来依は淡々と口を開いた。「清孝が、そう簡単に見つかると思って?」「無理だろうが、追い続ければ、いずれ必ず見つけられるさ」海人はお粥を来依の前に差し出した。「少し食べて」来依は彼の手から受け取り、自分で食べ始めた。海人は続けて餃子を差し出す。すると来依は言った。「私のことは放っておいて。自分で食べるから、あんたも食べて」その一言に、海人はようやく胸を撫で下ろした。どうやら怒っていないようだった。彼のことを責めてもいない。「今回の件は完全に俺の見通しが甘かった。紀香ちゃんが義兄さんと一緒に東京に行ったから、清孝が手を出せるとは思ってなかった。まさか、あいつがそんな大胆な真似をして、紀香ちゃんを連れ去るとは……」来依は静かに聞いていたが、ふと口を開いた。「つまり、この責任を全部お兄ちゃんに押し付けたいってわけ?」海人は表情ひとつ変えずに返した。「まさか。責任は全部、俺にある」来依はそれ以上言わず、ただこう言った。「出産のとき、紀香ちゃんに会いたい」海人は力強く頷いた。「任せて」実際、彼は自分が清孝を見つけ出せるという自信があるわけではなかった。むしろ清孝がその時期に、紀香を一度戻らせることを分かっていたのだ。何しろまだ日数もあるのだから、紀香を連れて行った清孝には、当然ながら彼なりの意図があった。それが叶わなければ、必ず別の行動に出るはず。この件にも、いずれは終わりがくる——そうでなければ、ただの無限ループで、彼も来依も落ち着ける日は来ない。だから、今はあえて少し手を緩めていた。実咲が目を覚ましたとき、部屋には誰もいなかった。時計を見ると、紀香が朝ごはんを買いに行ったのかと思い、すぐにメッセージを送った。しばらく待っても返信がなく、今度は電話をかけた。しかし、着信音はバスルームから聞こえた。彼女は中で紀香のスマホを見つけた。「スマホ持たずにどうやって支払いするのよ?」そう思いながらも、ここは駿弥の施設だということを思い出した。つけ払いできるに違いない。そう納得してさらに待ったが、紀香は戻ってこなかった。彼女はホテルのレストランや施設内を探し回ったが、どこにもいなかった。フロントに確認しても、何も分からなかった。監視カメラを見る権限
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