書斎から出てきた相川拓真は、相川涼介の言葉を聞いて、その白くて綺麗な顔を歪めた。相川言成がいなくなったと思ったら、今度は相川涼介か。自分の人生は、試練の連続だな......相川拓真は、冷酷な視線を相川涼介に突き刺した。その視線に気づき、相川涼介はゆっくりと顔を上げた。「お前が杏奈に、言成の遺灰を海に撒いたことを教えたのか?」相川拓真は表情を変えず、口角を少しだけ上げた。「涼介兄さん、僕はただ、姉さんがお墓参りに来た時、事実を伝えただけだよ。間違ったお墓にお参りさせないために。それの何が悪い?」相川涼介はソファに突き刺さっていたナイフを引き抜き、刃先を指でなぞった。「お前が悪いわけではない。だが、お前が杏奈に真実を伝えなければ、彼女は死なずに済んだ」皮肉とも本音とも取れる相川涼介の言葉に、相川拓真はそれ以上何も言わず、子供らしい無邪気な表情で相川正義に駆け寄った。「お父さん、涼介兄さんが後継ぎになるなら、僕はもう経営の勉強をしなくていいんだよね?」将来を見据えて、相川正義は幼い相川拓真に、専門家を付けて経営学を学ばせていた。まだ7歳だというのに。「彼が戻りたいと言ったからといって、そう簡単に事が進むものではない」相川正義は相川拓真にそう言うと、相川涼介を冷たく睨みつけた。「昔、俺が直接迎えに行った時、お前は帰ってこなかっただろう。生きている間は相川家の敷居をまたがない、死んでも相川家の墓には入らない、そう言ったはずなのに、なぜ戻ってきた?」相川涼介は冷笑した。「生きている間は相川家の敷居をまたがない、死んでも相川家の墓には入らない。その言葉は変わらない。だが、相川家の後継ぎの座は、俺がもらう」後継ぎの座を手に入れたら、相川グループの株を全て売却し、寄付してやる。桐生文子は、息子に後継ぎの座を継がせ、刑務所から出所した後に楽な暮らしをしようと考えているのだろうが、そうはさせない。彼女が出所する頃には、相川家そのものを失くしてやる。それに、相川正義が女に溺れていなければ、桐生文子につけ入る隙を与えることもなかったはずだ。このような男は、自分の行いの報いを受けるべきだ。相川涼介は相川正義に宣戦布告すると、相川グループの株を買い占め始めた。相川家の親族たちは結束も甘いし、崩すのは簡単なことだった。自分と相川正義の持ち
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