Home / 恋愛 / 黒と白の重音 / 30.山吹色 - 4

Share

30.山吹色 - 4

last update Last Updated: 2025-12-19 11:00:00

 そこへ二回目のノック。

「みなさーん、準備はどうですか〜 ? 」

 モノクロの配信の司会はゆかりが回す。

「蓮さんとハランさんは休憩挟んだとは言え、ぶっ通しで生配信、大変お疲れ様です」

「いえいえ、なんだか大騒ぎしてすみませんでした。途中木村さん入りにくそうで……」

「あぁ、全然大丈夫ですよ」

 ゆかりが畳に広げられた衣装を見る。

 下は綺麗なドレープのスカートだが、上半身は和装に近い。巻いてある帯を見て目を丸くする。

「後は着付けだけですね」

「帯、大変そうですね。手伝いましょうか ? 」

「え、ゆかりさん出来るんですか ? 」

「出来ませんけど ? 」

 会話がちぐはぐしている。

「管理人さんが、元々女将さんだったので」

「あぁ ! なるほど。どうする ? 」

「ケイ、本当に出来る ? 」

「……あ〜、じゃあ……えと……。キリと二人ってのもあれだし、じゃあ呼んできて貰っていいですかね ? 」

「分かりました」

 ゆかりが立ち去る。

 その後、管理人さんこと元女将さんはテキパキと一人で帯を締め上げた。

 途中、初めて着物を着る霧香は、度々カエルのような声を上げていた。

 □□□□

「皆さん、こんばんわ。初めましての方も宜しく。モノクロームスカイです。

 えと〜、最初に言おうと思ってて。

 昨日、俺たちを応援して下さった方、本当にありがとうございました。Xもイイネ返せて無いんですけど、本当に皆んな心配してくれて。

 お陰様でキリは、今日の午前に左耳が少し回復してきてて……まず一安心かなって」

 恵也から霧香に変わる。

「皆さん、ありがとうございました。

 んあ〜、今回の体調不良は、最近色々あったんで。昨日の事だけの原因れは無かったんです。

 これからこう
Continue to read this book for free
Scan code to download App
Locked Chapter

Latest chapter

  • 黒と白の重音   30.山吹色 - 4

     そこへ二回目のノック。「みなさーん、準備はどうですか〜 ? 」 モノクロの配信の司会はゆかりが回す。「蓮さんとハランさんは休憩挟んだとは言え、ぶっ通しで生配信、大変お疲れ様です」「いえいえ、なんだか大騒ぎしてすみませんでした。途中木村さん入りにくそうで……」「あぁ、全然大丈夫ですよ」 ゆかりが畳に広げられた衣装を見る。 下は綺麗なドレープのスカートだが、上半身は和装に近い。巻いてある帯を見て目を丸くする。「後は着付けだけですね」「帯、大変そうですね。手伝いましょうか ? 」「え、ゆかりさん出来るんですか ? 」「出来ませんけど ? 」 会話がちぐはぐしている。「管理人さんが、元々女将さんだったので」「あぁ ! なるほど。どうする ? 」「ケイ、本当に出来る ? 」「……あ〜、じゃあ……えと……。キリと二人ってのもあれだし、じゃあ呼んできて貰っていいですかね ? 」「分かりました」 ゆかりが立ち去る。 その後、管理人さんこと元女将さんはテキパキと一人で帯を締め上げた。 途中、初めて着物を着る霧香は、度々カエルのような声を上げていた。 □□□□「皆さん、こんばんわ。初めましての方も宜しく。モノクロームスカイです。 えと〜、最初に言おうと思ってて。 昨日、俺たちを応援して下さった方、本当にありがとうございました。Xもイイネ返せて無いんですけど、本当に皆んな心配してくれて。 お陰様でキリは、今日の午前に左耳が少し回復してきてて……まず一安心かなって」 恵也から霧香に変わる。「皆さん、ありがとうございました。 んあ〜、今回の体調不良は、最近色々あったんで。昨日の事だけの原因れは無かったんです。 これからこう

  • 黒と白の重音   29.山吹色 - 3

    「動かないで」 本番一時間前。 更衣室にあてがわれた霧香の部屋で、蓮と彩が霧香をドレスアップしていた。今回はゴシックロックと和ロック。衣装は和装寄りで、帯は蓮がギブアップ。彩が出来るが生身の人間に……女性にやったことは無い。蕁麻疹対策の為、蓮に指示を出してやる作戦だ。 そしてやはり今日も、霧香は蓮に顔を筆で撫でくり回されている。「くっ……ふぇ……」 部屋の隅で彩が霧香の衣装を持ちながらスマホ片手に咲と喋っている。 向かい合って座った蓮が、ムズムズしている霧香を見下ろしながら眉を梳かしポツリと呟く。「恵也となにかあった ? 」「へ !? 」 彩ならともかく、蓮が何故知っているのか。「あ……え ? ビンゴ ? 当てずっぽうだったんだけど……」「な、にゃい ! 無い無い ! 」「いや、なんか顔に出てるし……。 ……ま、別に隠す事も無いだろ。最初から薄々分かってた事だし」 そう言い、霧香の髪を掬い上げスンと香りを弄び口付けする。「誰が惚れようと……関係ないね。お前が良いか悪いかだ」「……」 そうではあるが、何となく霧香は妬いて欲しかった。 無言でそれを聞き流す。 蓮も素直には言えない。 これが彩でなくて良かったとは。「お前の髪は綺麗だね。今日も編まなくていい ? 」「ん。髪飾りの方……ちょっと」「編むの ? 」 そこへ彩が慌てて二人のそばに戻る。「蓮、右腕側の毛束を少なめに後ろに流せる ? ベースの時も移動の時も、とにかく右側映るから」「了解。じゃあペアピンで固定して、この摘み細工の花飾りで隠そうか」

  • 黒と白の重音   28.山吹色 - 2

     ここからは再びゲームの話に戻って行く。  本日はコメントを解放してあるのだ。  追い切れない楽しげなファンのコメントに、チェックをしていた木村はホッとする……と言うより、感動していた。  ネットの炎上に良いイメージなど無いからだ。  毒薬変じて薬となると言うものか陰徳あれば必ず陽報あり……か…… 。「昨日ゲームしながら喋ってた奴いた ? 」「キラと恵也。すっげーうるさかった」「よく喋れんな。RPGとかならギリ喋れるけどさ、リズムゲームって集中するしさぁ」「VEVOが配信スタートしたら、ちょっと実況はしてみようかな」「あぁ、それは楽しそう」「やっぱミミにゃんでプレイした方が面白そうだな。ミミカーになるかもしれないし」「なりませんよ」 ミミにゃんは口を尖らせて否定するが、ゆかりはカメラの外で何やら必死にメモを取っている。ミミにゃんは嫌な予感しかしない。 □□□□□ 川から戻った霧香の異変に、彩はすぐ気付く。「……」 緊張とも落胆とも違うその感覚は、遠い昔……一度感じた様な……彩にとってはそのくらいの理解度だった。  しかし、耳は聴こえていないはずだ。  彩はスケッチブックの端に『何かあった ? 』と書いた。  恵也に限ってそんなことは無いはずだが、水着で出かけた霧香の異変に何も干渉しない訳にはいかない。『何も無いよ』 そう書き返した霧香だが、顔が赤い。  そこで彩は思い出す。  人の恋心は動揺したり、複雑な気持ちになることを。そしてすっかり自分とは疎遠になったそれらを実感して静かに落胆する。「あ〜……」 霧香が彩に振り向いて、考えながら話すように言葉を探す。「耳、あんか、ちょっともろって来たかも」「早いな。ヴァンパイアの体質のせい ? 」「んあ〜、ヴァンパイアだから ? って言った ? 」 やはり途切れ途切れにしか聞こえないし少しボンヤリとしていて聞き分けるの

  • 黒と白の重音   27.山吹色 - 1

    「霧香さんて、KIRIで活動している時とギャップがあるじゃないですか ? わたしは年下なので、あのインスタのロリータこそ作られた霧香さんだと思ってたんですけど。 実際話したら、普段はほんとに温厚でお嬢様って感じで。でも歌ってる時は確実に別人じゃないですか !? 」 Angel blessとミミにゃんのトークも主に霧香の話題で埋まる。全員がここにはいないはずの霧香を案じて、口をついて出てしまうのだ。 ミミにゃんの疑問には全員爆笑。 特に千歳も同意で疑問を投げる。「俺もどっちかなって思ってたけど、案外歌ってる時が素かなぁーって思った。 だって普段からふにゃふにゃしてたら……ハランはまだ分かるけど、蓮は一緒に住むのキツくない ? 」 問われた蓮はまずまず同意。 千歳も「やっぱり」と大きく頷く。「俺も勤め先の電気屋で実感したんだけどさ。女性もさ。ずっと可愛いわけじゃないじゃん ? 俺ねシフト終わった後、可愛いと思ってたバイトの子がさ、めちゃくちゃ疲れた顔してエナジードリンク飲んでるの見てさ。……世の中の可愛いって自然体じゃないだなって」「その子は普通だよ。 みんな仕事明けは疲れるよ」「千歳さんは女性に夢を見るタイプなんですねぇ」「お前、アイドルは老廃物出さないと思ってるタイプ ? 」「そうだけど ? 」「うえ〜……」 全員、言わない。千歳の生活は所帯染みて来たのに、未だ浮いた話を聞かないな……とか。 ハランが切り替えて行く。 ここからは水戸マネージャーと口裏合わせした方向へと進む。ミミにゃんの本性を暴露し、更に人気に火を付けたい。「いや、女性は怖いよ。表と裏がね。特にこう言うメディアに出る人はキャラクターってモノもあるしさ」 蓮の追撃。「キャラクターね。 俺、昨日霧香を連れて戻った時さ、フロントに実々夏さんがいて…&h

  • 黒と白の重音   26.蒲公英 - 3

    「ま、せっかくの休みだし……。 あ、そうだ管理人さん」 料理を運んでいた高齢の女性に恵也が声をかける。「側にある川で釣りがしたいんすけど、なんかダムみたいなのがあって上に行けなかったんですよね」「あ〜。釣りはね。旅館の裏手から行くんだわ。裏道あるからさ。そこ登って行くと丸太を渡ってその上に行くと滝壺があるからさ」「はぁーなるほど ! ありがとうございす ! レンレンとハラン配信だし、彩は夜の用意か。 キリとキラ、釣り一緒に来る ? 」 希星はスケッチブックに恵也の言葉を書くと、霧香は笑顔で頷く。「管理人さん、そこも水浴び出来る ? 」「滝の真下はダメだよ。少し離れれば大丈夫だけど」「やった ! 」 盛り上がる三人を後目に、千歳と京介はだらりと椅子に持たれる。「あう〜……午前中なんて頭回んねぇよ」「午前はわたしも出るんですから。しっかりしてください ! 」 ミミにゃんは相変わらず厳しい。「実々夏さん、やっぱりネコミミ外すと凶暴化しますね」「え ? そうなの ? 」「何それ面白い。なんか喋って」「はぁぁっ !? 訴えますよ ! 」「え、急な拒絶キツ〜」 その発言を興味深く水戸マネージャーも聞き逃さず観察する。「昨日、俺超足踏まれた。連打。踏みつけ連打」「ぎゃはは ! 」 □□□□□□□ 恵也は釣竿を持つと希星に使い方を説明していた。 岩の上で真剣に釣竿と格闘する希星を、霧香は川岸で見守っていた。 水が柱となり高所から落ち、飛沫を上げる。一応水着は着てきたが、足だけ水の中に入れる。 音は聞こえなくとも、その強い振動は身体に伝わるほど力強く、飛沫がミストになり全身を冷んやりと包み込む。 ゆかりの印刷してくれたモノクロファンの言葉の綴りに目を通す。 涼しい

  • 黒と白の重音   25.蒲公英 - 2

    「動画のはあくまでパフォーマンスだよ。それに全員好意を持っててもいいと思よ。霧香が選ぶか選ばないか分かんないしさ。 じゃあ……実々夏さんから見て、モノクロで誰が好みとかあります ? 」「はぁ ? そういうところですよ ! イケメンなのにデリカシー無いんですね〜」 手強い。 ネコミミを外したミミにゃんは中学二年とは思えない悪女のような発言をしてくる。「いや。ほら、ゆかりさんは霧香と恵也のコンビが、一番理解出来ないって言ってたらしいんで。 実々夏さんから見たらどうなのかなって。参考にです。 って言うか、俺にだけ当たりが強くないですか…… ? 」「ん〜。そうですね。ケイさんはトークが上手いのでモノクロには必要ですよね……。 あ、でも恋愛パフォーマンスとして霧香さんとくっ付けるのに向きの方って事ですよね ? えーと、じゃあ。深浦さんじゃないですか ? 」「彩 ? へ〜……」「深浦さんが一番霧香さんの事を考えてるし、甘やかして無いと思いますし。しっかりした方だなと。 でも、あの二人が恋愛パフォーマンス ??? は……完全に向いてないですね〜」 蓮は意外なミミにゃんの返答に言葉に詰まる。「霧香さんも聞いてみましょうよ」「はぁ" ? 」 これには蓮がミミにゃんの足を踏みたいところである。「だって蓮さんは御自身に自信があるようですし。何より本音を知りたいでしょう ? 」「え……じゃあさ。例えば今日の夜、ガールズトークとかで聞き出してくれない ? 」「うわ ! 一番最低 !! ガールズトークに男が首突っ込んでくるとか変態すぎ」「何この子……辛すぎる」『モノクロで好きなメンバー誰ですか ? 』 霧香はミミにゃんのスマホを読むと、満面の笑みでス

More Chapters
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status