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【第6話】呪いの起源(カシュ・談)

last update Veröffentlichungsdatum: 22.06.2026 08:57:49

  ——遥か遥か昔の話に遡る。

 まだボクが生まれる前に起きた事で、仲間から聞いただけの話なので、ボクには詳細などはわからない。ただ何となくこんな感じのやり取りの元、こんな事があったらしいぞ程度に聞いてもらえると嬉しい。

       ◇

 ヨーロッパ地方を中心に、大規模な魔女狩りが起きた十六世紀付近よりも少し前の事。

 “占い”や“薬”に詳しかったり、“お婆ちゃんの知恵袋”的な立ち位置にある魔女達に混じり、ファンタジーに出てくるような魔力を持った“魔女”がまだ少しだけ生き残っていた。

 彼女達の多くは美貌に恵まれ、ボク達のような“インキュバス”や“サキュバス”達の心までも虜にしてしまう事があったそうだ。

 そんな魔女達の中に一人。他を圧倒する程に美しく、桁外れの魔力を有した娘がいた。

 当然の如く彼女の周囲には悪魔達が数多く群がり、彼女を誘惑し、手篭めにしようと悪戦苦闘する日々が続きに続き——

 ある日、突然娘がキレた。

『毎日毎日貴方達はウザいです。邪魔でしかありません。貞操観念の無い存在はハッキリ言ってゴミ以下なので、もう根底からやり直しなさい!』

 美しき悪魔達の誘惑に微塵もなびかず、『鉄の処女アイアンメイデン』の異名で勝手に呼ばれていた娘は、見せしめに一番対応の面倒だったインキュバスとサキュバス達へ永遠に消えない呪いをかけた。

『アナタ達は金輪際、一切の淫猥な行動を慎みなさい!コレだと思える相手を探し出し、生涯を添い遂げる種族として生まれ変わるのです!』

 娘の持つ魔力をフル動員させたその“呪い”は一族全体にかかり、当時はまだ生まれていなかった者までも対象にしている、かなり厄介なものだった。

 インキュバスやサキュバスを根底から全て否定し、存在意義すら奪うような呪いをかけられ、彼等は一様に、他者を好き放題に誘惑する能力を失った。

 ちょっとだけ魅了チャームの魔法を使えても、夜伽を完全に強制出来る程の強力なモノを使えない。せいぜい、強力な媚薬を盛った程度のものとなってしまった。

 しかも、心から愛おしく想える『たった一人の相手』としか性行為を営めなくなった為、精気を得る手段がほぼ無くなり、ボク達には常に飢えが付き纏う。魔力燃費の悪い体にまでされてしまったせいで、何をしても満たされない。

 人の見る淫猥な夢を食べてかろうじて飢えを凌ぎ、誤魔化しながら生きる毎日は……

『俺達、ここまで怒らせる事をしたか?』と思う日々だった。

 この呪いのせいで、魔女はインキュバスとサキュバスにとって天敵となった。

 鬼門であり、絶対に関わりたくない相手だ。

 呪いをかけた魔女はもう死んでおり、説得し、呪いを解くという事も頼めない。

 もう一生——

 ボクらは、『こういう種族なのだ』と思っていくしかないのだ。

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