彼が現れると、星華はたちまち意地の悪い表情を引っ込めた。それでも苛立ちは隠せず、ぼそりと文句をこぼす。「味方する相手、間違ってない?」藤原夫人も先ほどの強硬な態度は影を潜め、穏やかに尋ねた。「どうしてなの?」「うちのおばあちゃんに、オーダーメイドの服を何着か贈るって約束したんだ」服部は口元に笑みを浮かべながら続けた。「週末には南を連れて、おばあちゃんの意見を聞きに行く予定なんだよ。彼女を傷つけたりしたら、怒って俺に口もきいてくれなくなるかもしれない。そうなったら、おばあちゃんに何て言えばいいんだか」その言葉に、星華は目を吊り上げた。「彼女を……服部のおばあさまに会わせるつもりなの!?」「お前に関係ある?」服部はそう言い放つと、もう一言も無駄にせず視線を逸らした。星華は鼻を鳴らし、冷笑する。「服部のおばあさまは礼儀や名誉を何より大切にされる方よ。あんな女、認めるわけないじゃない」「お前みたいなのを我慢してるくらいだ。清水さんのことなんて、きっと気に入ってくれるよ」服部は藤原夫人の前でも、星華に一切容赦しなかった。藤原夫人は内心の怒りをぐっと抑え、ため息交じりに言った。「そこまで言うなら、今回はあなたの顔を立てて見逃してあげましょう」「お引き取りを」服部は淡々とした声でそう言い、まるで私の代わりに彼女たちを追い払った。誰にも媚びず、気にも留めないその態度は、見る人を苛立たせる一方で、言い返す隙すら与えなかった。母娘が遠ざかっていくのを見届けた私は、ようやく口を開いた。「ありがとう。……でもどうしてここに?」「これで三食おごりだな」服部は椅子を引いてラフに腰を下ろすと、気だるげに言った。「さっきも言ったけど、お前の商売を手伝いに来たんだよ」「そんな親切な人だっけ?」私は疑いの目を向けた。彼が、何の見返りもなく動く人間でないことは知っている。服部は舌打ちし、目尻を軽く上げて笑った。「お前、案外俺のこと分かってきたな。そう、その通り。取引しに来たんだよ」「……どんな?」「うちのおばあちゃんに服を何着か作ってくれ。あと、いずれ俺の頼みをひとつ聞いてもらう」「……私が服を作って、さらにあなたの頼みにも応じる? それで取引って、あまりに割が合わないんじゃない?
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