからな」

碧の心は、一瞬にして恐怖に支配された。よろけながらも、彼女は必死に病室へ引き返す。

その時だった。

ドォォォォン!!

凄まじい衝撃音が響き渡った。

「おい、救急車を呼べ!誰かが、飛び降りたぞ!」

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