「……すぐに降りる」その一言を聞いた瞬間、胸の奥がズシンと重くなった。私は迷うことなく返事をした。来依が私の顔色に気づき、不安げに声をかける。「……どうしたの?向こうで何かあった?」私は手早く荷物をまとめながら答えた。「……おばさんが危篤だって。すぐに鹿児島に戻らなきゃ」藤原星華のやり口を思えば、これが本当に病状の悪化によるものなのか、それとも私のせいで巻き込まれた結果なのか……疑いが拭えなかった。「危篤って……」来依の表情が一変し、すぐに言った。「江川が迎えに来るんでしょ?だったら、荷物は私に任せて。南はもう何も気にせず出て。午後にはここの仕事を片付けて、南の荷物も一緒に持って帰るから」焦りでいっぱいだった私は、素直に頷くしかなかった。「……ありがとう、来依。助かる」来依は充電済みのモバイルバッテリーとスマホを私の手に押し込み、そのまま私を玄関まで押し出した。「助かるなんて言わないでよ。私はマーケティング部の部長であり、南希の株主でもあるんだから。自分の仕事してるだけ」南希を立ち上げたとき、私は来依にも株を渡していた。彼女はただの社員じゃなく、私の同志でもある。「じゃあ、行ってくるね!」ホテルを出て階段を降りたところで、宏の車がちょうど車寄せにゆっくりと滑り込んできた。運転手が降りてドアを開ける。私は後部座席に乗り込んだ。宏はシートにもたれて目を閉じたまま、微動だにしない。私も黙って窓の外に視線を向けた。車内は、息が詰まるような静けさに包まれていた。私の思考がどこかへ彷徨いはじめた頃、宏がぽつりと口を開いた。「……大阪のこと、もう関わるな」「……あなたに関係ないわ」顔も向けず、私は冷たく言い放った。宏の声音に苛立ちがにじむ。「親子鑑定書ひとつで、服部鷹と一緒になって、服部家に嫁げると思ってるのか?」「……なんでそのこと、知ってるの?」私は一気に視線を向け、宏の黒い瞳を睨みつけた。今朝の出来事で、知っているのはほんの一握りの人間だけのはず。鷹が漏らすとは思えないし、藤原家も絶対に隠しておきたいはずだった。宏は目を逸らさず、薄く唇を動かす。「……それに、君とあいつが上手くいくことはないって、俺は分かってる」私は手のひらに力を込めて
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