「お母さん、そんなに焦らないで。いい方法があるの」白露は秦の耳元でそっと囁いた。「お母さん、その時、紙おむつを履いておけばいいのよ。そうすれば絶対にバレないわ」「か、紙おむつですって?」秦は顔を真っ赤にして叫んだ。「大丈夫よ。私以外、誰も知らないから。お母さんは堂々としてればいいの。せっかくお父さんと仲直りできそうなんだし、この潮見の邸のレースには絶対に出席して、みんなの注目を集めて――お父さんの心を取り戻すのよ!」そうね、この子の言う通りだわ。こんなチャンス、滅多にない。絶対に成功させなきゃ。「......仕方ないわね。そうするしかないみたい」紙おむつなんてどうでもいい。大人だって使う人はいる。白露が口をつぐんでいれば、誰にもバレないはず。「お母さん、ひとつお願いがあるの」白露がすかさず話題を変えた。「また何よ、あなた。どうせ条件付きでしょ?」秦は険しい顔で睨む。最近この娘は本当に手に負えない。「お母さん、聞いてってば!」白露は少し涙をにじませながら続けた。前に使用人たちが自分の悪口を言っていたので注意したら、光景に見つかって、レースへの出場資格を取り消された――その出来事を、彼女はわざと大げさに話した。「お母さん、私もレースに行ければ、お母さんを手伝えるし......あの場にはたくさんの名家の若様が来るのよ。お母さんだって、私がいい人と結婚して力になれたら嬉しいでしょ?」秦は沈黙し、やがて小さく頷いた。「わかったわ。お父さんを説得してみる」「お母さん大好き!」白露は勢いよく抱きついた。その瞳の奥で、冷たい光がチラリと閃いた。......桜子は結局、家に帰ることにした。隼人としばしの別れだ。それに、もう準備は整っている。あとは自分の舞台を仕掛けるだけ。夜、二人で熱い湯に浸かり、風呂上がりに桜子はバスローブ姿で鏡の前に座る。隼人は背後でドライヤーを持ち、桜子の黒髪を丁寧に乾かしていた。指を髪の中に通しながら、優しく頭皮を揉みほぐす。「ふぅ......気持ちいい......」桜子はうっとりと目を細め、足の指先まで緩んでしまう。「隼人、社長なんて辞めて、マッサージ師になったら?私、
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