「どうして……?欲しくないの?」舞子は、恥ずかしさと怒りが入り混じった感情を抑えきれず、賢司を蹴り飛ばしてやりたい衝動に駆られた。けれど、乱暴にキスされ、身体を弄ばれた後では、すでに力が抜けていて立ち上がる気力もなかった。声まで甘く、か細くなっていた。「とにかく……ダメ……嫌だから……」明らかに限界ギリギリの状態だったのに、賢司はそれ以上は踏み込まなかった。腰に添えていた手をそっと離し……けれど、完全に距離を取る前に、未練がましくもう一度だけその腰を撫でた。まるでそこが、彼にとって特別なお気に入りであるかのように。賢司はゆっくりと体を起こし、背もたれに凭れながら、身体を駆け巡る衝動を必死に抑え込んでいた。その姿を見て、舞子は驚きの表情を浮かべたが、深く考える余裕もなく、慌てて立ち上がって乱れた寝間着を直した。体が反応していたのは確かだった。けれど、理性がほんのわずか感情に勝った。ただそれだけのことだった。「……ご自由に」そう吐き捨てると、舞子は乱れた呼吸のまま寝室に逃げ込み、勢いよくドアを閉めた。賢司は、彼女の背中をじっと見送っていた。無表情だったその顔に、ふっと興味深げな笑みが浮かんだ。ご自由に、か。できるものなら、そうしたいところだった。だが、彼女はその「自由」を与えてはくれなかった。部屋の中、シャワーを浴びながら、ようやく体の火照りが引いてきた。舞子はどこか茫然としたまま、そして、ほんの少し感慨深げな気持ちで立ち尽くしていた。さっきのことを思い出すたびに、胸がざわつく。ソファの上で絡み合ったあの瞬間——触れられた指、重なった唇、彼の息遣い。あの男……自信たっぷりな顔してたくせに、全然だった。やってることは、全部本能任せの手探り状態。まるで原始時代の男みたいに、野性むき出しだった。シャワーの時間が思ったより長くなってしまい、出てくる頃には東の空がほんのり明るくなりはじめていた。舞子はドアにそっと耳を当て、外の様子をうかがったが——物音ひとつしない。……もう帰ったの?ためらいながらもドアを開け、静かに廊下を覗いてみると、そこに賢司の姿はなかった。乱れていたソファも綺麗に整えられていて、部屋にはまだ微かに彼の気配が残っていた。シャワーを浴びている間に、帰ったのだろ
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