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魔女に呪われた“淫魔”達だけど、愛されたい!
魔女に呪われた“淫魔”達だけど、愛されたい!
作者: 月咲やまな

【プロローグ】満月の出逢い

last update 公開日: 2026-06-22 08:57:23

 恋愛物語を描くクリエーターの方々は本当に偉大だ。

 どんな不可思議なワンシーンも、あり得ないシチュエーションも、素晴らしい絵柄や演出を駆使し、たった数コマや数十秒で夢の様な出逢いへと書き換えてしまう。

『両片思いだった初恋の彼と、十数年ぶりに就職先で偶然の再会』

『ハイスペックなCEOに見初められ、いきなりの溺愛結婚』

『異世界へと飛ばされて、運命の人との愛に溺れながらの冒険譚』

『満月を背景にした、窓から来る突然の来訪者——』

 善行を積み続けた過去世をすごしてきたとしても、『絶対に』と断言出来るレベルで私には訪れぬシチュエーションだと思っていた。そんな作品に触れるたびに胸が踊り、心がトキメキ、『素敵な恋ね。最高だったわ、ヒロインちゃんおめでとう!』という気持ちが心を満たし、ちょっとの幸せをプレゼントしてくれるのだから。

       ◇

「やぁ!お姉さん、ボクと結婚して下さい!」

「…………」

 綺麗な満月に惹かれ、『ベランダでちょっとお月見でもしながらビールでも』。そんな事を考えながら、Tシャツに短パン姿という軽装のまま私が窓を開けると、見知らぬ少年が逆さまになって浮かびながらそんな事を言ってきた。

『いやん、これは夢ね?』などと思うような、お花畑みたいな脳の構造を生憎としていない私の頭に真っ先に浮かんだ言葉は——

(なんだ、背景が満月だろうが、窓からの来訪者なんかこんなもんよね……)

 ——だった。オカシイわ……あり得ないシチュエーションが今私の目の前にあるというのに、何故ときめかないのかしら。

 背景には大きな満月。

 眼下に広がる、煌めく街の灯り。

 宙に浮かぶ少年。

 よく見れば可愛い顔をしていて、口の端から見える八重歯は味がある。ちょっと小柄な感じだが、将来有望間違い無しな雰囲気を漂わせていて、恋愛物語のスタート的材料は充分揃っていた。だがしかし、人の部屋のベランダにいきなり現れた時点でソレは、変質者、ストーカー、下着泥棒、強盗の可能性しか浮かばない——

 ようは、犯罪者だ。

 私は真顔のまま側に置いてあったスマートフォンを手に取り、警察へと電話をかけた。

「もしもし?警察で間違い無いですか?はい、えぇ、今ウチの窓から怪しい者が侵入して来ていまして——」

「——はい⁈やめてぇぇ!真っ先に司法とかに頼らないで!まずは話を聞こうとか思ってよ!こんな愛くるしいボクを、即犯罪者扱いとかヒドイよぉ!」

 見知らぬ少年は慌てて私の腕に縋りつき、泣きながら必死に叫んだ。

 家出少年かしら?

 隣の部屋から逃げてきたとか?

 手を祈るみたいに組み、目を潤ませ、上目遣いで『今すぐ、電話を切って!』と懇願される。どうやらこの子に悪意は無いみたいだと判断した私は、警察の方に「……すみません。通報に驚いたのか、逃げられました」と告げて、彼の要求を呑むことにした。

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