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【第87話】抜け道①

last update publish date: 2026-10-05 12:54:59

「——葵あおい、“黒い服”には着替えたかな?」

 上から下まで全て真っ黒なゴシックロリータ風のドレスを着込んだウルカが“小さな少年”に声を掛けた。彼女に“葵”と呼ばれた“少年”は、「うん」と短く答えながらウルカの腕の中に辿々しい足取りで向かって行く。あと数歩で彼女の胸の中にすっぽりと収まりそうになった時、葵は首根っこをぐっと掴まれ、子猫のように上へと持ちあげられてしまった。

「甘えるなら俺に甘えとけ、葵」

「……えぇぇぇ。“父さん”にぃ?またぁ?」

 不服そうな瞳を、葵が瀬田へと向ける。どうやらこの子供は、瀬田とウルカの二人の子供のようだ。

「いいじゃないですか、ちょっとくらい。子供がこうやって可愛く甘えてくれるのなんて今のうちだけなんですよ?」

 ブーブーと文句を言い、ウルカが口を尖らせる。見様見真似で葵も「そうだそうだ!」と言ったもんだから、瀬田はちょっと不貞腐れた顔になった。

「コイツは“インキュバス”だから、“我が子”だろうが信用しきれないんだよ!」

「ハッキリ言ったなぁ!父さんのくせに!」

「あぁ言うさ!その点以外はちゃんと愛してる!とも、ついでに言ってやるぞ!」
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